ご家族がお亡くなりになったあと、「実家のお墓の名義はどうなるのだろう」「自分が継ぐことになるのかな」と、ふと不安になる方は少なくありません。お墓の名義変更は、一般的な相続の手続きとは仕組みが異なり、聞き慣れない言葉も多いため、何から手をつければよいのか迷いやすいものです。
この記事では、お墓の名義変更(承継手続き)の基本から、承継者の決め方、手続きの流れ、必要書類、費用の目安までを、公的機関や霊園の案内、法律の条文をもとに順を追ってご説明します。
お墓の名義変更とは?相続の名義変更とは別の仕組み

お墓の名義変更と聞くと、不動産や預貯金の名義変更と同じようなものを想像される方が多いかもしれません。
ところが、お墓は法律上の扱いが通常の財産とは異なり、手続きの窓口も家庭裁判所や法務局ではなく、お墓を管理している霊園や寺院です。ここを取り違えると、必要のない手続きに時間をかけてしまったり、反対に大切な届出が抜けてしまったりすることがあります。
この章では、お墓の名義変更とは何を変える手続きなのかを、永代使用権(えいたいしようけん)という言葉から整理します。あわせて、遺産分割や相続放棄、相続税との関係、手続きが必要になる場面、窓口の違いまでを順にご説明します。最初に全体像をつかんでおくと、後の章で出てくる承継者の決め方や書類の話が理解しやすくなります。
お墓の名義変更で変わるのは、土地の所有ではなく「永代使用権」の名義人
お墓を購入したと聞くと、墓地の土地そのものを買ったように感じるかもしれません。しかし実際に取得しているのは、その区画を墓地として使い続ける権利で、永代使用権と呼ばれます。土地の所有権を取得するものではなく、お墓は不動産のように自由に売ったり譲ったりできるものではないとされています。
この権利を持つ人が、墓地の管理者の帳簿に「使用者(名義人)」として登録されています。お墓の名義変更とは、この帳簿上の使用者を別の方に書き換える手続きのことです。
「永代」という言葉から、一度取得すれば何もしなくてよいように受け取られがちですが、実際には年間の管理費を納め続けることが前提です。お墓は管理料を支払うことで半永久的に使用できるとされ、名義人はその納入の責任を負う立場にあります。
たとえば、親御さんが名義人だった実家のお墓で、毎年の管理費は親御さんの口座から引き落とされていた、というご家庭は少なくありません。名義人が変わるということは、この支払いを含めた「お墓を維持する窓口」が変わるということでもあります。
なお、名義人の呼び方は墓地によって異なり、「使用者」「使用権者」「墓所使用者」などと書かれることがあります。手元の使用許可証や管理費の請求書を見て、どの言葉が使われているかを確認しておくと、管理事務所に問い合わせるときにもお話がスムーズです。
お墓は遺産分割の対象外|相続放棄をしても承継でき、相続税もかからない
お墓の名義変更が、預貯金や不動産の相続手続きと大きく異なる点は、お墓が遺産分割の対象にならないことです。
民法は、相続人が被相続人(お亡くなりになった方)の財産に関する一切の権利義務を引き継ぐと定めています(896条)。ただし897条で、系譜(けいふ=家系図や過去帳)、祭具(さいぐ=位牌や仏壇などの祭祀に使う道具)、墳墓(ふんぼ=墓石や墓碑、墓地の使用権など)は、この原則にかかわらず、祖先の祭祀(さいし)を主宰すべき者が承継すると定められています。この三つをまとめて祭祀財産(さいしざいさん)と呼びます。
そのため、お墓は相続人みんなで分け合う財産にはなりません。祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)になった方の相続分が増えることもない、という判断が、東京高等裁判所の昭和28年9月4日の決定で示されています。
また、弁護士の解説では、相続放棄をした方でも、被相続人の指定や慣習によって祭祀を主宰する立場とされれば、祭祀財産を承継できるとされています。「相続放棄をしたから、お墓の管理からも離れられる」とは限らない点は、知っておくと安心です。
税金の面でも、お墓は特別な扱いです。相続税法では、墓所や霊びょう、祭具などは相続税の課税対象にならない非課税財産とされています。したがって、お墓を承継して名義変更をしても、お墓そのものに相続税がかかることはありません。
一方で、預貯金や不動産の相続には、相続放棄の3か月や相続税申告の10か月といった期限が関わってきます。こうした期限の考え方は「相続手続きを放置するとどうなる?3か月・10か月・3年の期限と対処法」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
お墓の名義変更が必要になる場面(名義人がお亡くなりになったとき・生前承継・氏名や住所の変更)
お墓の名義変更が必要になる場面は、大きく三つに分けられます。
一つ目は、名義人がお亡くなりになったときです。最も多いケースで、霊園や自治体の案内でも、名義人がお亡くなりになった場合は速やかに承継の手続きをするよう求められています。東京霊園の案内では、ご逝去の場合は承継手続きが完了してからのご納骨となる旨も示されています。
二つ目は、名義人が元気なうちに承継する生前承継です。東京霊園では、名義人が高齢などの理由で生前の承継を希望される場合も、所定の手続きで承継申請ができるとされています。ただし、お墓は売買や譲渡ができないものであるため、生前の承継そのものを認めていない墓地も少なくありません。認められる場合も、名義人の高齢化や後見の開始、結婚・離縁による氏の変更など、事情が限られている例が見られます。
三つ目は、名義人の氏名・住所・本籍が変わったときです。船橋市営霊園の案内では、転居や婚姻、離縁などで使用許可証の記載事項が変わる場合、速やかに変更の申請を出すよう求められています。
ここで押さえておきたいのは、同じ「名義変更」という言葉でも、使用者が別の方に替わる「承継」と、同じ方の氏名や住所を更新する「記載事項の変更」とでは、必要な書類が異なるという点です。手続きの名称と届出書の種類を、管理者に確認してから進めると安心です。
