身近な方が亡くなったとき、通夜や告別式を行わず、火葬だけで見送る「直葬(ちょくそう)」という方法があることを知り、具体的にどのような葬儀なのか気になっている方もいるのではないでしょうか。費用を抑えられると聞く一方で、故人とのお別れが十分にできるのか、親族にも納得してもらえるのかなど、気がかりなことも出てくるものです。
この記事では、直葬の基本的な内容から、選ぶ人の割合、費用や当日の流れ、依頼先を選ぶ際のポイント、身寄りがない場合の対応まで、順を追って解説します。それぞれの詳しい内容を知りたい方に向けて関連記事も紹介しますので、気になるところから確認してみてください。
直葬とは何をする葬儀?通夜や告別式を行わず火葬のみで見送る形

直葬とは、通夜や告別式などの儀式を行わず、ご遺体を安置したあとに火葬だけで故人を見送る葬儀のことです。ご遺体を病院や自宅から火葬場へ運び、荼毘(だび)に付すことから「直葬」と呼ばれるようになったとされています。一般的な葬儀では、通夜、葬儀・告別式、火葬という順番で進めますが、直葬は火葬を中心とした形になるため、準備することや当日の流れを比較的シンプルにできます。
ただし、直葬だからといって、故人を見送るための手順がすべて省かれるわけではありません。ご遺体の搬送や安置、納棺(のうかん)、火葬、収骨(お骨上げ)など、必要な手続きや作業は行います。
ここでは、直葬という言葉の意味や火葬式との違い、実際に行うことと省くこと、ほかの葬儀形式との違い、法律上のルールについて順番に見ていきます。まず基本的な仕組みを知っておけば、このあとの費用や選ぶ人の割合についても理解しやすくなるでしょう。
直葬の意味と「火葬式」との呼び方の違い
直葬は、通夜や告別式などの儀式を行わず、火葬のみで故人を見送る葬儀を指します。「火葬式」や「火葬のみのプラン」といった名前で案内されることもあり、葬儀社のパンフレットやホームページでは、直葬と火葬式がほぼ同じ意味で使われていることも珍しくありません。
ただし、葬儀社によっては、内容に応じて呼び方を分けている場合があります。たとえば、「直葬は火葬だけを行う形式」「火葬式は火葬炉の前で僧侶に読経してもらったり、短いお別れの時間を設けたりする形式」というように区別しているケースです。直葬や火葬式という名称には法律で定められた統一的な定義がないため、同じ名前のプランでも、実際に含まれる内容は葬儀社によって異なることがあります。
たとえば、ホームページで「火葬式」と書かれたプランを見て申し込んだものの、当日になって炉前での読経が含まれていないとわかることも考えられます。こうした行き違いを防ぐには、プラン名だけで判断せず、どのようなサービスが含まれているのかを事前に確かめておくことが大切です。呼び方の違いや、お別れの時間にどのような違いがあるのかについては、直葬と火葬式の違いとは?呼び方・お別れの内容・費用を比べて解説で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
直葬で行うことと行わないこと
直葬で一般的に行うのは、ご逝去後の搬送、安置、納棺、火葬、収骨です。病院などで亡くなった場合は、まず葬儀社などに依頼して、故人を安置する場所まで搬送します。安置先には、自宅のほか、葬儀社が運営する安置施設や火葬場に併設された施設などがあります。その後、棺に故人を納め、役所で必要な手続きを済ませてから火葬場へ向かい、火葬を行ったのちに遺骨を骨壺(こつつぼ)に納めます。
一方、直葬では、通夜や葬儀・告別式をはじめ、通夜振る舞いや精進落としなどの会食、祭壇の飾り付けといったものは、基本的に行いません。参列者への挨拶や返礼品の手配なども必要になる場面が少ないため、一般的な葬儀と比べて、ご遺族が対応することを減らせます。
ただし、一般的な葬儀で行う儀式を省く場合でも、故人とのお別れに必要だと感じることまで、すべて諦めなければならないわけではありません。たとえば、直葬でも僧侶に読経を依頼できる場合がありますし、納棺の際にご家族でお花を手向けたり、火葬炉の前で短いお別れの時間を設けたりすることも可能です。直葬を選ぶ際は、何を省いて、何を残したいのかをご家族で話し合っておくと、納得のいく見送り方を考えやすくなります。
一般葬・家族葬・一日葬と比べた直葬の位置づけ
葬儀の形式は、大きく一般葬、家族葬、一日葬、直葬の4つに分けて紹介されることが多くあります。それぞれ参列者の範囲や、通夜・告別式を行うかどうかに違いがあります。一般葬は、親族だけでなく、知人や会社関係の方などにも広く参列してもらい、通夜と葬儀・告別式の両方を行う形式です。家族葬は、参列者を家族やごく親しい方に絞って行いますが、通夜と葬儀・告別式を行う点は一般葬と変わりません。
一日葬は、通夜を行わず、葬儀・告別式と火葬を1日で済ませる形式です。それに対して直葬は、通夜も葬儀・告別式も行わず、火葬のみで故人を見送ります。儀式の数や準備の範囲という点で見ると、一般葬、家族葬、一日葬、直葬の順にシンプルになっていき、直葬は4つのなかでも最も簡素な形式といえます。
