大切な方の位牌を作る際、「夫婦で一つの位牌にまとめてもよいのだろうか」と迷う方は少なくありません。夫婦位牌(めおといはい)は、仏壇の場所を取りにくく、ご夫婦が亡くなった後も一緒に祀れるという良さがあります。
一方で、後から文字を追加する際の手間や供養にかかる費用、菩提寺(ぼだいじ・先祖代々のお墓や供養をお願いしているお寺)や親族の考え方など、事前に知っておきたいこともあります。
この記事では、夫婦位牌を選ぶ際に気をつけたい点を一つずつ取り上げ、作る前に確認しておきたいことや、迷ったときの選び方について分かりやすく解説します。
夫婦位牌とは?一人ずつの位牌と何が違うのか

夫婦位牌のデメリットを見ていく前に、まずはどのような位牌なのかを確認しておきましょう。位牌は故人一人につき一基を作るのが基本とされていますが、夫婦位牌は、ご夫婦お二人のお名前を一つの位牌に並べて記すものです。
仏壇店では、連名位牌(れんめいいはい)や二人彫りと呼ばれることもあります。一基にまとめることで得られるメリットがある一方、別々に位牌を作る場合にはない注意点もあります。ここでは、位牌の基本的な考え方や夫婦位牌が選ばれる背景、間違えやすいほかの位牌との違いを順番に確認していきます。
夫婦位牌は、ご夫婦の位牌を一つにまとめられるため、仏壇の中をすっきりさせやすいのが特徴です。ただし、作った後に文字を追加したり、形を変更したりするのは簡単ではありません。後から困らないためにも、まずは夫婦位牌の特徴をきちんと理解しておきましょう。
位牌は「一人に一基」が基本とされる理由
位牌には、故人の戒名(かいみょう・仏門に入った方に授けられる名前)や法名、お亡くなりになった日、行年(ぎょうねん・この世で過ごした年数)などを記します。故人を偲び、手を合わせる際の依り代(よりしろ)として大切に扱われてきたことから、一人につき一基ずつ作るのが基本とされています。仏壇店の解説でも、一人の霊位に対して一基の位牌を用意するという考え方が紹介されています。
この考え方に沿えば、ご夫婦であっても、それぞれに一基ずつ位牌を作るのが基本です。たとえば、ご主人が先にお亡くなりになり、数年後に奥様が亡くなられた場合は、ご主人と奥様の位牌をそれぞれ用意することになります。
ただし、これは法律のように必ず守らなければならない決まりではなく、昔から受け継がれてきた考え方です。近年は、仏壇の大きさや住まいの事情、ご家族の希望に合わせて、位牌の形を選ぶ方もいます。夫婦位牌のデメリットには、この「一人に一基」という基本的な考え方とは異なる形であることに関係するものもあります。まずは一般的な位牌の考え方を知っておくと、夫婦位牌を選ぶ際の判断もしやすくなるでしょう。
夫婦位牌(連名位牌)が選ばれるようになった背景
近年、夫婦位牌を選ぶ背景の一つに、住まいや仏壇のコンパクト化があります。マンションなどに住み、仏壇を小さくしたことで、複数の位牌を並べるスペースを確保しにくくなったというご家庭もあります。そのため、ご夫婦の位牌を一基にまとめたいと、仏壇店に相談する方もいるようです。
また、ご夫婦それぞれの位牌を別々に作ると、作った時期の違いによって、汚れや文字のかすれ、色合いなどに差が出ることがあります。後から作った位牌と先に作った位牌の見た目がそろわないことを気にして、最初から夫婦位牌にまとめるという考え方もあります。
そのほか、「生前は仲の良い夫婦だったので、亡くなった後も一緒に祀りたい」という思いから、夫婦位牌を選ぶ方もいます。こうした理由から選ばれる一方で、作る時期や文字の入れ方によっては、後になって不便を感じることもあります。メリットだけでなく、気をつけたい点も知ったうえで決めることが、後悔を防ぐことにつながります。
たとえば、ご主人が先に亡くなり、その時点では一人用の位牌を作ったものの、数年後に奥様の位牌を用意する際、見た目をそろえるために夫婦位牌へ作り替えるケースも考えられます。夫婦位牌を選ぶ理由はご家庭によって異なります。まずは「なぜ夫婦位牌にしたいのか」を整理しておくと、ほかの方法と比べながら判断しやすくなります。
夫婦位牌と累代位牌・繰り出し位牌は何が違う?
夫婦位牌と似たものに、累代位牌(るいだいいはい)や繰り出し位牌(くりだしいはい)があります。名前や使い方が似ているため、ここで違いを整理しておきましょう。
夫婦位牌は、ご夫婦お二人の戒名などを一つの位牌に並べて彫るものです。一方、累代位牌は「○○家累代之霊位」のように、三十三回忌などの節目である弔い上げ(とむらいあげ)を終えたご先祖様を、まとめて祀るための位牌を指します。
繰り出し位牌は、複数の板札(いたふだ)を一つの箱型の位牌に収める形式です。故人が増えたときには板札を追加できるため、一つの位牌に複数の方の情報をまとめておけます。ご夫婦の供養に使う場合でも、一般的にはお一人につき一枚ずつ板札を用意します。
このように、夫婦位牌は「ご夫婦お二人の名前を一枚の板に並べて彫る」という点が特徴です。繰り出し位牌については、お盆の帰省で進める実家の仏壇・遺影整理、何から手をつける?でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。
それぞれの位牌には特徴があり、どれが適しているかは、ご家庭の事情によって変わります。仏壇の大きさや供養に対する考え方も踏まえながら、無理なく続けられる形を検討していきましょう。
夫婦位牌のデメリットで多いのは、後から文字を入れる場面?