窓口は墓地の管理者|公営霊園・民営霊園・寺院墓地で異なる進め方
お墓の名義変更の窓口は、そのお墓を管理している墓地管理者です。管理者は墓地の種類によって異なり、進め方にも違いがあります。
公営霊園は、都道府県や市区町村が運営しています。東京都立霊園の場合は、各霊園の窓口か東京都公園協会の霊園課で手続きができ、問い合わせの際には使用者名と使用者番号を伝えるよう案内されています。公営霊園では、承継できる範囲や必要書類が条例や規則で定められているため、書類の確認が厳格になる傾向があります。
民営霊園は、宗教法人や公益法人などが運営しており、承継の条件や手数料は各霊園の規約で決まっています。寺院墓地は、寺院の境内にあるお墓で、窓口はお寺になります。寺院によっては、名義変更の手数料に代えてお布施をお願いされることがあり、檀家(だんか)としてのお付き合いも関わってくるため、事前にご住職へ相談しておくと安心です。
管理者がわからないときは、使用許可証の発行元をご確認ください。手元にない場合でも、直近の管理費の領収書や口座振替の通知書から管理者がわかることがあります。都立霊園でも、使用許可証を紛失した場合は、これらの書類で代えられるとされています。
なお、名義変更届の書式は墓地ごとに異なります。以前ご家族が使った様式や他の霊園の書式を使い回さず、管理者から新しく取り寄せると、二度手間を防げます。
お墓を継ぐのは誰?名義変更できる人の範囲と決め方

お墓の名義変更では、書類を集める前に「誰が承継者になるのか」を決めておく必要があります。一般には長男や配偶者が継ぐものというイメージがありますが、法律はそのように限定していません。一方で、実際に手続きをするのは霊園や寺院であり、その規約に沿った承継者でなければ、名義変更が認められないこともあります。
つまり承継者の決め方は、法律のルールと、墓地ごとの規約という二段構えで考えることになります。この章では、民法897条が定める決め方、相続人や親族でない方が承継できるのか、規約で範囲が限られる場合の考え方、遺言で指定するときの注意点、承継者が決まっていないときの書類まで、順を追ってご説明します。事情によって当てはまる内容が変わりますので、ご自身に近い項目からお読みいただいても大丈夫です。
法律上の決め方は「指定→慣習→家庭裁判所」の順(民法897条)
民法897条は、お墓の承継者の決め方を三段階で示しています。
まず最優先されるのが、被相続人(名義人)による指定です。遺言書で指定する方法が確実ですが、生前に口頭で指名していた場合も指定として扱われるとされています。ただ、口頭では後から「聞いていない」という意見の違いが生じやすいため、書面に残しておくほうが安心です。
指定がない場合は、次に慣習に従います。地域や家によっては長男が継ぐ、その家のお墓を守ってきた方が継ぐ、といった慣習があり、実際にはご家族の話し合いで決まることが多いようです。
慣習が明らかでない場合や、話し合いがまとまらない場合は、最後に家庭裁判所が承継者を定めます。調停や審判の場で、ご本人の意思、名義人との関係の深さ、祭祀を続けていける状況などが考慮されるとされています。
ここで大切なのは、承継者は原則として一人という点です。相続のように、複数の相続人で持分を分け合う形にはなりません。また、承継者は相続人である必要も、名義人と同じ氏である必要もないと解されています。
「兄弟で半分ずつ」という形にはならないため、誰が中心になってお墓を守るのかを、あらかじめご家族で共有しておくとスムーズです。
相続人でなくても、姓が違っても承継できる|甥・姪、内縁のパートナー、友人は?
承継者になれる人の範囲は、法律上は広く考えられています。相続人でなくても、名義人と姓が違っていても構いません。たとえば、結婚して姓が変わった娘さんが実家のお墓を継ぐことも、養子として迎えた方が継ぐことも可能とされています。
では、甥・姪、内縁のパートナー、友人といった方はどうでしょうか。
法律上は、これらの方を承継者に指定することもできます。行政書士法人の解説では、同性パートナーや事実婚のパートナーは法定相続人(法律で定められた相続の対象者)にはなれないものの、祭祀承継者には自由に指定できるとされています。生前に深い付き合いのあった縁故者が承継できるとする石材店の解説もあります。
たとえば、長年連れ添った内縁のパートナーにお墓を託したい場合、遺言書で祭祀承継者として指定しておく方法があります。内縁のパートナーへの財産の遺し方全般については「事実婚・内縁のパートナーに財産を遺すには?相続権がない場合の備え方」で解説しています。
ただし、法律上はできても、実際の名義変更は墓地の規約に左右されます。次の項目でくわしくご説明するとおり、血縁者や親族に限る霊園もあるため、指定をする前に管理者へ確認しておくことが欠かせません。
法律上は問題なくても、霊園の規約で「親族のみ」と限られることがある
お墓の承継者を決めるうえで見落としやすいのが、霊園ごとの規約です。民法は承継者を限定していませんが、墓地の管理者は、条例や規約で承継できる範囲を独自に定めています。
たとえば、霊園によっては「承継者は三親等以内の親族とする」と定めています。三親等とは、親や子が一親等、祖父母や孫、兄弟姉妹が二親等、そして甥・姪、叔父・叔母、ひ孫などが三親等にあたります。ここに、内縁のパートナーや友人、親族関係にない方は含まれません。
東京都立霊園でも、承継する方には条件があり、祭祀を主宰する方であることに加えて、原則として使用者の親族であることが求められるとされています。公営霊園は公共性が高いため、承継者の範囲や必要書類が条例や規則にもとづいて厳密に運用される傾向があります。
また、寺院墓地の場合は、承継者がそのお寺の檀家となることが前提になるケースもあります。民営霊園では、宗旨・宗派を問わない代わりに、承継者の範囲を規約で定めている例が見られます。
このように「法律上は問題なくても規約では認められない」というずれが起こりうるため、承継者を決める前に、管理者に規約を見せてもらうと安心です。親族以外の方を考えている場合は、早めの確認が大きな助けになります。
