身元保証サービスを検討するとき、「本当に信頼できる事業者を選べているだろうか」と不安になる方は少なくありません。実は国民生活センターの統計によると、身元保証サービスに関する相談件数はこの10年で大きく増加しています。
この記事では、公表されているデータをもとに相談件数の推移を読み解きながら、どのようなトラブルが多いのか、契約前に何を確認しておくとよいのかを整理してご紹介します。
身元保証サービスの相談件数、この10年でどう増えた?国民生活センターの統計を読み解く

身元保証サービスに関する相談は、独立行政法人国民生活センターが運営するPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に蓄積された情報をもとに、その推移が明らかにされています。
結論から言うと、相談件数は2013年度の85件から2023年度には354件へと、約4.2倍にまで増加しました。さらに2024年度には420件に達しており、増加のペースはむしろ加速しているとも言える状況です。
ここでは、この10年間の推移を年度ごとに具体的な数字とともに確認しながら、なぜこれほどまでに相談が増えているのか、その背景を読み解いていきます。
2013年度85件から2023年度354件へ|10年で約4.2倍に増加した推移
国民生活センターが公表している資料によれば、身元保証等高齢者サポートサービスに関する相談件数は、2013年度には85件でした。当時はまだこうしたサービス自体の認知度が低く、相談として消費生活センターに寄せられる件数もそれほど多くはなかったと考えられます。
ところが、その後の10年間で状況は大きく変化しました。2023年度の相談件数は354件となり、2013年度と比較すると約4.2倍に増加しています。単純計算すると、10年前には月に7件程度だった相談が、今では月30件近くのペースで寄せられるようになった計算です。
この背景には、高齢者の単独世帯そのものが増え続けていることに加え、身元保証サービスを提供する事業者数自体が急増し、サービスの利用者数も比例して増えてきたことが関係していると考えられます。利用者数が増えれば、それに比例してトラブルの相談件数も増えるのは自然な流れともいえるでしょう。
ただし、後述するように、相談件数の増加は単に利用者が増えたことだけが理由ではなく、サービス内容や契約条件の分かりにくさといった構造的な問題も影響していると考えられます。
2024年度は420件に|直近ではさらに増加ペースが加速している実態
相談件数の増加傾向は、2023年度で止まっているわけではありません。国民生活センターが公表している最新の情報によると、2024年度の相談件数は420件に達しており、前年度の354件からさらに増加しています。
2014年度の相談件数が99件であったことと比較すると、2024年度の420件は10年間で4倍以上に増加した計算になります。身元保証サービスの利用が一部の限られた人だけのものではなく、単身の高齢者にとって身近な選択肢のひとつになりつつあることの裏返しともいえそうです。
一方で、利用が広がるにつれてサービス内容や料金体系への理解が追いつかず、契約後になって「思っていたサービスと違った」といった戸惑いが生じやすくなっている可能性も考えられます。件数の増加は、業界の拡大とトラブルの顕在化という、良い面と注意すべき面の両方を映し出していると考えるとよいでしょう。
今後も単身高齢者の増加が見込まれる中で、相談件数はさらに増えていくことが予想されます。だからこそ、契約を検討する段階でどのような点に注意すればよいのかを、事前に把握しておくことが大切です。
2016年度から2018年度にかけて件数が落ち着いていた時期もある
相談件数の推移を年度ごとに詳しく見ていくと、右肩上がりに一直線に増え続けてきたわけではないことも分かります。国民生活センターの資料によると、2015年度には177件だった相談件数が、2016年度には127件、2017年度には74件、2018年度には101件と、一時的に減少する時期もありました。
その後、2019年度以降は再び増加傾向に転じ、2023年度の354件、2024年度の420件へとつながっていきます。このように増減を繰り返しながらも、長期的には右肩上がりで推移してきたことが、この10年間のデータから読み取れます。
件数が一時的に落ち着いた背景には、消費者庁や厚生労働省による注意喚起資料の公表など、行政側の情報発信が一定の効果を発揮した時期があったことも関係していると考えられます。
ただし、その後の急激な増加を見る限り、注意喚起だけでは根本的な解決には至らず、業界の実態把握やルール整備がさらに必要とされる状況が続いていたことがうかがえます。