夫婦位牌を作る際に、特に気をつけておきたいのが、文字を入れるタイミングです。ご夫婦のうち一人が先にお亡くなりになり、もう一方がご存命の段階で夫婦位牌を用意するケースでは、先に亡くなった方の文字だけを彫り、もう一方の文字は後から追加することになります。
しかし、位牌は、年月がたってから文字を追加することを想定して作られているとは限りません。そのため、仕上がりや見た目に差が出たり、供養の手順をあらためて確認する必要が生じたりすることがあります。ここでは、片側が空いた状態になることや、後から文字を入れた際の跡や色の違い、作り直しに必要な手続き、気持ちの面で考えておきたいことを順番に説明します。
位牌は、仏壇の前で手を合わせるたびに目にするものです。見た目の違いが気になるかどうかは人によって異なりますが、毎日目にするものだからこそ、後から気持ちが変わることもあります。作る前に具体的な仕上がりを想像しておきましょう。
先に一人分だけ彫ると、片側が空いた状態になる
夫婦位牌では、向かって右側にご主人、左側に奥様のお名前を記す形が基本とされています。そのため、ご主人が先にお亡くなりになった段階で夫婦位牌を作ると、奥様の名前を入れる側が空いたままになります。
一人分だけを先に彫る場合の配置には、片側に寄せて文字を入れる方法や、中央にお一人分の文字を彫る方法などがあります。具体的な配置は、仏壇店や地域によって考え方が異なります。先に一人分だけを彫ると、位牌全体の文字のバランスが偏って見えることもあり、後から文字を追加する際には、書体や彫りの深さを合わせる技術も必要です。
たとえば、ご主人の四十九日法要に合わせて夫婦位牌を作った場合、奥様の名前を入れるまでの十年、二十年という長い間、片側が空いた位牌を仏壇にお祀りすることになります。その状態をどう感じるかは、ご家庭によって違います。作ってから気になることがないよう、事前にご家族で仕上がりのイメージを話し合っておくと安心です。
仏壇店に相談する際は、「将来、奥様の名前を追加する予定ですが、最初はどの位置に彫るのがよいでしょうか」と尋ねてみましょう。後から文字を入れることを想定した配置ができるか、どのような仕上がりになるかを、具体的に確認できます。
後から文字を入れると、跡や色の違いが残ることがある
位牌には、漆(うるし)を塗った面に金色の文字を入れる仕上げが多く見られます。このような位牌に後から文字を追加すると、先に彫った文字と仕上がりがそろわない場合があります。仏壇店の案内でも、後から入れた文字は、色合いや風合いの違いによって、先に入れた文字と見た目が異なることがあると説明されています。
また、一度入れた文字を消して修正する場合も注意が必要です。文字を入れてから日が浅ければ比較的きれいに消せることがあっても、年月がたつと、文字を消した後に跡が残る場合があります。素材によっては、乾燥などの影響で表面の塗りにひび割れが生じることもあるとされています。
こうした事情から、仏壇店によっては、最初に一人分だけを彫り、後からもう一人分を追加する方法に対応していないところもあります。将来的に文字を追加する予定がある場合は、注文する前に、対応できるかどうかを確認しておきましょう。対応可能な場合も、追加できる時期や費用、仕上がりの違いについて聞いておくと安心です。
たとえば、最初に文字を彫ってから十年以上たって追加する場合、先に彫った文字は年月とともに色合いが落ち着いている一方、新しい文字は鮮やかに見えることがあります。こうした違いが気になる方は、後から文字を入れる方法だけでなく、最初は一人用の位牌を作る方法も含めて検討するとよいでしょう。
作り直す前に必要になる閉眼供養と、仏壇店に預ける期間
すでに一人分の位牌がある場合、夫婦位牌にまとめるには、新しい位牌を用意して作り替える方法が一般的です。その際、元の位牌については、閉眼供養(へいがんくよう・位牌から魂を抜く儀式で、魂抜きとも呼ばれます)を行ってから扱うのが基本とされています。供養を行わずに文字を入れ直したり、処分したりすることは避けたほうがよいと案内している仏壇店もあります。
また、文字入れには一定の時間がかかります。夫婦位牌に後から文字を追加する場合、仏壇店に位牌を預ける期間は、一週間から二週間ほどが目安とされています。その間は位牌を仏壇にお祀りできなくなるため、法要やお盆、お彼岸などの予定と重ならないように調整しておくことが大切です。
たとえば、奥様がお亡くなりになったことをきっかけに夫婦位牌を作る場合は、四十九日法要の日程から逆算して、早めに仏壇店へ相談しておくと、余裕を持って準備を進められます。
位牌を預けている間に別の法要が入る可能性もあるため、菩提寺の予定もあわせて確認しておきましょう。仏壇店だけで手続きを進めるのではなく、僧侶にも作り替えの時期を相談しておくと、必要な供養と日程をまとめて調整しやすくなります。
片側を空けておく形を「縁起が悪い」と感じる人もいる
先に一人分だけを彫り、もう一方を空けておく夫婦位牌は、ご家族や親族によって受け止め方が分かれることがあります。「まだご存命の方が亡くなるのを待っているようで、落ち着かない」と感じる方もいれば、縁起が悪いという印象を持つ方もいます。実際に、こうした理由から、最初から夫婦位牌を作る方法はあまり勧めていない仏壇店もあります。
ただし、地域によっては、ご夫婦の名前を連名にすることが一般的になっているところもあります。そのため、片側が空いた夫婦位牌がよいかどうかについて、一律に正解を決めることはできません。
空白のある位牌をお祀りすることに抵抗がある場合は、先にお亡くなりになった方の位牌を一人用で作り、もう一方がお亡くなりになったときに夫婦位牌へ作り替える方法もあります。ご家族や菩提寺の考え方も聞きながら、気持ちに無理のない形を選びましょう。
何より大切なのは、周囲の意見に合わせることだけではなく、ご家族が納得して手を合わせられることです。判断に迷う場合は、仏壇店の担当者に、これまでどのような相談があったのかを聞いてみるのも一つの方法です。
夫婦位牌にすると、魂抜きや開眼供養の費用は余分にかかる?