ただし、ここでいう「簡素」は、故人を大切に思う気持ちが小さいという意味ではありません。たとえば、高齢で友人や知人が少ない方や、遠方に住む親族に負担をかけたくないと考えている方にとっては、大勢を招く儀式を設けず、家族だけで静かに見送ることが、故人の希望に合った形になる場合もあります。どの葬儀が適しているかは、故人が生前に望んでいたことや、ご家族の事情によって異なります。形式だけで決めるのではなく、それぞれの状況に合った方法を考えることが大切です。
直葬は法律上問題ない?火葬までに守られているルール
直葬は、法律で禁止されている葬儀形式ではありません。通夜や告別式を必ず行わなければならないという決まりはなく、火葬のみで故人を見送ること自体は法律上認められています。ただし、直葬であっても、火葬を行う際には守らなければならないルールがあります。
まず、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓地埋葬法)第3条では、原則として、死亡後24時間を経過するまでは火葬してはならないと定められています。そのため、亡くなった当日や、翌朝になってすぐに火葬を行うことは、原則としてできません。
また、死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村へ提出する必要があります(戸籍法第86条)。死亡届を提出し、必要な手続きを済ませると、火葬許可証が交付されます。火葬許可証がなければ火葬を行うことはできません。火葬後には、許可証に火葬済みであることを示す記載がされ、納骨の際に必要な書類として使われます。
こうした手続きについては、葬儀社が代行したり、必要な手順を案内してくれたりするのが一般的です。ただし、具体的な手続きや提出先の案内などは自治体によって異なる場合もあります。初めて葬儀を手配する場合は、依頼先に確認しながら進めると安心です。
直葬を選ぶ人はどのくらいいる?割合と増えてきた背景

直葬という言葉を見聞きする機会が増えてきたものの、実際にどのくらいの方が選んでいるのかまでは、よく知らないという方も多いのではないでしょうか。「身近な人で直葬を選んだ人はいない」という方もいれば、以前より身近な選択肢になってきたと感じている方もいるかもしれません。
葬儀の形式は、住んでいる地域や年代、家族構成などによっても変わります。そのため、実際の割合を知ることは、直葬がどの程度選ばれているのかを把握するための一つの手がかりになります。
ここでは、民間で実施された全国調査をもとに、葬儀の形式別に見た直葬の割合を確認します。さらに、直葬を選ぶ人がいる背景や、選ぶ理由として挙げられやすいこと、調査結果を見る際に気をつけたい点についても取り上げます。数字だけでなく、その背景にある事情も知っておくことで、ご自身やご家族にとって直葬が合った選択なのか、考えを整理しやすくなるでしょう。
葬儀の形式別に見た直葬の割合
葬儀の形式を把握する際の参考になる調査の一つに、鎌倉新書が実施している「お葬式に関する全国調査」があります。2026年に行われた第7回の調査(有効回答数2,000件)では、回答者が実際に行った葬儀の形式について、家族葬が47.0%、一般葬が30.2%、一日葬が11.9%、直葬・火葬式が10.8%という結果が示されました。
この結果から、直葬・火葬式を選んだ人は全体のおよそ1割だったことがわかります。最も多かった家族葬と比べると割合は低いものの、葬儀を行った方のおよそ10人に1人が、通夜や告別式を行わない形式を選んでいることになります。同じ調査では、直葬・火葬式にかかった費用の総額についても示されており、中央値は約49.6万円でした。費用の内訳や金額の違いについては、このあとの章で詳しく見ていきます。
また、2024年に行われた第6回の調査では、火葬式の割合は9.6%となっていました。2回の調査結果を比べると、直葬・火葬式はおよそ1割前後を占めていることがわかります。
こうした数字から考えると、直葬は特別な事情がある人だけが選ぶものではなく、一定数の方が選択している葬儀形式の一つといえます。身近な人が直葬を検討している場合も、珍しい選択だからと決めつけず、本人や家族の希望に合うかどうかを考えてみるとよいでしょう。
直葬が選ばれるようになった背景にある暮らしの変化
直葬が葬儀の選択肢として広がってきた背景には、暮らし方や家族のあり方が変わってきたことも関係していると考えられます。たとえば、親族が遠方に住んでいる、きょうだいや子どもの数が少ない、本人が高齢になり、友人や職場関係の付き合いも以前より少なくなっている、といった状況では、大勢の参列者を招く葬儀を行う必要性が小さくなることがあります。
また、ひとり暮らしの高齢者が増えるなかで、喪主(もしゅ)を務める人がいない、あるいは喪主となる人自身が高齢で、葬儀の準備や当日の対応が大きな負担になるケースも考えられます。通夜や告別式を行う場合、会場の手配や参列者への連絡、当日の挨拶、返礼品の準備など、ご遺族が対応しなければならないことが数多くあります。こうした負担を考え、火葬のみで見送る方法を選ぶ方もいるでしょう。
そのほか、葬儀にかかる費用をできるだけ抑えたい、宗教的な儀式には特にこだわりがない、といった考え方も、直葬を選ぶ背景の一つと考えられます。ただし、これらはあくまで選択の背景として考えられる傾向であり、すべての人に当てはまるわけではありません。直葬を選ぶ理由は一人ひとり異なります。「周りでも選ぶ人が増えているから」という理由だけで決めるのではなく、ご自身やご家族が納得できる見送り方かどうかを大切にしましょう。