遺言で指定したのに名義変更が認められないケースと、事前の確認方法
遺言書で承継者を指定しても、名義変更が認められないケースがあります。お墓のポータルサイト「みんなのお墓」の解説によると、遺言書や理由書で承継者が指名されていても、その方が墓地の規約で承継を認められていない立場であれば、許可が下りないことがあるとされています。
たとえば、遺言書で「友人に承継させる」と書いたとしても、その霊園が親族以外の承継を認めていなければ、名義変更の申請が受け付けられない可能性があります。せっかくの意思が実現しないだけでなく、残されたご家族が困る事態にもなりかねません。
そうならないために、遺言書や理由書を書く前に、管理者へ次の点を確認しておくと安心です。
- 承継者になれる人の範囲(親族に限るか、三親等以内かなど)
- 承継者の居住地に条件があるか
- 名義変更に必要な書類と手数料
- 承継後に必要になる年間管理費の金額と支払い方法
あわせて、遺言書を作る場合は、承継者の氏名・生年月日・名義人との関係・お墓の所在地や区画番号を、第三者が見てもわかる形で書いておくと、手続きがスムーズです。承継者となる方ご本人の同意を、生前に得ておくことも大切です。
承継者が決まっていないときの、承諾書・同意書・協議の証明書
遺言などで承継者が指定されていない場合は、ご家族の話し合いで決めるのが一般的です。
この場合、墓地の管理者から、親族間で承継について合意ができていることを示す書類を求められることがあります。東京都立霊園でも、承継の内容によっては同意書などが必要になることがあると案内されています。
また、名義人の子どもや配偶者など、承継の順位が上位の方がほかにいるのに、下位の方が承継する場合は、上位の方の「承諾書」が求められることがあります。上位の方が承諾書を出せないときは、「申立書」を提出する形になるとされ、書式は霊園から受け取ることになります。
たとえば、長男が遠方で疎遠になっているなか、近くに住む次女が承継したい場合、長男の承諾書が必要になるかもしれません。書式や必要な範囲は霊園ごとに違うため、事前の相談が助けになります。
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てて承継者を決める方法があります。調停は当事者の話し合いを裁判所の場で進める手続きで、それでも合意に至らなければ、審判で承継者が定められます。
意見の違いが大きくなる前に、早い段階でご親族に意向を共有し、書面を残しておくことが、名義変更をスムーズに進める近道になります。
お墓の名義変更の流れ|納骨や法要の日程から逆算して進める

承継者が決まったら、いよいよ名義変更の手続きです。
全体の流れ自体はシンプルですが、進める順番と日程の組み立て方を誤ると、納骨の予定に間に合わなかったり、管理費の引き落としが止まったりすることがあります。
この章では、墓地管理者への連絡から新しい使用許可証の受け取りまでを、順を追ってご説明します。また、一般的な手順に加えて、四十九日などの法要や納骨の予定から逆算して進める考え方と、名義変更後に忘れやすい管理費の支払い口座の変更についても触れます。流れ全体を先に頭に入れておくと、必要書類の準備や日程の調整がしやすくなり、ご家族との役割分担もお願いしやすくなります。
まず墓地管理者に連絡し、規約と必要書類を確認する
お墓の名義変更の最初の一歩は、墓地の管理者への連絡です。霊園の管理事務所、寺院、自治体の担当窓口など、使用許可証に記載されている管理者に、名義人がお亡くなりになったことと、承継者となる方が誰かを伝えます。この最初の連絡が、手続きのスタートになります。
ここで焦って書類を集め始める必要はありません。まずは管理者に、その墓地の規約と、必要書類の一覧、名義変更届の様式を確認することが先です。書式や必要書類は墓地ごとに異なり、以前の名義変更で使った書類が使えるとは限らないためです。
電話やメールで問い合わせる際は、次のような点をあわせて聞いておくと、二度手間を防げます。
受付窓口の日時(平日のみか、予約が必要か)、郵送での手続きが可能か、書類の有効期限(発行から何か月以内か)、手数料の金額と支払い方法、審査から許可証の交付までにかかるおおよその期間などです。
なお、都立霊園では使用者名と使用者番号を伝えるよう案内されています。使用許可証や管理費の領収書に番号が載っていることが多いため、連絡の前に手元に用意しておくと話が早く進みます。
承継者を決めて、親族の同意を整える
管理者への確認と並行して、承継者を正式に決め、ご親族の理解を整えます。承継者は原則一人で、その方が名義人(使用者)としてお墓を維持していく立場になります。
承継者が決まっているようでも、書類の準備の段階で「実は他のご兄弟が納得していない」ということが起こる場合があります。前の章でご紹介した承諾書や同意書が必要な墓地では、事前の合意がなおさら大切になります。
承継者になる方には、名義変更の書類を整える作業に加えて、年間管理費の支払い、お墓の清掃や法要の手配など、日常の維持管理がついてきます。名義変更のお話をする際は、こうした責任の内容と管理費の目安もあわせて伝えておくと、承継者の方も判断しやすく、後々の意見の違いを防ぐことにもつながります。
また、承継者ご本人の実印が必要になる墓地が多いため、印鑑登録がお済みかどうかも、この段階で確認しておくと安心です。
書類の提出・手数料の納付・新しい使用許可証の受け取り
書類が整ったら、管理者に提出して手数料を納めます。持参する場合と郵送する場合があり、東京霊園では、郵送(書留)で手続きをする場合の手数料は郵便為替で納めるよう案内されています。
事務手数料は、数百円から数千円程度に設定している墓地が一般的とされ、公営霊園では無料から千円台の例もあります。金額の目安は「お墓の名義変更にかかる費用」の章で詳しくご説明します。
