任意後見の費用はいくら?初期費用・月額報酬・総額の目安を解説

「任意後見を検討しているけれど、実際にいくらかかるのかがわからなくて踏み出せない」——そんな声をよく耳にします。老後の備えとして注目される任意後見制度ですが、費用の全体像が見えないと、準備を先延ばしにしてしまいがちです。
この記事では、任意後見にかかる費用を「初期費用」と「月額費用」に分けて整理し、総額の目安まで丁寧に解説します。費用の仕組みを知ることで、自分に合った準備の進め方がきっと見えてくるはずです。

任意後見にかかる費用は「2段階」で発生する

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任意後見の費用について調べ始めると、「公正証書」「後見監督人の報酬」「申立て費用」など、さまざまな言葉が出てきて混乱してしまう方も多いのではないでしょうか。

まず押さえておきたいのは、任意後見にかかる費用は大きく「契約を結ぶときの初期費用」と「後見が実際に始まってからの継続費用」の2段階に分かれるという点です。


この2段階の構造を頭に入れておくだけで、費用の全体像がぐっとつかみやすくなります。それぞれどのような費用が発生するのか、順を追って見ていきましょう。なお、任意後見制度そのものの仕組みや、どんな場面で役立つかについては、【初心者向け】任意後見でできることを解説|財産・介護・住まいの場面別ガイドもあわせてご覧ください。

契約時にかかる初期費用と、開始後にかかる継続費用

任意後見の費用は、発生するタイミングによって性質が大きく異なります。まず「初期費用」は、任意後見契約を公正証書として作成する段階と、実際に後見を開始するために家庭裁判所へ申立てを行う段階の、2つの時点で発生します。どちらも数万円規模が中心で、一度きりの支出です。
一方、「継続費用」は後見が始まってから毎月発生するもので、任意後見人への報酬と任意後見監督人(にんいこうけんかんとくにん)への報酬が主な内訳です。

後見が必要な期間が長くなるほど、この継続費用の総額は積み上がっていきます。たとえば後見期間が5年・10年と続く場合、初期費用よりも継続費用の合計のほうがはるかに大きくなるケースも珍しくありません。
準備を始める前に「初期でいくら、月々いくら」という2軸で費用を把握しておくことが、後悔のない選択につながります。

費用の支払い元は「本人の財産」が原則

任意後見にかかる費用は、原則として後見を受ける本人の財産から支払われます。家族が立て替えたり、後見人が自費で負担したりするものではありません。この点を誤解されている方が意外と多いため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
具体的には、公正証書の作成費用・申立て費用・後見人報酬・後見監督人報酬のいずれも、本人の預貯金や資産の中から支出されます。そのため、任意後見を利用する場合は、本人の財産状況に応じてどの程度の費用が継続的に発生するかを事前に見積もっておく必要があります。
また、費用の支払いは任意後見人が本人に代わって管理する財産の中から行われるため、後見人は収支の記録を適切に保管し、任意後見監督人に定期的に報告する義務を負います。費用の流れを把握しておくことは、本人にとっても家族にとっても、安心して制度を活用するための第一歩といえるでしょう。

【初期費用①】任意後見の公正証書の作成にかかる費用

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任意後見契約を結ぶには、必ず公証役場(こうしょうやくば)で公正証書(こうせいしょうしょ)として契約書を作成しなければなりません。これは法律上の要件であり、口頭や普通の書面では契約の効力が認められないため、避けて通ることができません。この段階でかかる費用が、任意後見における最初の出費となります。
公正証書の作成にかかる費用は、公証人(こうしょうにん)に支払う手数料が中心ですが、いくつかの実費も加算されます。以下では内訳を具体的に見ていきます。また、公正証書をいつ・どのタイミングで作成すべきかについては、任意後見の公正証書はいつ作る?作成タイミングと準備の進め方を解説で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