直葬を選ぶ理由として語られやすいこと
直葬を選ぶ理由としてよく挙げられるのは、大きく分けると「負担を抑えたい」「故人の希望を大切にしたい」「参列してもらう人がいない、または少ない」という3つです。
まず、負担を抑えたいという理由には、費用だけでなく、時間や体力の面も含まれます。通夜や葬儀・告別式を行う場合、ご遺族は準備から当日の対応まで、何日にもわたってさまざまな用事をこなさなければなりません。直葬であれば、こうした対応を減らせるため、ご遺族自身が高齢の場合や、遠方から駆けつけなければならない場合には、選ぶ際の大きな理由になることがあります。
次に、故人の希望を尊重したいという理由です。生前に「葬儀は簡単なものでいい」「誰にも迷惑をかけたくない」と話していたり、エンディングノートに簡素な見送りを希望する旨を書き残していたりする場合、その意思を大切にして直葬を選ぶことがあります。
一方で、直葬を選んだ理由に納得していても、葬儀が終わってから「もう少しお別れの時間を取ればよかった」と感じる方もいます。選ぶときに重視したことと、実際に見送ったあとの気持ちは、必ずしも同じとは限りません。後悔をできるだけ減らすためにも、費用や負担だけで判断せず、故人とどのようにお別れをしたいのか、ご家族で話し合っておくことが大切です。実際に直葬を選んで良かったと感じた方の理由や、満足できた人に共通する点については、直葬で良かったと感じた人の理由とは?満足できた共通点を解説で紹介しています。
割合の数字を読むときに知っておきたいこと
直葬の割合を確認するときは、数字だけを見るのではなく、どのような調査なのかも知っておくと、誤解を防ぎやすくなります。
まず、先ほど紹介した調査では、「直葬」と「火葬式」が一つの区分にまとめられています。両者は似た意味で使われることが多く、葬儀社によって呼び方や内容の分け方も異なるため、調査でも同じ区分として集計されているのです。そのため、直葬だけを選んだ人の割合が、そのまま示されているわけではありません。
また、民間の全国調査は、回答者が実際に行った葬儀について集計したものであり、全国で行われたすべての葬儀を対象にした統計とは異なります。回答者の年代や居住地域、調査方法などによって、結果が変わる可能性があります。たとえば、都市部と地方では、火葬場の予約の取りやすさや式場の確保のしやすさなどが異なり、葬儀の形式にも違いが出る場合があります。
さらに、第6回の調査では9.6%、第7回では10.8%と割合が変わっていますが、調査ごとに回答者が異なることなども考慮する必要があります。この数字の変化だけを根拠に、直葬が急速に増えていると判断することはできません。
調査結果はあくまで目安として受け止め、「直葬・火葬式を選ぶ人はおよそ1割」という程度に理解しておくとよいでしょう。調査結果は新しいものが公表されるたびに更新されるため、最新の割合を知りたい場合は、鎌倉新書などが公表している調査内容を確認してみてください。
直葬の費用・流れ・良い点・注意点は?全体像を短く整理すると

直葬について調べていると、費用はどのくらいかかるのか、亡くなってから火葬までどのように進むのか、選ぶことでどんな良い点や注意点があるのかなど、さまざまな疑問が出てくるのではないでしょうか。いずれも、直葬を選ぶかどうかを判断するうえで、事前に押さえておきたいポイントです。
ここでは、費用、当日の流れ、直葬の良い点と気をつけたい点、火葬後の遺骨や供養について、まずは全体像をつかめるように整理します。それぞれの内容を詳しく説明すると長くなるため、さらに知りたい項目については関連記事も紹介します。
最初に全体を把握しておき、気になる部分をあとから詳しく調べていくと、必要な情報を整理しやすくなります。直葬について考える場面は、気持ちが落ち着かず、時間にも余裕がないことが少なくありません。あらかじめ基本的な内容を知っておけば、いざというときにも慌てずに判断しやすくなるでしょう。
直葬にかかる費用の目安と、総額が変わる理由
直葬の費用について、先ほど紹介した鎌倉新書の第7回調査(2026年)では、直葬・火葬式にかかった総額の中央値が約49.6万円とされています。一般葬や家族葬と比べると、直葬は費用を抑えやすい傾向があります。ただし、実際にかかる金額には幅があり、広告などに掲載されているプラン料金だけで、すべての費用をまかなえるとは限りません。
費用の主な内訳には、ご遺体の搬送費、安置料、棺や骨壺(こつつぼ)、ドライアイスなどの物品代、火葬料、葬儀社の手続きにかかる費用や人件費などがあります。このうち、総額が変わりやすい項目として、安置する日数や利用する火葬場が挙げられます。
たとえば、火葬場の予約がなかなか取れず、安置する期間が数日延びた場合、安置料やドライアイスの費用が追加でかかることがあります。また、公営の火葬場を住民として利用する場合と、民営の火葬場を利用する場合では、火葬料に差が出ることもあります。
そのほか、僧侶による読経や供花、遺影などを希望すると、オプション料金が加わる場合があります。見積もりを確認するときは、基本料金にどこまで含まれているのか、追加料金が発生する項目は何かを確かめ、最終的な総額で比較することが大切です。費用の考え方や、直葬と火葬式で内容がどのように違うのかについては、先ほど紹介した関連記事も参考にしてください。