相談件数の増加が意味すること|利用者数の増加とトラブルの顕在化の両面
相談件数の増加をどう受け止めればよいのか、悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。件数だけを見ると「トラブルが多い業界」という印象を持ちやすいですが、実際にはもう少し多面的に捉える必要があります。
ひとつは、単純に身元保証サービスを利用する人自体が増えているという側面です。総務省行政評価局の調査でも、身元保証等高齢者サポート事業を行う事業者は、平成26年以降、毎年10事業者以上のペースで新たに開業していることが明らかになっています。利用者の母数が増えれば、それに比例して相談件数が増えるのは自然なことともいえます。
もうひとつは、サービス内容や契約条件が事業者ごとに大きく異なり、利用者にとって分かりにくい構造になっているという側面です。身元保証、日常生活支援、死後事務といった複数のサービスが一体的に提供されることが多く、契約内容が複雑になりやすいことが、トラブルの温床になっていると考えられます。
この2つの側面を踏まえると、相談件数の増加は業界の拡大そのものを示すと同時に、契約時の説明や情報開示のあり方に改善の余地が残されていることも示していると言えそうです。
なぜ身元保証の相談件数はここまで増えたのか|背景にある3つの要因

ここまで見てきたように、身元保証サービスに関する相談件数はこの10年で大幅に増加しています。では、なぜこれほどまでに相談が増えているのでしょうか。
その背景には、単に「利用者が増えたから」というだけでは説明しきれない、複数の構造的な要因が絡み合っていると考えられます。ここでは、社会的な背景、業界構造の問題、契約時の情報格差という3つの観点から、相談件数増加の背景を整理していきます。
これらの要因を理解しておくことは、これから身元保証サービスの利用を検討する方にとっても、契約時にどのような点に気をつければよいかを考えるヒントになるはずです。
一人暮らしで頼れる親族がいない高齢者の増加という社会的背景
身元保証サービスの需要が高まっている最大の背景として挙げられるのが、一人暮らしで頼れる親族がいない高齢者そのものの増加です。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、65歳以上の単独世帯(ひとり暮らしの世帯)は年々増加を続けており、今後もこの傾向は続くと見込まれています。
加えて、総務省行政評価局の調査では、身元保証サービスの利用者について、単に一人暮らしというだけでなく、こどもとの関係が良くないため頼れない、兄弟姉妹はいるが高齢のため頼れない、頼れる親族が遠方に住んでいるといった、様々な事情を抱えた方が利用を検討している実態が明らかになっています。こうした社会構造の変化については、2050年、高齢者の単身世帯は45%に|国の推計から見る「身元保証」が必要になる理由でも詳しく解説しています。
つまり、家族や親族が身近にいれば従来であれば担っていたはずの役割を、第三者である事業者に依頼せざるを得ない高齢者が増えているということです。こうした社会構造の変化が、身元保証サービスの利用拡大、ひいては相談件数の増加という形で表面化していると考えられます。
この流れは今後も続くと見込まれており、身元保証サービスは一部の特殊な事情を抱えた方だけのものではなく、多くの方にとって将来的に検討する可能性がある選択肢になりつつあるといえるでしょう。
事業者数の急増と参入障壁の低さという業界構造の問題
相談件数が増えているもう一つの背景として、身元保証サービスを提供する事業者数そのものが急増していることが挙げられます。総務省行政評価局の調査によると、平成26年から令和3年までの期間、毎年10事業者以上が新たにこの事業を開始しており、事業者数は右肩上がりに増加してきました。
その背景には、身元保証サービスを直接規律・監督する法令や制度が現状では存在しておらず、許認可や届出といった参入の障壁がほとんどないことがあります。士業やNPO法人、介護サービス業、葬儀業など、多様な業種からの新規参入が可能な状況となっており、事業の実施主体も一般社団法人からNPO法人、株式会社まで様々です。
参入しやすいことは、必要とする高齢者にとって選択肢が広がるという利点がある一方で、経験や知見が十分でないまま事業を始める事業者が増えるリスクとも表裏一体です。実際、事業に従事する職員数が10人未満という小規模な事業者が全体の約8割を占めているとする調査結果もあり、体制面での不安を抱える事業者が少なくないことがうかがえます。