審査が済むと、新しい使用許可証(永代使用許可証や墓所使用承諾証などの名称の場合もあります)が交付されます。この書類は、納骨や改葬(かいそう=お墓の引っ越し)、墓石の工事などの際に必要になる、お墓の使用権を示す大切な証書です。横手市の手引きでも、使用許可証は使用権を示す唯一の証書であり、他人に預けたり貸したりせず、使用者が大切に保管するよう案内されています。
受け取ったあとは、保管場所をご家族にも共有しておくと、次の代の手続きや万一のときに慌てずに済みます。
納骨は名義変更の完了後になる霊園も|四十九日に間に合わせる逆算のしかた
名義変更の日程を考えるうえで、見落としやすいのが納骨との関係です。東京霊園の案内では、名義人がお亡くなりになった場合は、承継手続きが完了してからのご納骨となるとされています。
つまり、四十九日法要に合わせて納骨を予定していても、名義変更が済んでいなければ、納骨式が予定どおりにできない可能性があります。
納骨の時期に法的な決まりはなく、四十九日、百か日、一周忌などの法要に合わせて行うのが慣習とされています。お墓がすでにある場合は、四十九日に合わせて納骨式を行う方が多いようです。
そこで、納骨の日を先に決めるのではなく、名義変更にかかる時間から逆算して日程を組むと安心です。たとえば、四十九日に納骨したい場合は、ご逝去後に早めに管理者へ連絡し、戸籍謄本などの書類の取得に必要な日数を見込んだうえで、申請の受付日と交付までの期間を確認します。
戸籍謄本は、名義人やご自身の本籍地が遠方にあると、郵送での取得に日数がかかることもあります。書類の有効期限が「発行から3か月以内」などと決まっている墓地もあるため、早く取りすぎても使えなくなる場合があります。
また、納骨式では、火葬後に受け取る埋葬許可証(火葬許可証に火葬済みの証印が押されたもの)の提出も求められますので、遺骨と一緒に保管しておきましょう。間に合いそうにない場合は、四十九日にこだわらず、百か日や一周忌に納骨を合わせることも、無理のない選択肢です。菩提寺(ぼだいじ)がある場合は、日程についてご住職にも早めにご相談ください。
最後に忘れやすい、管理費の支払い口座の変更
名義変更の手続きが終わったあとに、最も見落とされやすいのが、管理費の支払い方法の変更です。
管理費を名義人の口座からの引き落としにしているケースは多く、名義人がお亡くなりになって金融機関がそれを把握すると、口座が凍結されて引き落としが止まることがあります。お墓くらべの解説でも、口座凍結による管理費の停止は、悪気なく起こる典型的な落とし穴として紹介されています。名義変更の手続きを済ませても、支払い口座の変更を忘れると、管理費だけが滞り続けるおそれがあります。
口座の凍結そのものの仕組みや、解除の手順については「おひとり様が亡くなると銀行口座は凍結される?解除方法をわかりやすく解説」でくわしくご紹介しています。
名義変更の際は、管理者に「支払い方法も変更したい」と伝えると、引き落とし口座の変更や、振込用紙による支払いへの切り替えを案内してもらえます。
あわせて確認したいのが、請求書などの送付先です。横手市の手引きでは、転居などの届出がないと支払い用紙が手元に届かなくなり、長期の滞納によって使用許可の取り消しにつながる可能性があると案内されています。
承継者の住所と連絡先も、名義変更のときにあわせて届け出ておきましょう。
名義変更に必要な書類の集め方|お墓の管理者ごとの違い

お墓の名義変更では、書類の不備が手続きを長引かせる大きな原因になります。
一度提出したあとに足りない書類が見つかって再提出になると、二度手間、三度手間になり、納骨の日程にも影響しかねません。
お墓の名義変更に必要な書類は大まかには共通していますが、墓地によって名称や様式、有効期限が異なります。東京都立霊園のように条件が明文化されている公営霊園もあれば、寺院や民営霊園のように個別に案内される場合もあります。この章では、多くの墓地で共通して求められる書類を、東京都立霊園などの案内を例にご紹介し、準備で迷いやすい点を整理します。ご自身のお墓の管理者の案内が最優先ですので、この章は「何を確認すればよいかの目安」としてお読みください。
名義変更届(承継使用申請書)は、その墓地の様式を取り寄せる
名義変更の中心になる書類が、名義変更届です。墓地によって「墓所承継使用申請書」「承継使用申請書」「変更届出書」など名称が異なり、書式も墓地ごとに定められています。
用紙は墓地の管理者が用意しており、管理事務所の窓口でもらう場合や、ホームページからダウンロードする場合があります。以前に別の手続きで受け取った用紙があっても、様式が改訂されている可能性があるため、最新のものを取り寄せるほうが確実です。
この届出書には、承継者の実印の押印を求める墓地が多いとされています。東京都立霊園の案内でも、承継使用申請書と誓約書には申請者の実印を押すことになっており、これらは窓口で記入します。一方で、実印ではなく認印でよいとする墓地もあり、その場合は印鑑登録証明書は不要とされます。
実印が必要かどうかをあらかじめ管理者に確認しておくと、印鑑登録証明書を取得する手間を省けたり、反対に書類が不足したりする事態を防げます。
また、届出書とあわせて誓約書の提出を求める墓地もあります。内容は墓地ごとに異なりますが、規約を守ることなどを承継者が約束する書類とされています。お墓を維持していくうえでの大切な取り決めですので、提出する前に規約もあわせて読んでおくと安心です。
使用許可証(墓所使用承諾証)と、紛失したときの再発行
次に必要になるのが、永代使用許可証(墓所使用承諾証、使用許可証などの名称もあります)です。お墓の使用権を取得した契約時に、霊園などから名義人へ発行された書類で、お墓の使用権を示す大切な証書です。
名義変更の際にはこの書類の提出を求められるのが一般的で、東京都立霊園の案内でも、承継の申請書類の一つに使用許可証が挙げられています。
実家のお墓の場合、名義人だった親御さんが自宅のどこかに保管していて、探すのに苦労するケースもあります。仏壇の引き出しや、書類をまとめた箱、貴重品入れなど、お墓の購入時の資料と一緒に保管されている場合があります。