お亡くなりになってから火葬までの流れ
直葬は通夜や告別式を行わないため、一般的な葬儀に比べると流れがシンプルです。ただし、短い期間のなかで、ご遺族が決めたり手配したりすることはいくつもあります。
まず、病院などで亡くなった場合は、医師から死亡診断書(または検案書)を受け取り、葬儀社へ連絡します。その後、ご遺体を安置場所まで搬送してもらいます。病院では長時間ご遺体を安置できないことが多いため、搬送先を早めに決めて手配する必要があります。
次に、ご遺体を安置している間に、市区町村へ死亡届を提出し、火葬許可証を受け取ります。同時に、葬儀社と火葬の日時を調整し、僧侶による読経を依頼するか、お別れの時間を設けるかといった点についても相談しておきます。
火葬当日は、必要に応じて納棺を済ませ、火葬場へ向かいます。火葬炉の前でお別れの時間を持ったあと、火葬が終わるまで待機し、最後にご家族で収骨(お骨上げ)を行います。収骨した遺骨は骨壺に納め、持ち帰るのが一般的な流れです。
亡くなってから火葬を行うまでには、法律上、原則として24時間以上の経過が必要です。さらに、火葬場の予約状況によっても日程が変わるため、火葬まで数日から1週間ほどかかることもあります。特に都市部では、火葬場が混み合う時期に予約が取りにくくなり、待つ期間が長くなる場合もあります。こうした流れをあらかじめ知っておくと、慌ただしいなかでも落ち着いて準備を進めやすくなります。
直葬の良い点として挙がりやすいこと
直葬の良い点としてよく挙げられるのは、ご遺族の負担を減らせることと、故人が望んでいた見送り方を実現しやすいことです。
通夜や告別式を行わないため、式場の手配や参列者への連絡、当日の挨拶、返礼品や会食の準備などに追われることが少なくなります。ご遺族自身が高齢の場合や、遠方から駆けつけなければならない場合には、時間や体力に余裕を持ちやすくなるでしょう。また、式場の使用料や祭壇、会食などにかかる費用を省けるため、葬儀全体の費用を抑えやすいという面もあります。
さらに、生前に「葬儀は簡素なものでいい」「大勢の人に気を遣わせたくない」と話していた方にとっては、直葬が本人の希望に沿った見送り方になることもあります。参列者への対応に追われず、家族だけで故人と向き合う時間を持てたことに、安心感を覚える方もいるでしょう。
ただし、こうした良い点をどの程度感じられるかは、ご家族の状況や、事前にどこまで話し合っていたかによっても変わります。直葬を選んで満足できた方に共通するポイントについては、先ほど紹介した関連記事で詳しく取り上げています。選択に迷っている方は、あわせて確認してみてください。
直葬で気をつけたい点・後悔につながりやすい点
直葬には負担を減らせるという良い点がある一方で、事前に理解しておきたい注意点もあります。特に気をつけたいのは、故人とのお別れの時間が短くなりやすいこと、親族の理解を得られない場合があること、菩提寺(ぼだいじ)との関係です。
通夜や告別式を行わないため、故人と一緒に過ごせる時間は限られます。そのため、火葬を終えたあとになって気持ちの整理が追いつかず、「もっとゆっくりお別れをしたかった」と感じる方もいます。また、親族のなかには、直葬を簡素すぎると受け止める方もいるかもしれません。後から意見の食い違いが起きないように、直葬を選ぶ前に、故人を一緒に見送りたい方へ事情や考えを伝えておくとよいでしょう。
菩提寺がある場合は、特に注意が必要です。読経や戒名(かいみょう)を伴わない形で葬儀を行い、そのまま納骨しようとすると、寺院の考え方によっては受け入れてもらえないことがあります。納骨先が決まっている場合は、直葬にすることを事前に相談しておくと安心です。さらに、葬儀の当日に参列できなかった方が、後日、個別に弔問に訪れることもあります。そうした対応が必要になる可能性も考えておきましょう。
直葬で気をつけたい点や、どのような人に向いているのか、反対に慎重に考えたほうがよいのかについては、直葬は後悔する?向いている人・向かない人の判断基準を解説で詳しく解説しています。決めきれずに迷っている方は、判断材料の一つとして参考にしてみてください。
直葬のあとの遺骨・供養の考え方
直葬では通夜や告別式を行わないため、火葬が終わったあとに、遺骨をどこへ納めるのか、今後どのように供養していくのかを考えることになります。葬儀の形式を決める段階で、火葬後のことまで少し考えておくと、その後の手続きを進めやすくなります。
遺骨の納め先には、一般的なお墓や納骨堂、永代供養墓、樹木葬などがあります。そのほか、自宅で遺骨を保管する手元供養や、粉骨した遺骨を海や山などに撒く散骨という方法もあります。菩提寺がある場合は、納骨を受け入れてもらえるか、必要な手続きは何かを早めに確認しておきましょう。
また、直葬では参列する機会がなかった方々のために、後日、お別れ会や偲ぶ会を開くこともできます。四十九日などの節目に僧侶へ読経を依頼し、改めて故人を供養するという方法もあります。葬儀当日に儀式を行わなかったからといって、その後に供養の機会を設けられないわけではありません。
