愛犬や愛猫と暮らすおひとり様の中には、「もし自分に何かあったとき、この子はどうなるのだろう」という不安を抱えている方が少なくありません。
身元保証サービスに入っていれば、ペットのことも一緒にお願いできると思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、身元保証サービスがペットの引き取りにどこまで対応してくれるのか、契約前に確認しておきたいポイントとあわせて解説していきます。
身元保証サービスとは?「生前」を中心に支えるサービスの基本

身元保証サービスは、身寄りのないおひとり様や高齢者に代わって、入院や施設入所の際に必要となる身元保証人の役割を担ってくれるサービスです。
まずは、このサービスがどのような場面を想定して作られているのかを確認したうえで、ペットとの関係を見ていきましょう。
身元保証サービスが対応する主な範囲(入院・施設入所・日常生活支援)
身元保証サービスの中心的な役割は、病院への入院時や介護施設への入所時に求められる「身元保証人」を、事業者が代わりに引き受けることにあります。
具体的には、緊急連絡先としての対応、入院手続きへの同席、費用の連帯保証、退院や退所の際の身柄引き受けといった内容が含まれるのが一般的です。
事業者によっては、日常の買い物代行や通院の付き添いといった生活支援サービスをあわせて提供しているところもあります。
たとえば、一人暮らしの70代の方が急に入院することになった場合、身元保証サービスに加入していれば、家族の代わりに事業者の担当者が病院との連絡窓口になってくれるため、手続きがスムーズに進みやすくなります。
このように、身元保証サービスは「生きている間」に起こるさまざまな場面を支えることを主な目的として設計されています。
身元保証サービスは「本人が生きている間」を想定した契約が中心
身元保証サービスの契約内容を見てみると、多くの場合は本人が存命であることを前提とした業務が中心になっています。
これは、身元保証という言葉がもともと、病院や施設が「本人に何かあったときに連絡・対応してくれる人」を求める場面から生まれた考え方であることが背景にあります。
そのため、契約書や重要事項説明書を確認すると、入院・入所時の対応や日常生活の支援については具体的に書かれていても、ご本人が亡くなったあとの手続きについては別契約として案内されているケースが多く見られます。
実際に、身元保証サービスと、お亡くなりになったあとの事務手続きを担う契約は別物として扱われていることが一般的で、この点を知らずに契約すると、想定していた範囲と実際の対応にズレが生じることがあります。
なぜ「ペットの引き取りまで頼めるはず」というイメージとズレが生じるのか
身元保証サービスは「もしものときに何でも代わりにやってくれる」という安心感の強いサービスであるため、ペットの引き取りについても自然と含まれていると考えてしまう方が少なくありません。
しかし、先ほど確認したとおり、身元保証サービスの中心的な役割は本人が生きている間の保証や支援であり、ペットの引き取り先を探したり、新しい飼い主に引き渡したりする業務は、性質としては「もしものことがあったあと」の対応に近いものです。
そのため、ペットの引き取りは身元保証サービスそのものというより、後ほど紹介する死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく)という、お亡くなりになったあとの手続きを委任する契約の中で扱われることが多いのが実態です。
この違いを知らないまま契約してしまうと、いざというときに「ペットのことは対応範囲外だった」と気づくことになりかねません。次の章で、この2つの契約の違いを具体的に整理していきます。
身元保証サービスと死後事務委任契約|ペット対応はどちらの役割か

ペットの引き取りについて考えるうえで欠かせないのが、身元保証サービスと死後事務委任契約という、性質の異なる2つの契約の役割分担です。
どちらがどこまでを担うのかを理解しておくことで、契約前に確認すべきポイントも見えやすくなります。
身元保証サービスの守備範囲と死後事務委任契約の守備範囲の違い
身元保証サービスは、繰り返しになりますが、本人が生きている間の入院・入所支援や緊急連絡対応が中心です。
一方の死後事務委任契約は、お亡くなりになったあとに必要となる、役所への届出、医療費や施設利用料の精算、遺品整理、葬儀や納骨の手配などの事務手続きを、あらかじめ指定した人(受任者)に任せておく契約です。