事業者数の増加ペースに対して、業界全体のルール整備や品質担保の仕組みが追いついていないことが、相談件数の増加につながっている一因と考えられます。
サービス内容の複雑さと契約時の情報格差
身元保証サービスは、身元保証(連帯保証や緊急連絡先の受託など)、日常生活支援(買い物代行や通院の付き添いなど)、そして死後事務(葬儀や納骨、行政手続きの代行など)という、性質の異なる複数のサービスが一体的に提供されることが一般的です。総務省行政評価局の調査でも、これら3つのサービスをすべて提供している事業者が全体の約8割を占めるとされています。身元保証と死後事務をセットで契約すべきかどうかについては、身元保証サービスと死後事務委任契約はセットで契約すべき?違いと必要性を解説で詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。
サービスが多岐にわたる分、契約内容も複雑になりやすく、個々の費目がどのサービスの対価にあたるのか、費用体系が明確でないケースも少なくありません。同調査では、契約内容の重要事項をまとめた「重要事項説明書」を作成している事業者は、確認できた範囲でわずか2割程度にとどまるという結果も示されています。
また、身元保証サービスを利用する高齢者の多くは、加齢に伴い判断能力が低下していく可能性がある年代でもあります。契約時点では内容を理解していたつもりでも、後になって「思っていた内容と違った」と感じるケースが生まれやすい構造があるといえます。
こうした情報格差が、契約時のトラブル、ひいては相談件数の増加につながっていると考えられます。
需要の高まりに対して整備が追いついていなかった実情
身元保証サービスへの需要が急速に高まる一方で、これを支える制度面の整備は長らく追いついていない状況が続いてきました。総務省行政評価局が令和5年に公表した調査結果でも、身元保証等高齢者サポート事業を直接規律・監督する法令や制度は存在せず、事業を所管する行政機関や、複数の事業者が加盟する業界団体も存在しないと指摘されています。
監督官庁が存在しないということは、事業者の財務状況や運営体制が健全かどうかを外部からチェックする公的な仕組みがないことを意味します。利用者の側からすれば、どの事業者が信頼できるのかを判断する材料が乏しいまま、高額な契約を結ばざるを得ない状況に置かれやすいということでもあります。
相談件数の増加は、こうした制度的な空白の中で利用者だけが増え続けてきたことの結果とも捉えられます。近年になってようやく、国によるガイドラインの策定など、整備に向けた動きが本格化してきましたが、その詳細については後の章で改めてご紹介します。
いずれにしても、制度整備が需要の伸びに追いついていなかった期間が長かったことが、この10年間の相談件数の推移からも読み取れるといえるでしょう。
相談内容の内訳から見える身元保証での3つのトラブル類型

相談件数の推移だけでなく、実際にどのような内容の相談が寄せられているのかを知ることも、契約を検討するうえで役立ちます。国民生活センターの資料では、身元保証サービスに関する相談内容は大きく「契約時のトラブル」「サービス利用時のトラブル」「解約時のトラブル」の3つに整理されています。
それぞれどのような場面で、どのような不安や不満が生じやすいのかを具体的に見ていきましょう。トラブルのパターンをあらかじめ知っておくことで、契約前に確認すべきポイントも見えてきます。
件数という定量的なデータだけでなく、こうした内訳を押さえておくことで、自分自身が同じような状況に陥らないための備えにもつながります。
契約時のトラブル|内容を理解しないまま高額契約をしてしまうケース
国民生活センターに寄せられる相談の中でも多くを占めるのが、契約を結ぶ段階で十分に内容を理解できていなかったことに起因するトラブルです。「サービス内容や料金体系をよく理解できないまま、高額な契約をしてしまった」という相談が典型例として挙げられています。
身元保証サービスの利用には少なくとも100万円以上の費用がかかることが一般的とされており、決して小さな金額ではありません。それにもかかわらず、入院や施設への入所が差し迫った状況の中で、十分な検討時間を確保できないまま契約に至ってしまうケースが少なくないようです。とくに入院の場面では、病院の9割が身元保証人を求める現実|「入院拒否はできない」規定とのギャップを読み解くで解説しているとおり、身元保証人を求められることが多く、契約を急がざるを得ない事情が生まれやすくなっています。
総務省行政評価局の調査でも、契約締結までの説明回数について、複数回の説明を行うとする事業者が9割以上を占める一方で、契約内容の重要事項をまとめた書面の作成を確認できた事業者は約2割にとどまっていました。丁寧な説明を心がけている事業者が多い一方で、書面による明確な情報開示という点では、まだ改善の余地が残されているといえそうです。