なお、火葬場によっては、収骨の際に遺骨の一部だけを持ち帰ったり、遺骨を持ち帰らない選択ができたりする場合もあります。ただし、対応は火葬場ごとに異なり、一度引き取らなかった遺骨を後から返してもらうことはできません。こうした方法については、直葬でゼロ葬はできる?遺骨を引き取らない場合の火葬場の違いと注意点で詳しく説明しています。遺骨をどう扱うかは、ご家族の気持ちにも関わる大切なことです。すぐに決めようとせず、希望や事情に合わせて考えていきましょう。
直葬はどこに依頼すればいい?依頼先の種類と選ぶときの見方

直葬を検討し始めたとき、最初に迷いやすいのが「どこに依頼すればいいのか」ということではないでしょうか。初めて葬儀を手配する方にとっては、どこへ連絡すればよいのかも、何を基準に選べばよいのかも、すぐにはわからないものです。
直葬では、亡くなってから短い期間のうちに、ご遺体の搬送や安置、火葬の日程調整などを進める必要があります。そのため、複数の依頼先をじっくり比較する時間が取れない場合もあります。あらかじめ依頼先の種類や選ぶときのポイントを知っておけば、いざというときに判断しやすくなるでしょう。
ここでは、直葬を扱う依頼先の種類や、申込みから火葬までに決めておきたいこと、葬儀社へ問い合わせる際に伝える内容、公営・民営の火葬場と依頼先選びの関係について整理します。事前に確認するポイントを押さえておくと、慌ただしい場面でも落ち着いて進めやすくなります。
直葬を扱う依頼先にはどんな種類がある?
直葬を依頼できる窓口には、いくつかの種類があります。それぞれ特徴が異なるため、希望する内容や相談のしやすさに合わせて選ぶことが大切です。
一つ目は、一般的な葬儀社です。多くの葬儀社では、一般葬や家族葬だけでなく、直葬や火葬式のプランも用意しています。式場を運営している会社も多く、担当者と相談しながら、必要なサービスやお別れの方法を決めやすい点が特徴です。
二つ目は、直葬・火葬式を中心に扱う葬儀社です。ご遺体の搬送や安置、納棺、火葬の手配など、火葬に必要なサービスを中心にまとめたプランを用意し、料金体系をわかりやすく案内している会社もあります。
三つ目は、互助会や生協などの会員向けサービスです。加入している会員に向けて、火葬のみのプランを案内している場合があります。すでに会員になっている方は、利用できるサービスや料金を確認してみるとよいでしょう。
このほか、葬儀社を紹介する窓口や、インターネット上の比較サイトを利用する方法もあります。複数の会社を比べやすい一方で、実際に葬儀を担当する会社がどこなのか、見積もりに何が含まれているのかは、自分でも確かめておく必要があります。
なお、葬儀費用を負担することが難しい場合には、市区町村の福祉事務所を通じて葬祭扶助を利用できる可能性もあります。制度の内容や申請方法については、後の章で詳しく説明します。
申込みから火葬までに、依頼する側が決めること
依頼する葬儀社が決まったら、申込みから火葬までのあいだに、ご家族で決めておきたいことがいくつかあります。あらかじめ確認しておくと、葬儀社との打ち合わせも進めやすくなります。
まずは、誰が喪主として申込みを行うのかを決めます。直葬では参列者が少ないこともあり、喪主は葬儀社との連絡窓口になったり、役所の手続きを進めたりする役割が中心になります。
次に、ご遺体を安置する場所と、安置する期間を考えます。自宅で安置するのか、葬儀社の安置施設や火葬場に併設された施設を利用するのかによって、費用だけでなく、故人と面会できるかどうかや、面会のしやすさも変わります。
そのほか、火葬の日時や立ち会う人の人数、僧侶などの宗教者を呼ぶかどうか、棺に納めるお花や思い出の品、火葬後に遺骨をどのように持ち帰るかについても、希望を整理しておきましょう。
火葬の日時は、火葬場の予約状況によって決まるため、希望した日程で行えないこともあります。立ち会ってほしい方がいる場合は、日程が決まり次第、早めに連絡しておくと安心です。
決めることが多く、負担に感じるかもしれませんが、すべてを一度に決める必要はありません。葬儀社の担当者に相談しながら、先に決めなければならないことから順番に整理していけば、無理なく進められます。
葬儀社へ問い合わせるときに伝えておきたいこと
葬儀社へ最初に問い合わせるときは、必要な情報をある程度まとめておくと、見積もりや打ち合わせがスムーズに進みます。すべてを細かく決めておく必要はありませんが、わかる範囲で伝えられるようにしておくとよいでしょう。
具体的には、故人が現在いる場所が病院・施設・自宅のどこなのか、搬送先までの距離はどのくらいか、いつ頃の火葬を希望しているか、火葬に立ち会う人数は何人か、読経やお別れの時間を設けたいかどうか、予算はいくらまでかといった情報です。また、故人の住民票がある市区町村も伝えておくと、利用できる火葬場や火葬料について確認しやすくなります。
さらに、遺骨を納める場所が決まっているかどうかも、葬儀社との相談で話題になることがあります。すぐに決められない場合は、そのことを伝えたうえで、どの段階までに決めればよいかを確認しておくと安心です。
見積もりを受け取る際は、口頭の説明だけで済ませず、総額と内訳がわかる書面をもらうようにしましょう。複数の葬儀社に同じ条件で見積もりを依頼すれば、基本料金に含まれるサービスや、別途費用がかかる項目の違いも比較しやすくなります。