夫婦位牌は、別々に位牌を二基作る場合と比べて、本体の購入費用を抑えられることがあります。ただし、すでにある位牌から作り替える場合は、供養のお布施などが別に必要になり、想定していたよりも総額が高くなることがあります。費用は、夫婦位牌を選んだ後に「思っていた以上にかかった」と感じやすい部分の一つです。
ここでは、魂抜き、開眼供養(魂入れ)、位牌本体と文字入れにかかる費用、別々の位牌を用意する場合との違いを順に確認します。なお、ここで紹介する金額は、仏壇店や葬儀社の案内などで見られる目安です。実際の費用は、地域や寺院、位牌の種類によって変わります。
費用の全体像を先に把握しておけば、見積もりを取ったときにも比較しやすくなります。位牌本体の価格だけで判断せず、供養にかかる費用も含めて確認していきましょう。
すでに位牌がある場合に必要になる魂抜き(閉眼供養)
すでにご夫婦それぞれの位牌がある場合や、先にお亡くなりになった方の位牌を一人用で作っている場合、新しい夫婦位牌に作り替える際には、元の位牌の魂抜き(閉眼供養)が必要になるのが一般的です。魂抜きは、僧侶に読経をしていただく供養で、通常はお布施をお渡しします。
お布施の金額は、寺院や地域によって異なり、全国共通の決まった額があるわけではありません。仏壇店の案内では、位牌本体の価格によっては、魂抜きのお布施が位牌そのものの購入費用を上回ることもあると説明されています。
たとえば、一万円ほどの位牌を作り替える場合でも、元の位牌を供養するためのお布施が別途必要になります。位牌本体の値段だけを見て予算を考えていると、最終的な金額に驚くこともあるでしょう。作り替えを検討し始めた段階で、菩提寺に魂抜きをお願いできるか、お布施はどのくらい用意すればよいかを確認しておくと安心です。
なお、元の位牌を仏壇店で購入したのか、葬儀の際に菩提寺から用意してもらったのかによっても、供養を依頼する先や手順が異なる場合があります。判断に迷ったら、まず菩提寺に相談してみましょう。必要な手続きを教えてもらえるため、その後の準備も進めやすくなります。
新しい位牌の開眼供養(魂入れ)とお布施の考え方
新しく夫婦位牌を用意した場合は、仏壇にお祀りする前に、開眼供養(かいげんくよう・新しい位牌に魂を入れる儀式で、魂入れとも呼ばれます)を行うのが一般的です。四十九日法要に合わせて本位牌を用意する場合は、法要と同じ日に開眼供養を行うことも多いようです。
開眼供養と魂抜きのお布施については、合わせて一万円から五万円程度という目安が紹介されることがあります。ただし、これはあくまで参考となる金額であり、実際に必要な額は寺院ごとの考え方によって異なります。
作り替えのために別の日に供養をお願いする場合は、お布施のほかに、お車代などを用意することもあります。年忌法要や四十九日法要など、僧侶に来ていただく機会にあわせて供養を行えるか、菩提寺に相談してみるとよいでしょう。日程をまとめられれば、何度も供養をお願いする必要がなくなり、ご家族の負担を抑えられる場合もあります。
お布施の金額を直接尋ねにくいときは、「皆さま、どのくらいお包みになっていますか」と聞いてみる方法もあります。お布施には決まった料金があるわけではないため、寺院の考え方を伺いながら、無理のない範囲で準備しましょう。
位牌本体と二人分の文字入れ代の目安
夫婦位牌の本体価格は、使われている素材や仕上げによって幅があります。仏壇店や葬儀社の案内では、塗位牌(ぬりいはい)は一万円から三万円ほど、唐木位牌(からきいはい)は二万円から五万円ほど、モダン位牌は三万円から五万円ほどが目安として紹介されています。会津塗など、一部の塗位牌では十万円を超えるものもあります。
文字入れの費用は、一人分で三千円から五千円程度、二人分で六千円から一万円前後という例があります。店舗によっては、夫婦位牌にする場合、三千円ほどの追加料金で対応しているところもあります。
また、位牌はサイズが大きくなったからといって、必ずしも価格が大幅に上がるわけではないと説明する仏壇店もあります。ただし、料金体系は店舗ごとに違うため、本体価格に文字入れ代が含まれているか、後からの彫り直しにいくらかかるかなど、内訳を確認しておくことが大切です。見積もりの段階で確認しておけば、注文した後に追加料金が発生して慌てることも防ぎやすくなります。
さらに、戒名や俗名、没年月日、行年などを入れると、必要な文字数が増えます。二人分の情報を入れることで、文字数に応じた追加料金がかかる店舗もあります。依頼する前に、基本料金にどこまでの文字入れが含まれているのかも聞いておきましょう。
別々の位牌のままにした場合と費用を比べる
位牌を二基作る場合と、夫婦位牌を一基作る場合では、費用の考え方が変わります。ご夫婦ともにまだ位牌を用意していないのであれば、夫婦位牌を一基作ることで、本体の購入費用を抑えられる可能性があります。すでにある位牌を作り替える必要もなく、新しい位牌の開眼供養も一度で済むため、全体の費用を抑えやすいでしょう。
一方、すでに一人分の位牌がある場合は、夫婦位牌に作り替える際に、元の位牌の魂抜きと新しい位牌の開眼供養が必要になります。それぞれのお布施が加わるため、位牌本体が一基分で済んでも、供養にかかる費用を合わせると、別々の位牌をそのまま使い続けたほうが総額を抑えられる場合があります。
どちらが経済的かは、現在の位牌の状態や、これから必要になる手続きによって変わります。見積もりを取る際は、位牌本体と文字入れだけでなく、魂抜きと開眼供養のお布施まで含めて比較しましょう。総額を確認しておけば、費用面でも納得したうえで選びやすくなります。