ペットの引き取り先の指定や、新しい飼い主への引き渡しの手続きは、性質としてはこの死後事務委任契約の領域に含まれることが多くなっています。
つまり、身元保証サービスと死後事務委任契約は補い合う関係にあり、片方だけでは本人の「生前」と「もしものあと」の両方をカバーしきれない場合があるということです。
ペットの引き取り・引き渡しは死後事務委任契約でカバーされることが多い実態
実際に、死後事務委任契約の中にペットの引き渡し先を明記しておくという備え方は、終活の選択肢としてすでに広く知られています。
受任者があらかじめ次の飼い主やペットを受け入れてくれる団体に相談し、了承を得たうえで契約書に盛り込んでおくことで、もしものときにもペットがスムーズに引き継がれやすくなります。
身元保証サービス単体の契約書には、こうしたペットに関する条項が用意されていないことも多く、「身元保証サービスに入っているから大丈夫」と考えていた方が、実際には死後事務委任契約を別途結んでいなかったために、ペットの引き取り先が決まっていなかったというケースも起こり得ます。
この点は、ペットと暮らすおひとり様にとって見落としやすい落とし穴といえるでしょう。
身元保証サービスに死後事務委任契約がセットになっている事業者もある
すべての事業者がそうというわけではありませんが、身元保証サービスと死後事務委任契約をセットにしたプランを用意している事業者も増えてきています。
こうしたセットプランであれば、生前の身元保証と、お亡くなりになったあとの事務手続きの両方を1つの契約でまとめて依頼でき、ペットの引き渡しについても契約内容に含めやすくなります。
もし現在契約を検討している事業者がセットプランを提供している場合は、その中にペットに関する条項が含まれているかどうかを確認しておくと安心です。
身元保証サービスと死後事務委任契約の違いや、セットで契約すべきかどうかの判断基準については、身元保証サービスと死後事務委任契約はセットで契約すべき?違いと必要性を解説で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
「身元保証を契約すればペットも安心」という誤解に注意
ここまで見てきたように、身元保証サービスに加入しているというだけでは、ペットの引き取りまで自動的に保証されるわけではありません。
「身元保証サービスに入っているから、ペットのことも何とかなるだろう」という思い込みのまま過ごしてしまうと、実際にもしものことが起きたときに、ペットの引き取り先が決まっておらず、行政や近隣の方に負担をかけてしまう可能性もあります。
大切なペットのためにも、身元保証サービスがどこまでを担い、どこから先を別の契約で補う必要があるのかを、契約前の段階で具体的に確認しておくことが欠かせません。
次の章では、契約前に確認しておきたい具体的なチェックポイントを紹介していきます。
契約前に確認したい、ペット対応に関する具体的なチェックポイント

身元保証サービスを検討する際、ペットとの暮らしを守るためにはどのような点を確認しておけばよいのでしょうか。
ここでは、契約前に事業者へ質問しておきたい具体的なチェックポイントを紹介します。
契約書に「ペットの引き取り・引き渡し」に関する条項があるか
まず確認したいのが、契約書や重要事項説明書の中に、ペットの引き取りや引き渡しに関する記載があるかどうかです。
身元保証サービス単体の契約書には触れられていないことも多いため、記載が見当たらない場合は、別途死後事務委任契約を結ぶ必要があるのか、それとも対応している範囲外なのかを事業者に直接尋ねてみましょう。
口頭での説明だけで済ませず、書面にどう記載されているかを確認しておくことで、あとから「言った・言わない」のトラブルを防ぐことにもつながります。
身元保証サービス全体の契約前チェックポイントについては、身元保証サービスを契約する前に確認したい7つのチェックポイントでも詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。
対応してもらえる場合の範囲(一時預かりのみか、新しい飼い主探しまで含むか)
ペット対応に関する条項があった場合でも、その内容には幅があります。
「もしものときに一時的に預かる」だけなのか、それとも「新しい飼い主を探すところまで対応する」のかによって、実際に受けられる支援は大きく変わってきます。