ただし、亡くなった直後など、急いで手配しなければならない場面では、何社も比較する時間が取れないこともあります。そのような状況に備えて、事前に一社だけでも相談先を決めておくと、必要になったときに慌てずに連絡できます。
公営・民営の火葬場と、依頼先選びの関係
火葬場には、自治体が運営する公営の施設と、民間の事業者が運営する民営の施設があります。どちらを利用するかによって火葬料や日程の調整に違いが出ることがあるため、葬儀社を選ぶ際にも確認しておきたいポイントです。
公営の火葬場は、その自治体に住んでいる方が利用する場合、火葬料が比較的低く設定されていることが多く、費用を抑えやすい傾向があります。ただし、利用希望者が多いと予約が取りにくくなることもあります。また、自治体の住民以外が利用する場合には、料金が高く設定されていたり、利用条件が設けられていたりする場合があるため、事前の確認が必要です。
一方、民営の火葬場は、公営の施設に比べて火葬料が高くなる傾向があります。ただし、施設や待合室が整っていたり、希望する日程を調整しやすかったりする場合もあります。具体的な料金や利用条件は施設ごとに異なります。
利用できる火葬場は、葬儀社が提携している施設や、故人がお住まいだった地域などによって変わります。依頼先に相談するときは、「どこの火葬場を利用するのか」「火葬料はいくらかかるのか」「火葬の日程はいつ頃になりそうか」をまとめて確認しておくとよいでしょう。火葬場ごとに料金や利用条件は異なるため、担当者の説明を聞き、費用と日程の両方を踏まえて判断することが大切です。
身寄りがない・費用が心配なときの直葬は?葬祭扶助と自治体の対応

直葬を考えている方のなかには、「頼れる親族がいない」「葬儀に使えるお金が十分にない」といった事情を抱えている方もいるのではないでしょうか。特に、おひとり暮らしの場合は、自分が亡くなったときに誰が火葬や必要な手続きをしてくれるのか、心配になることもあるでしょう。
こうした場合には、国や自治体の制度を利用できる可能性があります。費用面では、生活保護制度の一つである葬祭扶助(そうさいふじょ)があります。また、身寄りがないまま亡くなり、火葬などを行う人がいない場合には、法律にもとづいて自治体が対応する仕組みも設けられています。
この章では、葬祭扶助の対象となる人や支給される内容、申請するタイミング、身寄りがなく葬儀を行う人がいない場合の対応、そして生前から直葬を希望している場合にできる備えについて説明します。制度の運用や手続きには自治体ごとの違いもあるため、実際に利用を検討するときは、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
葬祭扶助とは?対象になる人と支給される内容
葬祭扶助とは、生活保護法第18条にもとづき、経済的な事情から葬儀費用を負担することが難しい場合に、葬祭に必要な最低限の費用を支給する制度です。
対象となるのは、主に2つのケースです。一つ目は、葬儀を行う人(扶養義務者など)が生活に困窮しており、葬儀費用を負担できない場合です。二つ目は、故人に葬儀を行う扶養義務者がおらず、残された金品でも費用をまかなえない場合に、家主や民生委員など、親族以外の人が葬儀を行うケースです。
支給の対象となるのは、ご遺体の検案や搬送、火葬または埋葬など、葬祭を行うために必要な最低限の費用です。一般的には、通夜や告別式、祭壇、読経などの儀式にかかる費用は対象に含まれないとされており、実際の見送りも直葬に近い形になることが多くあります。
支給される基準額は、地域の区分である級地などによって異なります。たとえば、愛媛県松山市が公表している令和8年度の基準では、2級地の場合、大人は219,000円以内とされています。ただし、これはあくまで一例であり、支給額は自治体や級地によって異なります。利用できるかどうかも含め、実際の条件については、お住まいの地域を担当する福祉事務所に相談して確認しましょう。
葬祭扶助を使うときの申請のタイミング
葬祭扶助を利用する際に、特に気をつけたいのが申請するタイミングです。原則として、葬儀や火葬を行う前に、市区町村の福祉事務所へ相談し、申請を進める必要があります。
すでに火葬を済ませて費用を支払ってしまうと、費用を負担できる状況だったと判断されるなど、扶助の対象にならない可能性があります。そのため、葬祭扶助を利用できるかもしれないと考えている場合は、葬儀社への依頼や費用の支払いを進める前に、まず福祉事務所へ相談することが大切です。
相談時には、故人との関係や、故人および申請する人の経済状況、現在置かれている状況などを確認されます。その内容をもとに、福祉事務所が制度の対象になるかどうかを判断します。必要な書類や手続きについても、窓口の案内に従って進めましょう。
また、葬祭扶助を利用する場合、制度に対応している葬儀社への依頼が必要になることもあります。福祉事務所から葬儀社を案内してもらえる場合もあるため、先に窓口へ相談し、その指示に沿って手配を進めると安心です。
身近な方が亡くなった直後は、気持ちが落ち着かず、何から始めればよいのかわからなくなることもあります。葬祭扶助を利用する可能性がある場合は、「葬儀を進める前に、まず福祉事務所へ相談する」という順番を覚えておきましょう。
身寄りがなく葬儀を行う人がいない場合はどうなる?