もちろん、費用だけで決める必要はありません。仏壇の中に収まるか、お参りしやすいかといった点も含め、ご家族が納得できる形を選ぶことが大切です。迷った場合は、夫婦位牌にした場合と別々の位牌を使い続けた場合の二通りで見積もりを出してもらうと、違いを比較しやすくなります。
夫婦位牌は命日や行年が分かりにくくなる?見た目と読みやすさの問題

夫婦位牌は、一枚の板にご夫婦お二人分の情報を記すため、見た目や文字の読みやすさにも気を配る必要があります。戒名だけでなく、命日や行年、俗名(ぞくみょう・生前のお名前)なども記すと、文字数が増えます。そのため、一人用の位牌と同じ感覚では、情報を読み取りにくくなることがあります。
毎年の命日やお盆、お彼岸に手を合わせる際、「今日はどちらの命日だっただろう」と迷うこともあるかもしれません。ここでは、命日を確認しにくくなる理由や、裏面の文字の入れ方による違い、文字が小さくなる問題、命日を忘れないための工夫について順に説明します。
位牌は、日々のお参りの中で何度も目にするものです。見た目の美しさだけでなく、必要な情報を確認しやすいかどうかも、長く供養を続けていくうえで大切なポイントになります。作る前に、実際に使う場面を思い浮かべておきましょう。
二人分の戒名が並ぶと、どちらの命日か迷いやすい
夫婦位牌は、表面の向かって右側にご主人、左側に奥様の戒名を並べる形が基本とされています。表面を見るとお二人の戒名は確認できますが、命日や行年については、表面にすべてを記すスペースが足りず、裏面に彫られることが多くなります。そのため、表面だけを見ても、お二人それぞれの命日をすぐに確認できない場合があります。
たとえば、ご主人の命日にお参りをしようとしたとき、表面にはご夫婦二人の戒名が並んでいるため、どちらの命日なのかがすぐに分からないことがあります。裏面を確認すれば分かるものの、そのたびに位牌を持ち上げたり、裏返したりする手間がかかります。
仏壇店でも、命日が分かりにくくなることは、夫婦位牌を作る前に確認しておきたい点の一つとして案内されています。繰り出し位牌の板札に連名で記した場合にも、同じような問題が生じることがあります。日々のお参りで不便を感じないよう、表面だけでなく、裏面にどのような情報が記されるのかも事前に確かめておきましょう。
ご夫婦のどちらかの命日が近づいたときに、その都度、位牌を手に取って裏面を確認することが習慣になるご家庭もあります。ただし、位牌を動かす機会が増えると、落としたり、表面に傷や汚れを付けたりする可能性もあります。命日の確認方法についても、あらかじめ考えておくと安心です。
交差型・真裏型など、文字の入れ方で見え方が変わる
夫婦位牌の裏面に文字を入れる方法には、交差型と真裏型という二つの形式が紹介されることがあります。どちらも、表面にご夫婦それぞれの戒名を記し、裏面に俗名や命日、行年などを入れる点は同じです。異なるのは、裏面の文字をどの位置に、どの向きで配置するかという部分です。
どちらの形式を選ぶかは、菩提寺の指導や地域の習慣によって変わる場合があります。また、仏壇店によって対応できる文字の入れ方が限られていることもあるため、希望する形式がある場合は、注文する前に伝えておきましょう。
たとえば、命日を確認するために位牌の裏面を見る機会が多いご家庭なら、文字の配置や読みやすさを重視して相談する方法もあります。必ずどちらかが正しいというわけではなく、ご家族が日々のお参りの中で無理なく確認できることも、選ぶ際の目安になります。菩提寺に相談できる場合は、文字の入れ方についても確認しておくと、後から形式を変更する手間を避けやすくなります。
写真だけでは、実際にどのように見えるのか判断しにくいこともあります。可能であれば、仏壇店で文字入れの見本を見せてもらい、二人分の情報が入ったときの見え方を確かめておくとよいでしょう。
彫る面積が狭くなり、文字が小さくなることがある
一人用の位牌と同じ大きさのものを夫婦位牌として使うと、二人分の文字を収めるために、一文字ずつの大きさが小さくなることがあります。仏壇店の案内でも、夫婦位牌の注意点として、文字を彫るスペースが限られ、文字が小さくなりやすいことが挙げられています。
戒名に院号や道号が含まれている場合は、文字数が多くなるため、さらに小さな文字で彫らなければならないこともあります。仏壇の前に座ってお参りするとき、文字が小さくて読み取りにくいと感じる方もいるでしょう。
また、位牌の種類によっては、夫婦位牌として使うことを想定していないデザインもあります。モダン位牌など、デザイン性を重視したものは、文字を入れられる範囲があらかじめ決まっている場合があります。二人分の戒名や命日などを無理なく入れられるか、購入前に確認しておくことが大切です。実物や見本の写真で、文字を入れた後の状態を見せてもらうと、仕上がりをイメージしやすくなります。
文字の大きさは、位牌を作った後に変更するのが難しい部分です。ご家族の中に、視力の変化によって小さな文字が読みづらくなっている方がいる場合は、その点も踏まえて、位牌の大きさや種類を選ぶようにしましょう。
命日を見失わないために、過去帳やメモで残しておく方法
夫婦位牌では命日を確認しにくいことがありますが、位牌以外の場所にも記録を残しておけば、その不便さを補えます。たとえば、過去帳(かこちょう・故人の戒名や命日を記録しておく帳面)に、ご夫婦それぞれの命日を書いておく方法があります。仏壇店の案内でも、過去帳を仏壇の引き出しなどに保管し、位牌と一緒に使っているご家庭があると紹介されています。
もっと手軽な方法としては、手帳やカレンダー、スマートフォンのカレンダーアプリに命日を登録しておく方法もあります。家族で共有できるカレンダーを使えば、お子さんやお孫さんの世代になっても、命日を確認しやすくなります。