公証人手数料の内訳と目安

公証役場で任意後見契約の公正証書を作成する際にかかる主な費用は、以下のとおりです。

  • 公正証書作成手数料:任意後見契約1件につき1万1,000円
  • 証書の枚数加算:証書が4枚を超える場合、1枚ごとに250円が加算
  • 法務局への登記嘱託(しょくたく)手数料:1,400円
  • 登記所への郵送費:実費(数百円程度)

これらを合計すると、通常は1万5,000円〜2万円程度が目安となります。契約内容が複雑で証書の枚数が増えると、その分だけ費用も加算されます。
なお、体調などの事情で公証役場に出向くことが難しい場合、公証人に自宅や病院まで出張してもらうことも可能です。ただし出張の場合、手数料が通常の1.5倍となり、さらに日当(4時間以内なら1万円、1日なら2万円)と交通費の実費が別途かかります。外出が難しい方は、この点も念頭に置いて費用を見積もっておくとよいでしょう。

司法書士・弁護士に手続きを依頼した場合の追加費用

任意後見契約の手続きは、本人が直接公証役場に出向いて行うことも可能です。その場合、公証人手数料と実費のみで済むため、費用を抑えることができます。一方で、契約内容の設計や書類の準備は専門的な知識が必要なため、多くの方が司法書士や弁護士などの専門家に依頼しています。
専門家に依頼した場合の報酬相場は、おおむね以下のとおりです。

  • 司法書士への依頼:5万〜10万円程度
  • 弁護士への依頼:10万〜15万円程度

専門家に依頼するメリットは、契約内容の漏れや不備を防げる点にあります。任意後見契約では、後見人にどの範囲の権限を与えるかを具体的に定める必要があり、記載が不十分だと実際に後見が始まった際に対応できない場面が生じることがあります。費用はかかりますが、将来のトラブルを未然に防ぐ観点から、専門家のサポートを検討する価値は十分あるでしょう。
初期費用①の合計目安として、自分で手続きする場合は約2万円、専門家に依頼する場合は7万〜17万円程度を見込んでおくとよいでしょう。

【初期費用②】任意後見を開始するときの申立て費用

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任意後見契約を結んだだけでは、後見はまだ始まりません。実際に本人の判断能力が低下してきたタイミングで、家庭裁判所に「任意後見監督人選任の申立て」を行って初めて、後見人としての活動がスタートします。この申立ての際にも、費用が発生します。
公正証書の作成費用と比べると金額は小さいものの、見落としやすい実費がいくつかあります。あらかじめ把握しておくことで、いざというときにあわてずに済みます。

家庭裁判所への申立てに必要な費用一覧

任意後見監督人(にんいこうけんかんとくにん)選任の申立てにかかる主な費用は、以下のとおりです。

  • 申立て手数料(収入印紙):800円
  • 後見登記手数料(収入印紙):1,400円
  • 郵便切手:裁判所によって異なりますが、数千円程度が目安
  • 医師の診断書作成費用:5,000円〜1万円程度(医療機関により異なる)

これらを合計すると、申立て時の実費はおおむね1万〜2万円程度に収まるケースが多いです。法定後見(ほうていこうけん)の申立てと比べると、費用・手続きともにシンプルな点が任意後見の特徴のひとつです。

診断書・登記費用など見落としがちな実費

申立てにあたって特に準備が必要なのが、医師の診断書です。任意後見監督人の選任を申立てる際には、本人の判断能力が低下していることを医学的に証明する書類として、診断書の提出が求められます。かかりつけ医に依頼することが多いですが、認知症専門外来や精神科での受診が必要になるケースもあり、費用や時間がかかる場合があります。
また、任意後見契約を結んだ時点で法務局に登記されていますが、後見開始後も登記事項の変更が生じた場合には、別途登記手続きが必要になることがあります。これらの実費は金額としては大きくないものの、「費用がかかるとは知らなかった」と後から驚かれる方も少なくありません。
申立て手続きを司法書士や弁護士に依頼する場合は、別途3万〜5万円程度の報酬が加わることも念頭に置いておきましょう。公正証書の作成と申立て手続きをまとめて専門家に依頼するケースでは、初期費用②を含めたトータルの初期費用が10万〜20万円前後になることもあります。