見つからない場合でも、あきらめる必要はありません。東京都立霊園では、使用許可証を紛失した場合は、直近の霊園管理料の領収書や、口座振替をしている場合は口座振替通知書で代えられるとされています。東京霊園では、「墓所使用承諾証紛失届・再発行願」を提出する手続きが用意されています。
紛失時の対応は墓地によって異なるため、まず管理者に「使用許可証が見つからない」と伝えて、代わりの書類や再発行の方法を教えてもらってください。再発行に手数料がかかる場合もありますが、これについては費用の章でご説明します。
戸籍謄本・印鑑証明書・住民票|取得先と有効期限の落とし穴
承継者が誰で、名義人とどのような関係にあるのかを証明するために、戸籍謄本が求められます。東京都立霊園の共通書類を例にすると、次のとおりです。
- 申請者(承継者)の実印と印鑑登録証明書(申請日において発行から3か月以内のもの)
- 申請者の戸籍謄本(申請日において発行から6か月以内のもの)
- 使用者(名義人)と申請者の戸籍上のつながりが確認できる戸籍謄本など
- 東京都霊園使用許可証(紛失の場合は直近の管理料の領収書や口座振替通知書)
- 承継使用申請書および誓約書(窓口で記入)
ここで注意したいのは、書類の有効期限です。都立霊園では印鑑登録証明書が発行から3か月以内、戸籍謄本が6か月以内とされており、東京霊園でも印鑑証明書は発行後3か月以内と案内されています。
墓地によっては、戸籍謄本も3か月以内を求める例があります。名義人がお亡くなりになった場合は、ご逝去の日付が記載された戸籍が必要になる墓地もあります。このほか、住所を確認するために、住民票の提出を求められることもあります。
取得先は、戸籍謄本が本籍地の市区町村、印鑑登録証明書と住民票がお住まいの市区町村です。本籍地が遠方の場合は、郵送で請求すると日数がかかります。令和6年3月1日からは、戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書を請求できるようになりました。
ただし、請求できるのは本人、配偶者、父母や祖父母(直系尊属)、子や孫(直系卑属)の戸籍に限られ、郵送や代理人による請求はできません。コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍も対象外とされています(法務省)。
兄弟姉妹の戸籍が必要な場合などは、従来どおり本籍地への請求が必要です。
続柄や事情で増える書類|古い名義人の戸籍をさかのぼるとき
基本の書類に加えて、承継の事情によって追加の書類が求められることがあります。
まず、承継者と名義人との続柄によって、提出する戸籍謄本の範囲が変わります。船橋市営霊園の案内でも、提出する戸籍謄本は承継者との続柄により異なるとされています。たとえば、名義人の子が承継する場合と、孫や甥・姪が承継する場合とでは、つながりを示すために必要な戸籍の範囲が変わります。
名義人が古い代のままになっているお墓では、戸籍を何代もさかのぼることになるため、集める書類の量が大きく増えます。この場合の進め方は、後の「状況別」の章でご説明します。
次に、遺言書や理由書です。
名義人が承継者を指定している場合は、その内容がわかる遺言書などを持参すると、管理者が確認してくれるとされています。ただし、前の章でご説明したとおり、遺言書に指名されていても、墓地の規約で承継を認められていない立場の方であれば、許可が下りないことがあります。
そして、承諾書・同意書・申立書です。承継の順位が上位の方がほかにいる場合の承諾書、上位の方が承諾書を出せない場合の申立書、東京都立霊園で場合によって必要となる同意書などが該当します。書式は墓地から受け取ることになります。
どの書類が必要になるかは、承継者を決めた経緯によって変わります。最初に管理者へ連絡するときに、「誰が承継者になる予定か」「名義人との関係」「指定や話し合いの状況」を伝えて必要書類の一覧を出してもらうと、集め漏れを防げます。
お墓の名義変更にかかる費用の目安と、見落としやすい実費

お墓の名義変更にかかる費用は、名義変更そのものの手数料に加えて、戸籍謄本などの取得費、場合によってはお布施など、いくつかの費用が組み合わさります。金額は墓地の種類によって大きく異なり、無料に近い公営霊園もあれば、1万円を超える手数料を設定している霊園もあります。
お墓そのものには相続税がかからないため、大きな金額を用意しなければならない手続きではありません。一方で、寺院墓地でのお布施や、書類の再発行、専門家への依頼が重なると、想定より費用が増える場合もあります。この章では、費用の項目ごとに、公表されている目安と確認しておきたい点をご説明します。なお、金額は変更されることがあるため、最終的には管理者の案内で確認してください。
名義変更手数料の目安|公営霊園と民営霊園・寺院墓地の違い
名義変更(承継)の事務手数料は、数百円から数千円程度に設定している墓地が一般的とされています。公営霊園では、無料から千円台の例も見られます。
これに対して、民営霊園では手数料が1万円を超える例もあります。たとえば東京霊園の案内では、氏名の変更手数料が11,000円(消費税込)と示されています。同じ「名義変更」でも墓地によって差が大きく、手続きの種類(承継か、氏名変更か)によっても金額が変わります。
手数料の納め方も墓地ごとに異なります。窓口で現金で支払う場合のほか、郵送の場合は郵便為替を求める墓地もあります。管理者に問い合わせる際に、金額と支払い方法をあわせて聞いておくと、当日の手続きがスムーズです。
また、名義変更の手数料とは別に、承継後の年間管理費が引き続き必要になります。管理費は名義変更で新たに発生するものではなく、これまでの名義人が支払っていたものを、承継者が引き継ぐ形になります。
寺院墓地ではお布施や挨拶が必要になることもある
寺院墓地の場合は、名義変更の手数料という形ではなく、お布施をお願いされることがあります。石材店の解説でも、寺院によっては名義変更手数料の代わりにお布施が必要になるとされています。