菩提寺が檀家(だんか)さんの命日を記録している場合もあるため、分からないことがあれば、お寺に尋ねてみるのも一つの方法です。夫婦位牌を作ったことで、命日の記録が曖昧になってしまわないよう、位牌とは別に確認できるものを用意しておくと安心です。大切な方の命日を家族の中で受け継いでいくための準備として、取り入れてみてはいかがでしょうか。
命日を記録したものがあれば、将来、位牌を受け継ぐ人が変わったときにも役立ちます。位牌だけに頼らず、必要な情報を確認できるようにしておくことが、長く供養を続けていくための備えになります。
夫婦位牌は仏壇に入る?サイズ選びで起きやすいデメリット

夫婦位牌を選ぶ際には、サイズにも注意が必要です。ご夫婦二人分の名前を一つの位牌に彫るため、一人用よりも幅のあるものが必要になることがあります。そのため、今使っている仏壇にきちんと収まるかどうかを、購入前に確かめておかなければなりません。
仏壇のスペースを節約するために夫婦位牌を選んだものの、位牌自体が大きくなり、かえって仏壇の中が窮屈になってしまうこともあります。ここでは、二人分の文字を入れるために必要な幅や、ご先祖様の位牌との大きさのバランス、購入前に測っておきたい仏壇の寸法について説明します。
位牌が届いてからサイズが合わないと分かった場合、交換や作り直しが必要になる可能性もあります。余計な費用や手間をかけないためにも、購入する前に、置き場所とサイズを確認しておきましょう。
二人分の文字を入れるために、幅のある位牌が必要になる
夫婦位牌には、ご夫婦それぞれの戒名や俗名、命日などを記すためのスペースが必要です。仏壇店の案内では、四寸以上の位牌や、幅を広く取った「巾広位牌」「中巾位牌」などが選択肢として紹介されています。たとえば、板札の幅が五センチ以上あれば、戒名や俗名などを比較的バランスよく入れやすいとされています。
反対に、幅の狭い位牌に二人分の文字を詰め込むと、文字を入れるスペースが足りなくなったり、全体の配置が不自然になったりすることがあります。そのため、夫婦位牌を作る際には、一人用の位牌よりも少し大きめのものを選ぶのが一般的です。
ただし、位牌が大きくなれば、その分だけ仏壇の中で場所を取ります。夫婦位牌は、二基の位牌を並べる必要がなくなる一方、一基あたりのサイズが大きくなることがある点も知っておきたいところです。別々の位牌を二基並べた場合と、夫婦位牌を一基置いた場合では、どちらがスペースを取らないのか、事前に比べておくと安心です。
仏壇店によっては、仏壇の写真や内寸を伝えると、無理なく収まる位牌のサイズを一緒に考えてもらえます。相談する前に、仏壇の中を測っておくと、具体的な話を進めやすくなります。
先祖の位牌より大きくならないようにする、という考え方
夫婦位牌のサイズを選ぶ際には、ご先祖様の位牌との大きさのバランスにも目を向けておきましょう。仏壇店の案内では、夫婦位牌はご先祖様の位牌より大きくしないのがマナーとされる、という考え方が紹介されています。地域によっては、ご先祖様よりも大きな位牌をお祀りすることを避ける風習もあるようです。
たとえば、仏壇にご両親やご祖父母の位牌がすでに並んでいる場合、そこに大きな夫婦位牌を加えると、全体の大きさのバランスが気になることがあります。ご夫婦を大切に思う気持ちから大きな位牌を選びたくなることもあるかもしれませんが、仏壇全体の見た目や調和も考えておきたいところです。
適切なサイズは、ご家庭や地域の風習、菩提寺の考え方によって異なります。どのくらいの大きさにすればよいか迷ったら、仏壇店の担当者に仏壇の写真を見せて相談したり、菩提寺に尋ねたりしてみましょう。すでにお祀りしている位牌とのバランスを確認しておけば、選びやすくなります。ご家族の思いとご先祖様への敬意の両方を大切にしながら、納得できるものを選びましょう。
位牌の大きさについては、ご家族や親族の間で意見が分かれることもあります。後から行き違いが生じないよう、購入前にどのような位牌を選ぶ予定なのか、家族にも伝えておくと安心です。
買う前に確かめたい、仏壇の内寸と置き場所
夫婦位牌を購入する前に、まず確認しておきたいのが、仏壇の内側の寸法です。位牌の高さや幅だけでなく、奥行きや、手を合わせるときに十分なスペースが確保できるかどうかも確認しておきましょう。寸法だけを見ると収まりそうでも、実際に置いてみると、ほかの仏具との間隔が狭くなり、窮屈に感じることがあります。メジャーで仏壇の内寸を測り、ほかの位牌や仏具の配置も紙に書き出してみると、置いたときの様子をイメージしやすくなります。
上置き型の小さな仏壇や、家具調のコンパクトな仏壇を使っている場合は、置ける位牌のサイズが限られることがあります。仏壇店で位牌を選ぶ際には、仏壇の寸法を伝え、無理なく収まる大きさのものを相談するとよいでしょう。
また、仏壇を小さなものに買い替えるタイミングで、位牌や供養の方法を見直すご家庭もあります。位牌を置くスペースを確保しにくい場合には、遺骨の一部や写真を身近な場所に置いて供養する方法を取り入れる方もいます。手元供養については、手元供養とは?種類と選び方をわかりやすく解説で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。
位牌を置く場所が決まっている場合は、紙を実際の位牌と同じ大きさに切り、仏壇の中に置いてみる方法もあります。手軽にできる確認方法ですが、ほかの仏具との間隔や、置いたときの圧迫感を確かめるのに役立ちます。
夫婦位牌は宗派や菩提寺によって扱いが違う?