亡くなった方のご遺体を引き取る親族などがおらず、火葬を行う人もいない場合には、法律にもとづいて自治体が対応します。「墓地、埋葬等に関する法律」第9条では、埋葬または火葬を行う人がいない場合や、その人が判明しない場合には、亡くなった場所の市町村長が埋葬または火葬を行うと定められています。
たとえば千葉市では、身寄りのない方が亡くなった場合、まず警察への通報などを経て、警察署が検案や身元・親族の確認を行います。その結果、遺体の引き取り手がいないとわかった場合には、亡くなった場所の市町村長が火葬を行うという流れが案内されています。
火葬にかかる費用の扱いや、遺骨をどのくらいの期間保管するのか、その後どのように供養するのかについては、自治体ごとの取り扱いによって異なります。また、身元や親族を調べる過程で、長いあいだ交流がなかった親族に連絡が入る場合もあります。
このような仕組みがあるため、身寄りがないからといって、火葬されないままになってしまうわけではありません。ただし、自治体による対応では、必ずしも故人が生前に望んでいた見送り方が実現するとは限りません。自分の希望に沿った形で見送ってもらいたい場合は、元気なうちから必要な準備を進めておくことが大切です。
生前に直葬を希望しておくための備え方
「自分が亡くなったときは直葬で構わない」と考えていても、その希望を実現するには、実際に手続きを進めてくれる人が必要です。生前に口頭で伝えたり、エンディングノートに希望を書き残したりすることはできますが、それだけで希望どおりの対応が必ず行われるとは限りません。特に、頼れる人が身近にいない場合は、希望が実現されない可能性も考えておく必要があります。
そこで選択肢の一つとなるのが、死後事務委任契約です。これは、自分が亡くなったあとの葬儀や火葬、納骨、役所への届出、住まいの片付けなどについて、あらかじめ信頼できる第三者に依頼しておく契約です。契約内容を整理するなかで、直葬を希望することや、依頼したい葬儀社、遺骨の納め先、費用をどのように準備しておくかなどを決めておくことができます。入院や施設への入居時に必要となることがある身元保証との関係については、身元保証サービスと死後事務委任契約はセットで契約すべき?違いと必要性を解説で詳しく説明しています。
また、おひとり様の場合、葬儀を誰が担うのか、生前にどのようなことを決めておけばよいのかについては、おひとり様の葬儀は誰がやる?終活で今から決めておくべきことでも取り上げています。
よりねこでも、おひとり様の終活に関するご相談を承っています。「自分の希望をどのように残しておけばよいのかわからない」「亡くなったあとの手続きを任せられる人がいない」といった不安がある場合は、早めに考えを整理しておくと、将来に向けて少しずつ準備を進めやすくなります。
直葬について、よくある疑問は?

直葬は通夜や告別式を行わないため、一般的な葬儀とは異なる点について、細かな疑問が出てくることがあります。たとえば、僧侶に読経をお願いできるのか、戒名は必要なのか、参列する場合の香典や服装はどうすればよいのか、故人と最後に会えるのか、遺影や位牌を用意する必要があるのかなど、気になることはさまざまです。
ここでは、直葬についてよくある疑問を取り上げ、それぞれ簡潔に説明します。ただし、実際の対応は葬儀社や火葬場、菩提寺によって異なる場合があります。具体的な希望があるときは、依頼先に確認したうえで準備を進めてください。
あらかじめ疑問を解消しておくと、直葬を選ぶ際にも落ち着いて判断しやすくなります。すべてを読む必要はありませんので、気になる項目から確認してみてください。
直葬でも僧侶に読経をお願いできる?
直葬であっても、希望すれば僧侶に読経をお願いできる場合があります。一般的には、火葬炉の前で短い時間、読経してもらう形になります。
僧侶を手配する方法は、菩提寺がある場合と、菩提寺がない場合で異なります。菩提寺がある場合は、まずその寺院に相談してみましょう。菩提寺がない場合には、葬儀社が提携している僧侶の紹介サービスなどを利用する方法もあります。ただし、火葬場によっては、炉前で読経できる時間や立ち会える人数に制限が設けられていることもあるため、事前に確認しておくことが大切です。
僧侶に渡すお布施の金額は、寺院や地域によって異なり、全国一律の決まりがあるわけではありません。依頼するときに、僧侶や葬儀社の担当者へ目安を尋ねておくと、費用を考えやすくなります。
戒名(かいみょう)についても、直葬だからといって必ずつけなければならないわけではありません。ただし、菩提寺に納骨する場合などは、寺院の考え方によって戒名を求められることがあります。火葬後に改めて戒名をつけてもらう方法もあるため、納骨先が決まっている場合は、あらかじめ寺院に相談しておくと安心です。
読経や戒名をどうするかによって、直葬での見送り方も変わってきます。ご家族で希望を話し合い、どこまで行いたいのかを決めたうえで葬儀社に伝えておけば、当日の行き違いを防ぎやすくなります。
直葬に参列できる?香典や服装はどうなる?