契約時のトラブルを避けるためには、口頭での説明だけでなく、費用の内訳や解約条件などを書面で確認し、できれば持ち帰って検討する時間を確保することが大切です。
サービス利用時のトラブル|契約した内容が実行されないケース
契約は無事に済んだものの、実際にサービスを利用する段階になって「契約した内容が実行されない」という不満につながるケースも見られます。たとえば、通院の送迎を依頼していたにもかかわらず「忙しい」といった理由で断られてしまうなど、契約に含まれているはずの支援が受けられなかったとする相談が報告されています。
身元保証サービスは、契約から実際にサービスが提供されるまでの期間が長期にわたることが少なくありません。とくに日常生活支援は数年、あるいは十数年という長い期間にわたって続くこともあり、契約当初の想定と、実際に必要になる支援の内容や頻度にずれが生じやすい面があります。
また、事業者側の体制についても、従事する職員数が10人未満の小規模な事業者が全体の約8割を占めるという調査結果があり、限られた人員で多くの利用者に対応せざるを得ない状況にある事業者も少なくないと考えられます。体制の余裕のなさが、契約通りのサービス提供が難しくなる一因になっている可能性もあります。
サービス利用時のトラブルを避けるためには、契約前にサービスの対応範囲や頻度、緊急時の対応体制などを具体的に確認しておくことが重要です。
解約時のトラブル|預託金や返金をめぐるトラブル
3つの類型の中でも、とくに相談が多く寄せられているのが解約時のトラブルです。「解約時の返金額に納得できない」といった相談が、国民生活センターの資料でも繰り返し取り上げられています。
身元保証サービスでは、主に死後事務にかかる費用をあらかじめ「預託金」として事業者に預けておく仕組みが広く採用されています。総務省行政評価局の調査によると、預託金を扱っている事業者は全体の約8割にのぼり、その全てで解約時には手数料等を除いた全額を返金する取り扱いとされていました。
一方で、入会金や契約金といった、サービスの対価とは言い切れない性質の費用については状況が異なります。同調査では、こうした費用について「全く返金しない」と契約書に明記している事業者が一定数存在する一方、返金の取り扱いについて契約書に明記されていない事業者も見られ、対応が事業者によって大きく異なっていることが分かっています。
解約時のトラブルを防ぐためには、契約時点で「どのような費用が、どのような条件で返金されるのか」を書面で明確にしておいてもらうことが欠かせません。曖昧なまま契約を進めてしまうと、いざ解約したいと思ったときに想定外の負担を強いられる可能性があります。
件数データが示す「契約前の確認」の重要性
契約時、サービス利用時、解約時という3つの場面でトラブルが起きていることを踏まえると、相談件数の増加は、いずれの段階でも「事前の確認不足」が影響している可能性を示していると考えられます。
契約時には費用や解約条件を、サービス利用時には対応範囲や体制を、解約時には返金ルールを、それぞれあらかじめ確認しておくことができれば、トラブルの多くは未然に防げる可能性があります。もちろん、入院や施設入所が差し迫った状況では、十分な検討時間を確保できないこともあるかもしれません。
そのような場合でも、契約書や重要事項に関する説明を後から見返せる形で残しておいてもらう、可能であれば家族や信頼できる第三者に同席してもらうといった工夫が、トラブルを防ぐ一助になります。
次の章では、こうした相談件数の増加を受けて、国がどのような対応を進めてきたのかを確認していきます。行政の取り組みを知っておくことも、事業者選びの参考材料のひとつになるはずです。
身元保証トラブルの相談件数増加を受けて、国はどう対応してきたか

身元保証サービスに関する相談件数が増加を続ける中、国もこの問題を放置してきたわけではありません。消費者庁や厚生労働省、総務省、そして令和6年には内閣官房も加わり、複数の省庁が連携しながら実態把握やルール整備を進めてきました。
ここでは、これまでの国の対応を時系列で振り返りながら、現時点でどこまで整備が進み、どのような課題が残されているのかを確認していきます。
行政の動きを知っておくことは、事業者を選ぶ際に「国が求める基準を満たしているかどうか」という視点を持つうえでも役立ちます。
平成30年の普及啓発資料・注意喚起から令和5年の総務省調査まで