夫婦位牌は、どの宗派でも同じように扱われるわけではありません。そもそも位牌に対する考え方が宗派によって異なり、同じ宗派であっても、寺院や地域によって夫婦位牌への考え方が違うことがあります。仏壇店で注文できたとしても、菩提寺の考え方と合わず、後から作り直しが必要になる可能性もあります。
夫婦位牌を選ぶ際に、宗派や寺院の考え方は特に確認しておきたい点です。仏壇店だけでは判断が難しいこともあるため、ここでは、位牌を用いない宗派の考え方や、夫婦位牌を勧めない寺院・地域がある理由、菩提寺に相談する際に確認しておきたいことを整理します。
宗派や寺院ごとの考え方は、調べただけでは判断できない場合もあります。迷ったときは、位牌を注文する前にお寺へ相談しておきましょう。早めに確認しておけば、作り直しにかかる費用や手間を避けやすくなります。
浄土真宗など、位牌を用いない宗派での考え方(法名軸・過去帳)
浄土真宗では、お亡くなりになった方に授けられる名前を、戒名ではなく法名(ほうみょう)と呼びます。男性は「釋(しゃく)」、女性は「釋尼(しゃくに)」を法名の前に付けるのが一般的です。また、浄土真宗では、基本的に位牌を用いず、法名軸(ほうみょうじく・法名を書いた掛け軸)や過去帳を使って故人を偲ぶという考え方があります。
ただし、近年は浄土真宗のご家庭でも位牌を作ることがあり、すべてのご家庭が位牌を用意しないというわけではありません。仏壇店によっては、法名軸にご夫婦の名前を連名で記すことに対応しているところもあります。
たとえば、ご実家が浄土真宗で、位牌を作るべきか迷っている場合は、まず菩提寺に相談してみましょう。法名軸や過去帳を使った供養の方法など、ご家庭の状況に合った方法を教えてもらえます。夫婦位牌がどのように扱われるかは、お寺によって考え方が異なることもあるため、事前に確認しておくことが大切です。宗派の考え方を知らずに位牌を作ると、後から作り直すことになる可能性もあります。
また、浄土真宗以外の宗派でも、戒名の付け方や位牌への文字の入れ方には違いがあります。ご自身の宗派が分からない場合は、ご家族に確認したり、お墓や仏壇の様子、葬儀の際にお世話になった僧侶について尋ねたりすると、確認の手がかりになります。
夫婦位牌を歓迎しない寺院や地域があるのはなぜか
仏壇店の案内では、夫婦位牌を勧めていない寺院や地域もあるため、作る前に菩提寺へ相談しておくことが推奨されています。その背景には、位牌は故人一人ひとりをお祀りするものという考え方があります。一人につき一基という形を大切にしている寺院では、夫婦位牌が本来の考え方に合わないと受け止められることがあるようです。
一方、地域によっては、ご夫婦の名前を連名にして一基にまとめる習慣が根づいているところもあります。逆に、片側を空けたままの夫婦位牌を好ましく思わない地域もあります。このように、夫婦位牌に対する考え方は、宗派や寺院だけでなく、地域の風習によっても違いがあります。
ご家庭では自然だと思っている形が、菩提寺や地域の考え方とは異なることもあります。そのような場合は、どちらが正しいかを決めつけるのではなく、お寺の考え方を聞いたうえで、ご家族が納得できる方法を探していくことが大切です。相談して話を聞くことで、迷っていた気持ちが整理されることもあります。
たとえば、ご自身の育った地域では夫婦位牌が一般的だったものの、現在住んでいる地域ではあまり見かけず、親族から驚かれたというケースも考えられます。周囲との考え方の違いに戸惑ったときこそ、早めに相談しておくと、その後の判断を進めやすくなります。
菩提寺に相談するときに確認しておきたいこと
夫婦位牌を作る前に菩提寺へ相談する場合は、いくつかの点を確認しておくと安心です。まず、夫婦位牌をお祀りすることについて、お寺ではどのように考えているのかを尋ねてみましょう。そのうえで、戒名や法名をどのように並べるのか、文字の入れ方に決まりがあるのかについても確認しておくと、位牌を選ぶ際の参考になります。
すでに位牌がある場合は、作り替える際に魂抜きや開眼供養をお願いできるかどうかも聞いておきましょう。あわせて、供養を行う時期やお布施の目安を確認しておけば、準備を進める際に慌てずに済みます。
長年お寺との付き合いがあるご家庭でも、位牌について具体的に相談する機会は、それほど多くないかもしれません。いきなり詳しい話をするのが難しければ、「位牌のことで少し相談したいのですが」と、まず電話で都合を尋ねるだけでも構いません。菩提寺との付き合いや、お亡くなりになった際の連絡については、親が亡くなったら檀家はどうなる?菩提寺への連絡から引き継ぎまで解説でも紹介しています。位牌を作る前に相談できる相手として、菩提寺の存在を思い出しておきましょう。
相談するときに、仏壇店から受け取った見積もりや、検討している位牌の写真を用意しておくと、希望する形を具体的に伝えられます。お寺側も仕上がりをイメージしやすくなり、話を進めやすくなるでしょう。
夫婦位牌は家族の理解を得にくい?夫婦関係・親族・子ども世代の視点

夫婦位牌は、ご夫婦だけでなく、お子さんや親族にとっても関わりのあるものです。位牌は、お亡くなりになった後もご家族が手を合わせ、将来は次の世代へ引き継いでいくものです。そのため、作る段階で家族の考えが十分に共有されていないと、後になって違和感が生まれたり、意見が食い違ったりすることがあります。
夫婦位牌には、生前のご夫婦の関係や、ご家族それぞれの事情が反映される面もあります。ここでは、夫婦関係や再婚・離婚にまつわる事情、親族から意見が出た場合の対応、お子さんの世代が将来管理するときのこと、そして生前に希望を伝えておく大切さについて見ていきます。
位牌の形が整っていても、ご家族の気持ちがまとまっていなければ、お参りするたびに気がかりが残ることがあります。文字の入れ方や費用などの実務的な問題だけでなく、気持ちの面でも納得できるかどうかを考えておきましょう。
夫婦仲や再婚・離婚の事情があるときに考えたいこと