直葬は、家族やごく近い親族だけで行うことが多く、通夜や告別式のように広く参列者を募る形式ではありません。そのため、故人と親しかった方であっても、案内を受けていない場合は、いきなり火葬場へ向かうのではなく、まずご遺族の意向を確認するのが望ましいでしょう。
参列の案内を受けた場合でも、香典や供花を辞退する旨が伝えられることがあります。ご遺族から辞退の連絡があったときは、その意向を尊重し、無理に渡そうとしないことが大切です。ご遺族の負担を増やさずに、故人を悼む気持ちを伝えられます。
服装については、ご遺族から特に指定がなければ、喪服を着用するか、黒・紺・グレーなど落ち着いた色合いの平服を選ぶとよいでしょう。ただし、火葬場の雰囲気やご遺族の考え方によっても異なるため、判断に迷う場合は、事前に確認しておくと安心です。
参列できなかった場合でも、後日、お悔やみの手紙を送ったり、ご遺族の都合を確認したうえで弔問に伺ったりする方法があります。故人を悼む気持ちの伝え方は一つではありません。ご遺族の気持ちや負担にも配慮しながら、無理のない方法を選びましょう。
直葬の前に、故人と最後に会うことはできる?
直葬であっても、火葬の前に故人とお別れする時間を持つことは可能です。ただし、どこで、どのくらいの時間会えるかは、ご遺体を安置する場所や火葬場のルールによって変わります。
自宅に安置する場合は、火葬までのあいだ、ご家族が故人のそばで過ごしやすくなります。一方、葬儀社の安置施設を利用する場合は、面会できる時間帯や人数が決まっていることが多く、事前の予約が必要な施設もあります。故人とゆっくり過ごしたい場合は、安置先を決める段階で面会の条件を確認しておきましょう。
納棺の際には、ご家族が故人に触れたり、お花や思い出の品を棺に納めたりできる場合があります。また、火葬炉の前でも、短い時間ながら、最後のお別れの機会が設けられるのが一般的です。ただし、実際にできることは施設によって異なります。
法律上、原則として亡くなってから24時間以上が経過しなければ火葬できないため、その間に故人と過ごす時間を設けることもできます。ただし、面会の可否や時間は、安置施設や葬儀社によって異なります。できるだけゆっくりお別れをしたい場合は、その希望を早めに伝え、契約前に具体的な対応を確認しておくと、希望に合った見送り方を選びやすくなります。
直葬でも遺影や位牌は必要?
遺影や位牌(いはい)は、法律によって用意が義務づけられているものではありません。直葬では祭壇を設けず、式場も利用しないことが多いため、葬儀の場に遺影を飾る必要がなく、写真を用意しないという選択をする方もいます。
ただし、葬儀の場で遺影を使わなかったとしても、火葬後に自宅で故人を偲ぶため、お気に入りの写真を飾る方は少なくありません。普段の暮らしのなかで写真を見ながら故人を思い出したり、手を合わせたりすることが、気持ちの支えになる場合もあります。葬儀用の遺影を用意するかどうかとは別に、手元に残しておきたい写真を選んでおくのもよいでしょう。
位牌については、宗派や菩提寺の考え方によって扱いが異なります。一般的には、四十九日の頃までに戒名や俗名(生前の名前)を記した位牌を用意することがありますが、直葬で戒名をつけない場合は、俗名で位牌を作る方もいます。また、手元供養を選ぶ場合などは、位牌を置かずに故人を偲ぶこともできます。
遺影や位牌を用意するかどうかに、決まった正解があるわけではありません。故人への思いやご家族の考え方に合わせて決めていけば大丈夫です。迷ったときは、菩提寺や葬儀社に相談しながら、無理のない形を考えていきましょう。
まとめ|直葬は「何を省き、何を残すか」を決める葬儀
直葬とは、通夜や告別式を行わず、火葬のみで故人を見送る葬儀形式です。ご遺体の搬送や安置、納棺、火葬、収骨といった必要な手順は行うため、何もしないというわけではありません。鎌倉新書が実施した調査では、葬儀を行った方のおよそ1割が直葬・火葬式を選んでおり、一定数の方が利用している葬儀形式であることがわかります。
直葬を検討する際は、費用や当日の流れ、選ぶことで得られる良い点、気をつけたい点を押さえたうえで、どこに依頼するか、どの火葬場を利用するかを考えておくことが大切です。葬儀費用を負担することが難しい場合には葬祭扶助を利用できる可能性があり、身寄りがない場合には自治体が火葬を行う仕組みもあります。ただし、ご自身が望む形で見送ってもらいたい場合は、生前から希望を整理し、必要な準備を進めておくことが欠かせません。
直葬を選ぶうえで大切なのは、費用や手間だけで判断するのではなく、故人とのお別れの時間や読経の有無、遺骨の納め先などについて、何を省き、何を残すのかをご家族で話し合っておくことです。事前に希望を共有しておけば、葬儀を終えたあとに「こうしておけばよかった」と感じることも減らしやすくなります。
よりねこでは、おひとり様の終活に関するご相談を承っています。ご自身が望む見送り方や、死後事務委任契約についてお悩みの場合は、一人で抱え込まず、お気軽にお問い合わせください。