たとえば、一時預かりのみの対応であれば、その後の引き取り先はご自身で別途手配しておく必要がありますし、新しい飼い主探しまで含まれる場合でも、希望に沿った引き取り先が見つかるまでの期間や、見つからなかった場合の対応方針まで確認しておくと安心です。
どこまでを事業者に任せられるのかを具体的にイメージしながら質問することが大切です。
追加費用の有無と目安
ペットに関する対応が契約に含まれている場合でも、通常の身元保証サービスの料金とは別に、追加費用が発生することがあります。
一時預かりにかかる費用や、新しい飼い主が見つかるまでの飼育費用、場合によっては専門団体への引き継ぎ費用などが必要になるケースもあるため、事前に目安の金額を確認しておきましょう。
費用の内訳がはっきりしないまま契約を進めてしまうと、実際にもしものことが起きたときになって想定外の負担が発生することにもなりかねません。
見積もりを取る際には、ペット対応にかかる費用を含めた総額を提示してもらうよう依頼するとよいでしょう。
対応できるペットの種類・頭数に制限はないか
犬や猫であれば対応できても、大型犬や特殊な種類の動物、複数頭の場合には対応が難しいと案内されることもあります。
また、高齢のペットや持病のあるペットについては、引き取り先を探すこと自体が難しくなる場合もあるため、ご自身のペットの状況を具体的に伝えたうえで、対応の可否を確認しておくことが大切です。
複数の事業者を比較する際には、同じ条件でペット対応について質問し、回答を比べてみると違いが分かりやすくなります。
こうした具体的な条件まで確認しておくことで、いざというときに「うちのペットは対象外だった」という事態を避けやすくなります。
事業者によって対応は分かれる|対応してもらえない場合に検討したい選択肢

ここまで見てきたように、身元保証サービスがペットの引き取りにどこまで対応するかは事業者によって大きく異なります。
ここでは、対応していない場合や対応が限定的な場合に、あわせて検討しておきたい選択肢を紹介します。
身元保証サービスがペット対応をしていない・限定的な場合の実態
身元保証サービスの中には、そもそもペットに関する対応をサービスに含めていない事業者や、簡単な情報の預かりのみにとどめている事業者も少なくありません。
これは、ペットの引き取りには飼育スペースの確保や譲渡先の選定など、身元保証サービスとは異なる専門的な知識やネットワークが必要になるためです。
そのため、対応していないこと自体は事業者の姿勢に問題があるというより、専門外の領域であるケースが多いと理解しておくとよいでしょう。
その場合は、身元保証サービスとは別に、ペットの引き取りに強い仕組みを組み合わせておくことが安心につながります。
死後事務委任契約にペットの引き渡し条項を追加する
身元保証サービスでペット対応が難しい場合にまず検討したいのが、死後事務委任契約の中にペットの引き渡し条項を追加しておく方法です。
受任者があらかじめ次の飼い主候補や引き取り団体と調整し、了承を得たうえで契約書に盛り込んでおくことで、もしものときにも指定した通りに引き継ぎが進みやすくなります。
ペットの性格や食事の好み、予防接種の状況といった情報も、あわせて書面や引き継ぎ資料として残しておくと、新しい飼い主となる方がスムーズにお世話を始めやすくなります。
おひとり様がもしものときに備えてペットのためにできる準備については、おひとり様が先に倒れたら、愛犬・愛猫などのペットはどうなる?今からできる備えで幅広く紹介していますので、あわせてご覧ください。
ペット信託・ペット後見互助会など専門サービスを併用する
ペットの財産面や日常的な見守りをより手厚く備えたい場合は、ペット信託やペット後見といった専門の仕組みを併用する方法もあります。
ペット信託は、ペットのための飼育費用を信託の仕組みを使ってあらかじめ確保しておく方法で、財産管理の面から備えたい方に向いています。
一方、ペット後見的な仕組みは、日常の見守りや、もしものときの預かり・譲渡までを含めた「備え方の総称」として考えられており、団体によって互助会形式でサポートを提供しているところもあります。
ペット信託とペット後見の違いについては、ペット信託とペット後見の違いとは?おひとり様が知っておきたい基礎知識で詳しく整理していますので、ご自身に合った備え方を選ぶ際の参考にしてください。
老犬・老猫ホームなど引き取り先を別途確保しておく
ペットがすでに高齢の場合は、老犬・老猫ホームのような専門施設を引き取り先の候補として早めに確保しておく方法もあります。