夫婦位牌には、亡くなった後もご夫婦が一緒にいるという思いが込められることがあります。そのため、生前の夫婦関係が穏やかではなかった場合や、ご夫婦の間に複雑な事情があった場合には、夫婦位牌という形が必ずしも合うとは限らないと案内する葬儀社もあります。周囲からは仲の良い夫婦に見えていても、ご本人たちにしか分からない事情があった可能性もあります。ご家族だけの考えで決めず、故人の希望や関係者の気持ちにも目を向けたいところです。
また、再婚している場合や、以前の結婚でお子さんがいる場合には、どなたの名前を一つの位牌に並べるのかという点で、意見が分かれることもあります。ご存命の配偶者が将来再婚する可能性がある場合も、片側を空けた夫婦位牌を作ることに、気持ちの面で抵抗を感じるかもしれません。
このような事情がある場合は、夫婦位牌にこだわらず、まずは一人ずつの位牌を作り、後から節目に合わせて形を見直す方法もあります。ご家族それぞれの思いを大切にしながら、すぐに結論を出そうとせず、時間をかけて考えていくことが大切です。
家族の間では話しにくい内容であれば、仏壇店の担当者や菩提寺の僧侶など、第三者に相談する方法もあります。無理に一つの形にまとめようとせず、ご家族が落ち着いて供養できる方法を探していきましょう。
親族から意見が出たときの受け止め方
位牌の形を決める際には、義理のご両親やきょうだい、親戚などから意見が出ることもあります。たとえば、「位牌は一人につき一基ずつ作るものではないか」「最初は一人用にして、将来夫婦位牌にまとめればよいのでは」といった考えを伝えられることがあります。実際に、ご主人が若くして亡くなった後、お姑さんが一人用の位牌を作ることに抵抗を示したという相談例もあります。
こうした場面では、どちらの意見が正しいかを決めようとするよりも、それぞれがどのような思いを持っているのかを聞き、納得できる形を探すことが大切です。位牌は、家族それぞれが故人を偲び、手を合わせるためのものでもあります。一方の意見だけで決めてしまうと、後々の親族関係にも影響が出る可能性があります。
お墓や供養の方針をめぐって、きょうだいなどの間で意見が分かれる場合については、お墓の兄弟トラブルはなぜ起きる?原因別の対処法と円満に進めるコツでも、考え方や話し合いの進め方を紹介しています。位牌についても、作る前にご家族や親族へ希望を伝えておくと、後から意見が食い違うことを防ぎやすくなります。
ご自身がなぜその形を希望するのか、理由を一言添えて伝えるだけでも、相手に気持ちが伝わりやすくなります。意見を出してくれた方にも故人を大切に思う気持ちがあることを踏まえ、互いの考えを尊重しながら話し合っていきましょう。
子ども世代が将来の管理で困りにくい形にしておく
ご夫婦がお亡くなりになった後、位牌はお子さんやお孫さんの世代に引き継がれ、供養が続けられることが一般的です。夫婦位牌は一基にまとまっているため、管理する位牌の数を抑えられるという良さがあります。ただし、位牌の意味や供養の仕方が次の世代に伝わっていないと、どのように扱えばよいか分からず、困ってしまうこともあります。
たとえば、位牌の裏面に記されている命日や、菩提寺との関係、これまでどのように供養を続けてきたかといった情報が引き継がれていなければ、次の世代は何をすればよいのか判断しにくくなります。また、三十三回忌などの節目である弔い上げを終えた後、累代位牌にまとめる場合もあります。その際、夫婦位牌をどのように扱うかは、将来のご家族が考えることになります。
夫婦位牌を作るときには、今のご家族にとって都合がよいかだけでなく、お子さんの世代が無理なく管理できるかどうかも考えておきましょう。供養の記録や菩提寺の連絡先などを書き残しておけば、引き継ぐ際にも役立ちます。
お子さんが遠方に住んでいたり、将来は仏壇を持つ予定がなかったりする場合は、位牌をどのように引き継ぐのかについても、早めに話し合っておくと安心です。ご夫婦の希望だけで決めるのではなく、次の世代の暮らしや考え方も踏まえて、長く続けられる形を考えてみましょう。
生前のうちに、ご夫婦の希望を家族に伝えておく
夫婦位牌を希望している場合は、生前のうちに、ご自身の考えをご家族に伝えておくことをおすすめします。仏壇店や葬儀社の案内でも、ご夫婦の希望をあらかじめ確認しておくことが勧められています。お亡くなりになった後に、ご遺族だけで位牌の形を決めると、意見がまとまらず、迷ってしまうこともあるためです。
希望を伝えるために、改まった話し合いの場を設ける必要はありません。エンディングノートに「位牌は夫婦で一基にまとめてほしい」「一人ずつ別々に作ってほしい」と書いておくだけでも、ご家族が判断するときの手がかりになります。なぜその形を希望するのかも一緒に書いておくと、ご家族も気持ちを理解しやすくなるでしょう。
また、位牌の形だけでなく、菩提寺との付き合い方や、将来どのように供養を続けてほしいかについても、あわせて話しておくと安心です。すぐに答えを出す必要はありません。お正月やお盆など、ご家族が集まる機会に少しずつ話題にしてみてはいかがでしょうか。ご夫婦で希望を確かめ合う時間も、これからの備えの一つになります。
希望を書き残しておけば、ご家族が判断に迷ったときに立ち返ることができます。せっかく記録しても、必要なときに見つからなければ意味がないため、ご家族にも保管場所を伝えておくとよいでしょう。
夫婦位牌のデメリットを踏まえて、どう選ぶ?向く人・向かない人と別の選択肢

ここまで、夫婦位牌を選ぶ際の注意点を、文字入れ、費用、見た目、サイズ、宗派、ご家族の考え方という六つの面から見てきました。気をつけたいことはいくつかありますが、だからといって夫婦位牌がよくないというわけではありません。ご家庭の状況によっては、夫婦位牌にまとめることが、最も納得できる選択になる場合もあります。
大切なのは、メリットとデメリットの両方を理解したうえで、ご家庭に合う形を選ぶことです。ここでは、夫婦位牌が向いているご家庭の特徴や、別々に作って後からまとめる方法、ほかの選択肢、迷ったときに考えたい順番を整理します。ご家族で話し合う際の参考にしてください。
どの方法にも、それぞれの良さと気をつけたい点があります。周囲の考え方だけで決めるのではなく、ご家族が納得して手を合わせられる形を見つけていきましょう。