お布施は、お礼の気持ちとしてお渡しするもので、金額が一律に決まっているわけではありません。地域や寺院、これまでのお付き合いの深さによっても異なります。
金額に迷う場合は、ご住職に直接うかがうか、お寺との付き合いに詳しい年長のご親族に相談するとよいと言われています。「相場がわからないので、失礼のないようにお包みしたい」と率直に伝えて相談してみるのも、一つの方法です。
また、名義変更のご挨拶を兼ねて、承継者となる方がお寺に伺い、今後の管理や法要についてご相談しておくと、檀家としての関係を円滑に引き継ぎやすくなります。
戸籍などの取得費と、専門家に頼んだ場合の費用
名義変更の手続きでは、手数料以外に、書類の取得にかかる実費が必要です。
戸籍謄本は1通450円、除籍謄本や改製原戸籍謄本は1通750円が、全国的な標準の手数料とされています(自治体によって異なる場合があります)。印鑑登録証明書や住民票の手数料は自治体によって異なり、数百円程度です。名義人と承継者のつながりを確認するために複数の戸籍が必要になると、通数が増え、合計で数千円になることもあります。
郵送で請求する場合は、手数料を定額小為替(郵便局で購入できる為替証書)で納めるのが一般的で、為替の購入手数料や返信用の切手代もかかります。遠方の役所に何度も請求すると、費用も日数も重なります。必要な戸籍の範囲を事前に管理者へ確認してから、まとめて請求すると、無駄が出にくくなります。
行政書士などの専門家に、名義変更の書類作成や戸籍の収集を依頼する方法もあります。この場合の費用は事務所ごとに異なるため、依頼する前に、対応範囲と金額を見積もりで確認してください。
戸籍を何代もさかのぼる場合や、平日に役所へ行く時間がとれない場合に、選択肢の一つになります。
使用許可証を再発行するときの手数料
使用許可証を紛失していた場合は、再発行の手数料がかかることがあります。東京霊園の案内では、墓所使用承諾証の再発行手数料が11,000円(消費税込)とされています。
一方で、東京都立霊園のように、使用許可証を紛失した場合に、直近の管理料の領収書や口座振替通知書で代えられる墓地もあります。紛失時の対応と費用は、墓地によって大きく異なります。
再発行の手続きには、紛失届や再発行願の提出が求められることがあり、承継の書類とは別に時間がかかる場合もあります。納骨や法要の予定が決まっているときは、早めに管理者へ連絡しておくと安心です。
再発行した許可証は、承継者のお手元で保管し、保管場所をご家族に伝えておくことで、次の代の手続きの負担を減らせます。
ここまでの費用をまとめると、名義変更そのものは、手数料と書類の実費を合わせて、数千円から、墓地によっては1万円台という規模になる場合があります。寺院墓地ではお布施、使用許可証を紛失した場合は再発行手数料が加わる可能性があります。承継後の管理費を含めた総額は、管理者に事前に確認しておくと、資金の準備もしやすくなります。
【トラブルの元】名義変更をしないままのお墓はどうなる?放置で起きやすい困りごと

お墓の名義変更には、相続税の申告のような法律上の期限が設けられているわけではないとされています。そのため、「落ち着いてから」と後回しにされ、名義がそのままになっているお墓もあります。
ですが、名義人がお亡くなりになったまま名義が変わっていないお墓は、管理費の請求先が不明になったり、使用権の取り消しの対象になったりする可能性があります。総務省の調査では、公営墓地・納骨堂で無縁墳墓(むえんふんぼ)が発生している市町村が、回答のあった765市町村のうち445市町村にのぼるとされています。この章では、名義変更を放置した場合に起こりうる困りごとを、管理費、使用権、納骨や墓じまい、次の代への影響の順にご説明します。気づいた時点で管理者に連絡することが、解決の第一歩になります。
管理費の請求が旧名義人宛てのままになり、滞納につながる
名義変更をしないままにしておくと、まず影響が出やすいのが管理費です。管理者からの請求は、名義人として登録されている方の宛先に届き続けます。名義人がお亡くなりになっていれば、その請求書を受け取る人がいないか、受け取った人が「自分は承継していない」と手続きをしないまま、滞納が続くことになりかねません。
お墓くらべの解説では、管理費の請求が旧名義人宛てのままとなり、滞納扱いから使用権の取り消しへ進むおそれがあるとされています。
また、石材店の解説では、名義変更をしないと、霊園や墓地の管理者は承継者に管理費を請求できず、管理費の滞納が続いてお墓が撤去される可能性が高まるとされています。
管理費が引き落としだった場合は、名義人の口座が凍結されて引き落としが止まり、気づかないうちに滞納になることもあります。前の章で触れた支払い口座の変更は、名義変更とセットで行うことが大切です。
お墓の名義変更に法律上の期限は定められていないとされていますが、東京霊園や横手市の案内のように、規約や手引きで「速やかに」承継の手続きを求めている墓地は多く見られます。期限がないからと後回しにせず、名義人がお亡くなりになったら、早めに管理者へ連絡しておくと安心です。
使用権の取り消しや、無縁墓として扱われる可能性
管理費の滞納が長期になり、承継者や縁故者(つながりのある方)と連絡がとれない状態が続くと、お墓は無縁墓(無縁墳墓)として扱われる可能性があります。無縁墳墓とは、墓地、埋葬等に関する法律の施行規則で、お亡くなりになった方の縁故者がいない墳墓などを指します。
総務省が令和5年に公表した公営墓地の調査では、縁故者がいないと判断する目安として、管理料の滞納が3年程度、あるいは10年程度続き、戸籍の調査などをしても縁故者が見つからない場合とする自治体の例が紹介されています。判断の基準は、自治体によって一律ではありません。
無縁墳墓として整理する際は、施行規則により、官報への掲載と、墳墓の見やすい場所に立てた立札への1年間の掲示によって、縁故者などに申し出るよう公告する手続きが求められています。申し出がなければ、遺骨は改葬され、墓石は撤去され、区画は整理される流れになるとされています。