【月額費用】任意後見人・後見監督人への報酬の相場

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初期費用が一度きりの支出であるのに対し、月額費用は後見が続く限り毎月発生し続けます。任意後見の費用を考えるうえで、この継続的な負担をどう見積もるかが最も重要なポイントといっても過言ではありません。月額費用には「任意後見人への報酬」と「任意後見監督人への報酬」の2種類があり、それぞれ決まり方が異なります。
どちらの報酬も本人の財産から支払われるため、長期間にわたる場合は財産への影響も無視できません。それぞれの相場と仕組みをしっかり理解しておきましょう。

任意後見人への報酬は誰が・いくら払う?

任意後見人(にんいこうけんにん)への報酬は、法律で金額が定められているわけではなく、契約を結ぶ際に本人と後見人になる人との間で自由に決めることができます。これは任意後見制度の大きな特徴のひとつです。
報酬の目安は、後見人の属性によって大きく異なります。

  • 家族・親族が後見人になる場合:無報酬〜月額2万円程度。身内であれば無報酬とするケースも多く見られます。
  • NPO法人・社会福祉法人が後見人になる場合:月額2万〜6万円程度
  • 弁護士・司法書士などの専門家が後見人になる場合:月額5万〜10万円程度

報酬額は、後見人が行う業務の内容や財産管理の複雑さによっても変わります。固定報酬に加えて、不動産の処分や保険金の請求など特別な業務が発生した場合に別途報酬を設定する「固定+成功報酬型」の契約を結ぶケースもあります。いずれにせよ、報酬の金額と支払い方法は契約書に明記されるため、事前に十分な話し合いを行うことが大切です。

任意後見監督人の報酬は裁判所が決める

任意後見が開始されると、家庭裁判所によって必ず任意後見監督人が選任されます。これは、後見人が適切に業務を行っているかを中立的な立場でチェックする役割を担う存在です。任意後見監督人の選任は法律上の義務であり、当事者が省略することはできません。
任意後見監督人への報酬は、家庭裁判所が本人の財産額や監督業務の内容などを踏まえて決定します。目安は以下のとおりです。

  • 管理財産額が5,000万円以下の場合:月額1万〜2万円程度
  • 管理財産額が5,000万円超の場合:月額2万5,000円〜3万円程度

この報酬も本人の財産から支払われます。任意後見人の報酬とは別に毎月発生するため、月額費用の合計を見積もる際には必ず加算して考える必要があります。たとえば専門家が後見人の場合、後見人報酬と監督人報酬をあわせると月額6万〜12万円程度になることも珍しくありません。

家族が後見人になる場合と専門家に頼む場合の違い

任意後見人を「家族にするか」「専門家にするか」という選択は、月額費用に大きな差をもたらします。家族が無報酬で引き受けてくれる場合、月額費用は監督人報酬の1万〜2万円程度のみで済むため、費用面では最も負担が軽くなります。
一方で、家族に後見人を依頼することには注意点もあります。財産管理や各種手続きは想像以上に手間がかかるため、後見人となる家族に時間的・精神的な負担が集中することがあります。また、家族間の利害関係が複雑な場合には、後見業務をめぐって意見の違いが生じることも考えられます。
専門家に依頼すれば費用はかかりますが、専門的な知識に基づいた適切な財産管理が期待でき、家族への負担も軽減されます。頼れる家族がいない方や、財産管理を確実に行いたい方にとっては、専門家への依頼が安心につながる選択といえるでしょう。費用と安心感のバランスを踏まえて、どちらが自分の状況に合っているかを考えてみてください。なお、任意後見と家族信託のコスト・特徴の違いについては、任意後見と家族信託はどう違う?特徴と向いているケースを比べてみたもご参考にどうぞ。

費用の総額シミュレーション|10年間でいくらかかる?