夫婦位牌が向いているご家庭の特徴
夫婦位牌が向いているのは、まず、ご夫婦の仲が良く、亡くなった後も一緒に祀りたいという気持ちを、ご家族も自然に受け止められるご家庭です。生前からご本人が希望を伝えており、ご家族もその考えに納得している場合は、気持ちの面でも迷いが少なく、準備を進めやすくなります。
また、仏壇が小さく、複数の位牌を並べるスペースが限られているご家庭や、ご夫婦が近い時期にお亡くなりになり、二人分の位牌を同じタイミングで用意できるご家庭も、夫婦位牌を選びやすいと考えられます。一般的には、ご夫婦お二人がお亡くなりになった後、お子さんがご両親の夫婦位牌を作るケースも紹介されています。
さらに、菩提寺が夫婦位牌を受け入れており、仏壇店でも将来の文字入れなどについて丁寧に対応してもらえる場合は、安心して準備を進めやすいでしょう。こうした条件を事前に確認しておけば、夫婦位牌を選んだ後に困ることを減らせます。ご自身のご家庭ではどの条件が当てはまるのか、一つずつ確認してみてください。
もちろん、すべての条件がそろっていなければ夫婦位牌を選べないというわけではありません。気になる点がある場合も、別の方法を含めて比較することで、ご家庭に合った供養の形を見つけられます。
別々に作って、あとからまとめる方法
夫婦位牌のデメリットが気になる場合は、最初は一人ずつの位牌を作り、後から節目に合わせて一つにまとめる方法もあります。たとえば、ご主人が先にお亡くなりになったときは一人用の位牌を用意し、奥様がお亡くなりになった段階で、夫婦位牌に作り替えるという流れです。
この方法なら、最初から片側が空いた夫婦位牌をお祀りする必要がなく、後から文字を追加することによる仕上がりの違いも避けやすくなります。仏壇店の案内では、十三回忌から十七回忌以降の節目に、ご夫婦の名前を併記した連名の位牌を用いる場合があると紹介されています。また、三十三回忌を終えた段階で、累代位牌にまとめるご家庭もあります。
ただし、後から位牌をまとめる場合は、元の位牌の魂抜きと、新しい位牌の開眼供養が必要になるのが一般的です。そのため、供養にかかる費用や手続きの手間は発生します。それでも、ご家族が気持ちの整理をつけたうえで、納得して位牌をまとめられることは、この方法の良さといえます。いつ頃まとめるかについては、あらかじめ菩提寺に相談しておくと、時期を決めやすくなります。
最初から夫婦位牌を用意する方法と比べると、時間をかけて考えられる点も、後からまとめる方法のメリットです。急いで決める必要がない場合は、こうした選び方も検討してみましょう。
板札だけ入れ替える・法名軸にするなど、ほかの選択肢
夫婦位牌以外にも、供養を続けるための方法はいくつかあります。たとえば、位牌の種類によっては、板札だけを交換できるものがあります。最初は一人分の名前を入れておき、後から二人分の名前を入れた板札に交換すれば、位牌全体を新しく作り直さずに済む場合があります。仏壇店によっては板札だけを購入できるため、新しい位牌を一から用意するより費用を抑えられる可能性があります。
また、繰り出し位牌であれば、お一人につき一枚ずつ板札を用意できるため、命日などの情報も個別に確認しやすくなります。浄土真宗のご家庭では、法名軸にご夫婦の名前を連名で記す方法や、過去帳に記録を残す方法も選択肢になります。
位牌や仏壇を持たない形で供養することや、お寺との付き合い方そのものを見直すことを考えている場合は、檀家をやめて墓なしにするとどうなる?葬儀・供養・遺骨の行き先を解説も参考になります。夫婦位牌という形にこだわりすぎず、ご家族が無理なく手を合わせられる方法を考えてみましょう。
ただし、板札を交換できるかどうかは、位牌の種類や仏壇店の対応によって異なります。将来的に板札を入れ替える可能性がある場合は、購入する前に、交換に対応しているかどうかを確認しておくと安心です。
迷ったときに考える順番
夫婦位牌にするか、別々の位牌にするか決められない場合は、確認することを順番に整理すると考えやすくなります。まずは、菩提寺の考え方を確かめましょう。宗派や寺院によって夫婦位牌への対応が異なる場合があるため、最初に相談しておけば、その後の選択肢を絞り込みやすくなります。
次に、仏壇の寸法を測り、夫婦位牌が無理なく収まるか、ご先祖様の位牌との大きさのバランスに問題がないかを確認します。そのうえで、ご家族の気持ちも聞いておきましょう。ご夫婦の希望だけでなく、お子さんの考えや親族の意見も、無理のない範囲で共有しておくと安心です。
最後に、位牌本体と文字入れの費用に加え、魂抜きや開眼供養のお布施まで含めた見積もりを取り、別々の位牌にした場合と比較します。この順番で確認しておけば、作った後に気づいて後悔することを減らせます。どうしてもすぐに決められない場合は、まず一人用の位牌で供養を始め、時間をかけて見直す方法もあります。焦らず、ご家族のペースで考えていきましょう。
必ずしもこの順番どおりに進める必要はありませんが、菩提寺への相談は早めに済ませておくのがおすすめです。最初に考え方を確認しておけば、位牌の種類や費用など、次に検討すべきことも整理しやすくなります。
まとめ
夫婦位牌は、仏壇のスペースを有効に使えるうえ、ご夫婦を一つの位牌にまとめて祀れるという良さがあります。一方で、後から文字を追加するときの手間や、魂抜き・開眼供養にかかる費用、命日の確認のしにくさ、サイズ選びの難しさ、宗派や菩提寺による考え方の違い、ご家族の理解など、事前に確認しておきたい点もあります。
こうした注意点は、作る前に把握しておけば、あらかじめ対策を考えられるものがほとんどです。まずは菩提寺に考え方を尋ね、仏壇の寸法を測り、ご家族の希望を共有する。この三つを意識するだけでも、納得できる位牌を選びやすくなります。最初から夫婦位牌にまとめることにこだわらず、別々の位牌を作って、後からまとめる方法もあります。ご家庭の状況に合わせて、無理のない形を検討してみてください。
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