また、公営墓地では、使用許可の取り消しについて、聴聞(ちょうもん=意見を述べる機会)などの手続きを整備している自治体もあると、厚生労働省の研究報告書で紹介されています。
総務省の調査では、あらかじめ縁故者の連絡先を把握していたことで、所在確認が速やかに進んだ例も報告されています。名義変更の際に、承継者の連絡先を管理者へ確実に届けておくことは、お墓を守るうえでも役立つ備えになります。
納骨や墓じまいの手続きが進められなくなる
名義変更が済んでいないことで、次の手続きが止まってしまう場面もあります。
ひとつは納骨です。東京霊園の案内では、名義人がお亡くなりになった場合、承継手続きが完了してからのご納骨となります。たとえば、ご家族がお亡くなりになり、お墓に納骨したいと考えても、名義が旧名義人のままだと、納骨を受け付けてもらえない可能性があります。
もうひとつは、墓じまい(お墓を撤去して更地に戻す手続き)や改葬です。墓じまいの手続きを扱う事業者の解説では、公営墓地では名義管理が厳格で、現在の正当な承継者へ使用承継の手続きをしてからでないと、改葬や返還が進められないケースがほとんどだとされています。
「お墓を継ぐ人がいないから、墓じまいをしたい」と思っても、その前提として名義の整理が必要になる場合があるのです。
改葬の許可申請では、墓地の管理者から、遺骨が埋葬されている事実の証明を受ける手続きがあります。こうした場面でも、現在の名義人が誰かが確認されるため、名義が整っていると話が早く進みます。
このように、名義変更は、納骨・供養・墓じまいなど、お墓に関するさまざまな手続きの土台になります。
代を重ねるほど書類が複雑になり、時間と手間が増える
名義変更を後回しにするほど、次に手続きをする方の負担は大きくなります。
お墓くらべの解説では、名義変更をしないままだと、次の承継時に相続関係の書類が複雑になると指摘されています。名義人がお亡くなりになってから何年も経つと、当時の承継者の候補だった方もお亡くなりになり、その方のご家族が承継を希望する、といった形で、戸籍上のつながりを説明する書類が世代を重ねて増えていきます。
名義が古いまま承継のたびに戸籍をさかのぼることになると、集める書類の量も、確認にかかる時間も大きくなります。具体的な直し方は、後の「名義が何十年も前の代のままになっている」でご説明します。
さらに、承継者の候補となる方は、世代を重ねるにつれて増え、意見の違いが生じやすくなります。名義人がお亡くなりになった直後であれば、話し合いの相手も少なく、当時の状況を覚えている方も多いため、合意が得られやすいと考えられます。
気づいたときに動くことが、ご自身とご家族、そして次の世代の負担を軽くします。
状況別|こんなときのお墓の名義変更はどうする?

ここまでは、一般的な名義変更の流れをご説明しました。ただ、実際には「名義人がまだご存命」「名義が古いまま」「承継者が遠方にいる」など、状況はご家庭ごとに異なります。
この章では、よくある五つの状況について、公的機関や墓地の案内をもとに、どう考えて進めればよいかをまとめます。ご自身に当てはまる項目からお読みください。当てはまる項目がなくても、名義変更の考え方を広く知っておくと、いざというときに慌てずに済みます。また、名義変更が難しいときの選択肢についても、最後にご紹介します。
名義人が元気なうちに名義変更したい(生前承継・次の承継者の届出)
名義人がご存命のうちに、お墓の名義を承継者へ移せるのかというご相談があります。ご自身の体力に不安を感じてきた、承継者をはっきりさせておきたい、といった理由です。
東京霊園では、名義人が高齢などの理由で生前の承継を希望される場合にも、所定の手続きで承継申請ができるとされています。ただし、お墓は売買や譲渡ができないため、生前の承継を認めていない墓地も少なくありません。認めている墓地でも、名義人の高齢化や後見の開始、結婚や離縁による氏の変更など、理由が限られていることがあります。
生前承継が認められない場合でも、次の代のために準備できることがあります。東本願寺の東山浄苑では、納骨仏壇の名義人(願人)が存命中に、次期祭祀承継者を指定する「願人補(がんにんほ)」という制度を設けており、名義人がお亡くなりになってからの名義変更は大変煩雑になると案内しています。このように、存命中に次の承継者を届け出られる墓地や納骨堂もあります。
お持ちのお墓で同様の制度があるかどうか、管理者に確認してみる価値があります。
また、承継者となる予定の方には、あらかじめお墓の場所や管理者、管理費の金額、使用許可証の保管場所をお伝えしておくことも大切です。書面で承継者を指定しておき、名義人がお亡くなりになったあとに、すぐ連絡がとれる状態にしておくと、名義変更の負担が軽くなります。
名義が何十年も前の代のままになっている
実家のお墓を確認してみたら、名義が祖父母や曾祖父母の代のままだった、というご相談があります。公営墓地では名義の管理が厳格で、現在の正当な承継者へ使用承継の手続きをしてからでないと、改葬や返還が進められないケースがほとんどだと、墓じまいの手続きを扱う事業者の解説で紹介されています。
同じ解説では、3代前の名義人まで遡って手続きを進めることになった実例が示されており、戸籍を遡って親族関係を証明する必要があったとされています。
このようなときは、次のような順で整理していくと進めやすくなります。
- 使用許可証や管理費の請求書、領収書から、管理者と現在登録されている名義人を確認する
- 管理者に、名義人の記録と、必要な戸籍の範囲を問い合わせる
- 名義人から現在の承継者までのつながりがわかる戸籍謄本・除籍謄本などを順に集める
- 承継者を決めて、親族の同意書や承諾書を整える
各代の承継を順に行うのか、現在の承継者への承継として一度にまとめて受け付けてもらえるのかは、墓地によって扱いが異なる可能性があります。この点は、最初に管理者へ相談してください。
戸籍を遡る場合、古い除籍謄本や改製原戸籍は、コンピュータ化されていないものがあり、先ほどご紹介した広域交付では請求できないことがあります。