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初期費用と月額費用の内訳を個別に見てきましたが、「では実際に総額でいくらになるの?」という点が最も気になるところではないでしょうか。ここでは、後見人を家族にした場合と専門家にした場合の2つのモデルで、10年間の概算費用をシミュレーションしてみます。あくまでも目安ですが、費用感の参考にしていただければと思います。

ケース別の概算モデル(家族・専門家)

以下のシミュレーションは、公正証書作成を専門家に依頼し、後見期間を10年間と仮定した場合の概算です。管理財産額は5,000万円以下を前提としています。

  • 【ケースA】家族が後見人・無報酬の場合

初期費用(公正証書+申立て):約15万〜20万円
月額費用(監督人報酬のみ):月1万5,000円 × 12ヶ月 × 10年 = 約180万円
10年間の総額目安:約195万〜200万円

  • 【ケースB】専門家(司法書士)が後見人の場合

初期費用(公正証書+申立て):約20万〜25万円
月額費用(後見人報酬4万円+監督人報酬1万5,000円):月5万5,000円 × 12ヶ月 × 10年 = 約660万円
10年間の総額目安:約680万〜685万円

このように、後見人を誰にするかによって10年間の総費用に500万円前後の差が生じることがあります。ただし、家族が後見人になる場合でも、業務の複雑さや家族の状況によっては何らかの報酬設定を行うケースもあり、実際の費用はこの試算より変動することがあります。シミュレーションはあくまでも参考値としてご活用ください。

費用を抑えるためのポイント

任意後見の費用を少しでも抑えたいと考える方のために、いくつかのポイントをご紹介します。
まず、公正証書の作成手続きを自分で行うことで、専門家報酬(5万〜15万円)を節約できます。ただし、契約内容の設計は慎重に行う必要があるため、最低限、無料相談などを活用して専門家の意見を聞いてから進めることをおすすめします。
次に、信頼できる家族や親族に後見人を依頼することで、月額の後見人報酬をゼロまたは低額に抑えられます。ただし前述のとおり、家族への負担が大きくなる点は十分に話し合っておくことが大切です。
また、早めに準備を始めることも費用面でプラスに働きます。判断能力があるうちに余裕を持って契約内容を検討できるため、急いで専門家に丸投げするよりも自分でできる部分を増やしやすくなります。老後の備えの一環として、元気なうちから少しずつ準備を進めることが、費用面でも精神面でも安心につながるでしょう。
なお、老後の備えとして身元保証サービスと任意後見を組み合わせて検討される方も増えています。身元保証サービスの費用相場については、身元保証サービスの費用相場と内訳|損しない選び方のポイントもあわせてご覧ください。

まとめ|費用の見通しを持って、安心して準備を進めましょう

この記事では、任意後見にかかる費用を「初期費用」と「月額費用」に分けて解説してきました。改めてポイントを整理します。

  • 費用は契約時の初期費用(公正証書作成・申立て)と後見開始後の継続費用(後見人・監督人報酬)の2段階で発生する
  • 初期費用の目安は、自分で手続きする場合で約2万〜3万円、専門家に依頼する場合で10万〜20万円程度
  • 月額費用は後見人の属性によって大きく異なり、家族が無報酬なら監督人報酬のみ(月1万〜2万円程度)、専門家なら合計で月6万〜12万円程度になることも
  • 10年間の総額は、ケースによって200万〜700万円前後の開きがある
  • 費用はすべて本人の財産から支払われるため、財産状況を踏まえた計画が大切

任意後見は、将来の自分を守るための大切な備えです。費用の全体像を知ることは、「難しそう」という先入観を取り除き、一歩踏み出すきっかけになります。どのような契約内容が自分に合っているか、どなたに後見人を依頼するかなど、考えるべきことは複数ありますが、一人で抱え込む必要はありません。
契約前に確認しておきたいポイントについては、身元保証サービスを契約する前に確認したい7つのチェックポイントも参考になるかもしれません。

老後の備えをトータルで考えるうえで、ぜひご活用ください。
よりねこでは、任意後見をはじめとした老後の備えに関するご相談を承っております。「費用のことをもう少し詳しく知りたい」「自分の場合はどうなるか確認したい」といったご質問でも、お気軽にお問い合わせください。

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