高齢のペットは新しい飼い主が見つかりにくい傾向があるため、身元保証サービスや死後事務委任契約の対応範囲にかかわらず、あらかじめ受け入れ先のあたりをつけておくと安心です。
費用相場や施設を選ぶ際のポイントについては、一人暮らしで飼えなくなったら?老犬・老猫ホームの選び方と費用相場で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。
複数の選択肢を組み合わせておくことで、いずれかの対応が難しい場合でも、ペットの行き先に困らない備えを作ることができます。
身元保証サービス・死後事務委任契約の担当者に、ペットのことをどう伝えておくか

契約内容を確認するのと同じくらい大切なのが、実際の担当者にペットの存在をどう伝えておくかという点です。
ここでは、担当者とのやり取りの中で意識しておきたいことを紹介します。
契約時にペットの存在を伝えておくと何が変わるか
身元保証サービスや死後事務委任契約を結ぶ際、ペットと暮らしていることを担当者にきちんと伝えておくと、対応できる範囲や不足している部分をその場で確認してもらいやすくなります。
担当者側もペットの存在を把握していなければ、もしものときに気づかないまま手続きを進めてしまう可能性があります。
たとえば、契約時にペットの有無を伝える欄が用意されていない事業者もあるため、その場合は面談の際に口頭で伝え、対応可否を書面に残してもらうよう依頼するとよいでしょう。
小さなことのように思えても、こうした一言が、もしものときの対応の速さや正確さにつながります。
ペット情報の共有はどこまで必要か(エンディングノートとの役割分担)
担当者に伝える情報は、ペットの種類や年齢といった基本的な内容にとどめ、性格や食事の好み、かかりつけの動物病院といった細かな情報まではエンディングノートにまとめておくという役割分担も一つの方法です。
契約書や事業者への申告はあくまで「対応してもらえるかどうか」を確認するためのものとして扱い、実際の引き継ぎに必要な詳しい情報は別の形で残しておくと、双方にとって管理がしやすくなります。
どちらか一方だけに情報を集中させず、担当者とエンディングノートの両方でペットの存在を「見える化」しておくことが、引き継ぎの精度を高めるポイントです。
引き取り先が決まっていない場合、担当者に相談できることはあるか
まだ次の飼い主やペットの引き取り先が決まっていない場合でも、その旨を正直に担当者へ伝えておくことをおすすめします。
事業者によっては、提携している譲渡団体や老犬・老猫ホームを紹介してくれる場合もありますし、少なくとも「引き取り先が未定である」という情報を記録として残してもらうことで、もしものときに何もない状態から手続きが始まるという事態を避けられます。
決まっていないことを後ろめたく感じる必要はなく、むしろ早い段階で相談しておくことが、ペットにとってもご自身にとっても安心につながります。
家族や友人にも同じ情報を共有しておく理由
身元保証サービスや死後事務委任契約の担当者だけでなく、日頃から親しくしているご家族やご友人にも、ペットの存在や希望する引き継ぎ先について共有しておくと、より安心度が高まります。
担当者による対応にはどうしても手続き上の時間がかかることがあるため、近くにいるご家族やご友人が緊急時に一時的にペットのお世話をしてくれる存在になってくれると、ペットの負担も軽減されます。
複数の人にペットの存在を知っておいてもらうことは、いざというときの選択肢を広げることにもつながります。
特にご高齢の親御さんがペットを飼っている場合は、離れて暮らすお子さん世代がこうした情報を把握しておくことで、もしものときにすぐ動ける体制を作りやすくなります。日頃の会話の中で「もしものときはこの子をお願いしたい」と伝えておくだけでも、家族や友人にとって大きな心づもりになります。
まとめ
身元保証サービスは、入院や施設入所など「生前」を支えることを中心に設計されているため、ペットの引き取りまでを自動的にカバーしているとは限りません。
ペットの引き取り・引き渡しは、死後事務委任契約や、ペット信託・ペット後見といった専門の仕組みで補うことが多いのが実態です。
契約前には、ペットに関する条項の有無や対応範囲、追加費用などを具体的に確認し、必要であれば複数の仕組みを組み合わせて備えておくと安心です。
よりねこでは、身元保証サービスと死後事務委任契約を組み合わせたご相談も承っております。ペットとの暮らしに関する不安がある方も、お気軽にお問い合わせください。