この場合は本籍地の市区町村へ郵送などで請求することになり、日数を見込んでおく必要があります。戸籍の収集や申請書類の作成が負担に感じるときは、行政書士などの専門家に依頼する方法もあります。
承継者が遠方に住んでいる|居住地の条件や代理人の届出が必要な墓地も
承継者になる方が、お墓から遠く離れた場所にお住まいのケースもあります。実家のお墓を任される方が、進学や就職で他県に出て暮らしている、という状況です。
このとき気をつけたいのが、墓地によっては、承継者の居住地に条件が設けられていることです。苫小牧市の市営墓地の案内では、市外にお住まいの方が新しい名義人になる場合に、市内にお住まいの親族を代理人に選ぶ手続きが示されています。公営墓地では、管理や連絡のしやすさなどを踏まえて、こうした条件が置かれていると考えられます。
遠方でも手続きを進めやすくする方法はいくつかあります。郵送での手続きが可能な墓地もあり、東京霊園では書留での郵送手続きが案内されています。
戸籍謄本は、本籍地に郵送で請求するほか、広域交付制度を使えば、お住まいの近くの市区町村窓口で請求できます。ただし、広域交付の対象は本人、配偶者、直系尊属、直系卑属の戸籍に限られ、ご自身で窓口へ行く必要があります。
また、管理費は、承継者の口座からの引き落としや、振込用紙による支払いにしておくと、現地に行かなくても納められます。
遠方に住む方が承継する場合は、名義変更の手続きだけでなく、お墓の掃除や法要をどうするかも大切なテーマになります。無理なく続けられるかどうかを、名義変更の前にご家族で話し合っておくことが、後々の負担を減らします。続けるのが難しいと感じたときの選択肢は、この章の最後でご紹介します。
結婚・離婚・転居で、名義人の氏名や住所が変わったとき
名義人ご本人の引っ越しや結婚、離縁などで、氏名や住所、本籍が変わったときも、手続きが必要です。この場合は、使用者が替わる承継ではなく、使用許可証の記載事項を変える手続きになります。
船橋市営霊園の案内では、次のようなときに、記載事項の変更申請を速やかに出すよう求められています。
- 使用者(名義人)が転居したとき
- 住居表示や町名境界の整理により、住所の表記が変わったとき
- 使用者の本籍が変わったとき(転籍、婚姻、離縁など)
- 使用者の姓が変わったとき(婚姻、離縁など)
住所の変更を届け出ていないと、管理費の請求書が届かなくなり、滞納の原因になります。この点は、先ほどの「管理費の支払い口座の変更」でご説明したとおりです。引っ越しの際は、役所や銀行の手続きと同じタイミングで、お墓の管理者にも連絡しておくと、忘れずに済みます。
手続きに必要な書類や手数料は、墓地ごとに異なります。東京霊園では、氏名変更の手数料が11,000円(消費税込)と案内されています。住民票などの提出が求められる場合もあるため、変更が生じたら、早めに管理者へ確認してください。
名義変更できる人がいない・続けるのが難しいときの選択肢(墓じまい・永代供養)
お墓の承継者が見つからない、あるいは承継できる方はいても、続けていくのが難しいというご事情もあります。その場合は、名義変更以外の選択肢を考えることになります。
一つは墓じまいです。お墓を撤去して更地に戻し、遺骨を別の場所に移す手続きで、承継者がいなくても進められます。詳しい流れと費用の目安は「墓じまいは継承者がいなくても進められる?流れと費用の目安」で解説しています。
二つ目は、遺骨の移し先を、承継者を必要としない供養に切り替える方法です。永代供養は、霊園や寺院が遺族に代わって管理・供養を行う仕組みで、跡継ぎがいなくても契約できるものが一般的です。種類や費用相場、選び方は「永代供養とは?種類・費用相場・選び方をわかりやすく解説」をご覧ください。
また、墓地によっては、承継者がいなくなる使用者向けの制度を設けています。東京都立霊園には、ご自分の代でお墓を継ぐ人がいなくなる一般埋蔵施設などの使用者を対象に、現在の墓所を返還して、納められている遺骨を合葬(がっそう)埋蔵施設(複数の方の遺骨を一緒に納める施設)に共同で埋蔵する「施設変更」という制度があり、年に3回募集していると案内されています。
どの選択肢が合うかは、お墓の状況やご家族の考え方によって変わります。名義変更を進めるか、別の形に切り替えるかを決める前に、まず管理者へ、利用できる制度がないかを尋ねてみてください。
まとめ|お墓の名義変更は「規約の確認」と「家族での共有」から
お墓の名義変更は、預貯金や不動産の相続とは異なり、遺産分割の対象外で、相続税もかからない、独自の仕組みで進みます。名義変更で変わるのは土地の所有ではなく、永代使用権の名義人であり、窓口は霊園や寺院などの墓地管理者です。
承継者は、民法897条により、指定、慣習、家庭裁判所の順に決まり、相続人や親族でなくても法律上は承継できます。ただし、実際の名義変更は霊園の規約に左右され、「三親等以内の親族」などの条件が設けられている場合があります。承継者を決める前に、規約と必要書類を管理者に確認しておくことが、遠回りを防ぐ一番の近道です。
手続きは、管理者への連絡、書類の準備、提出と手数料の納付、新しい使用許可証の受け取りの順に進みます。納骨は名義変更の完了後になる霊園もあるため、四十九日などの予定から逆算して動くこと、そして管理費の支払い口座と住所の変更を忘れないことも大切です。名義変更を放置すると、管理費の滞納から使用権の取り消しや、無縁墓としての扱いにつながる可能性があります。
名義が古いままのお墓や、承継者が遠方にいる場合、承継が難しい場合にも、それぞれ進め方や選択肢があります。
お墓のことは、ご家族の間でもなかなか話題にしにくく、「そろそろ考えなければ」と思いながらも後回しになりがちです。まずは使用許可証を探し、管理者の連絡先を確かめるところから始めてみてはいかがでしょうか。
よりねこでは、お墓や供養をはじめとした終活に関するご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。