国による対応は、平成29年に内閣府消費者委員会が取りまとめた建議をきっかけに本格化しました。この建議を受けて、消費者庁と厚生労働省は平成30年8月、身元保証サービスの契約を検討している方向けの普及啓発資料(ポイント集)を作成し、各地方公共団体を通じて周知を行っています。
その後、令和元年6月には消費生活センター等に寄せられた相談事例やアドバイスをまとめた注意喚起資料が公表され、令和3年9月には消費者庁が高齢者向けの注意喚起チラシを作成し、地方公共団体への配布も行われました。
そして令和5年8月には、総務省行政評価局が初めての全国的な実態調査となる「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」の結果を公表しました。この調査では、事業者数や契約者数の規模、費用の実態、契約内容の課題などが具体的な数値とともに明らかにされ、業界全体の実態を把握するための重要な資料となっています。
このように、国の対応は注意喚起という情報提供の段階から、実態調査という次の段階へと徐々に進んできたことが分かります。
令和6年6月に策定された高齢者等終身サポート事業者ガイドライン
総務省の調査結果を踏まえ、令和6年6月には、内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム)、内閣府、金融庁、消費者庁、総務省、法務省が連携し、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が策定されました。
このガイドラインは、身元保証や日常生活支援、死後事務を行う事業者が遵守すべき法律上の規定や、留意すべき事項を整理したものです。事業者が契約内容を利用者にどのように説明すべきか、預託金をどのように管理すべきか、利用者の判断能力が低下した場合にどのように成年後見制度(判断能力が十分でない方を法律的に支援する制度)への移行を検討すべきかといった内容が盛り込まれています。
あわせて、利用者やその家族が事業者を選ぶ際の目安として活用できるチェックリストも示されており、契約前にどのような点を確認すればよいのかを、専門知識がなくても把握しやすくなっています。
ただし、このガイドラインには法的な強制力はなく、あくまで事業者の自主的な取り組みを促すものにとどまっている点には留意が必要です。ガイドラインへの対応状況を、契約前に確認すべきポイントのひとつとして押さえておくとよいでしょう。
自治体独自の認証制度など地域レベルの取り組み
国レベルの整備が進む一方で、一部の自治体では独自に事業者を評価・認証する取り組みも始まっています。たとえば静岡市では、令和6年から「終活支援優良事業者認証事業」を実施しており、身元保証を含む終活支援を行う事業者からの申請を受けて、一定の基準を満たしているかどうかを自治体が確認したうえで認証する仕組みを設けています。
こうした自治体独自の取り組みは、国全体としての監督制度が整うまでの間、利用者が信頼できる事業者を選ぶための判断材料のひとつとして機能しています。お住まいの地域でこうした認証制度や相談窓口が設けられていないか、事前に確認してみるのもよいでしょう。
また、地域包括支援センターや消費生活センターでも、身元保証サービスに関する相談への対応が進められています。総務省の調査によると、地域包括支援センターの9割以上が個別の事業者情報を把握しているという結果も出ており、身近な相談先として活用できる可能性があります。
ただし、地方公共団体等による一般的な周知・啓発の取り組みはまだ低調な状況にあるとも指摘されており、地域によって情報の得やすさに差があることも念頭に置いておく必要があります。
監督官庁が存在しない現状に残る課題
ガイドラインの策定や自治体独自の取り組みが進んできた一方で、身元保証サービスを直接規律・監督する法令や制度、そして事業を専門に所管する行政機関は、依然として存在していません。
総務省行政評価局の調査でも、事業者自身から「一定のルール化や、事業をチェックする体制、事業者団体の設立、事業を監督する省庁が必要ではないか」という意見・要望が数多く寄せられています。事業者の側から見ても、業界全体の信頼性を高めるための仕組みが不足しているという課題認識があることがうかがえます。
ガイドラインはあくまで指針であり、遵守しない事業者に対する罰則があるわけではありません。そのため、利用者自身が事業者のガイドライン対応状況や情報開示の姿勢を見極める必要性は、今後もしばらく続くと考えられます。
相談件数がなお増加傾向にあることを踏まえると、監督体制の整備は今後の重要な検討課題であり、利用者側としても、制度が発展途上であるという前提に立って事業者選びを行う姿勢が求められているといえるでしょう。
相談件数の推移データから、これから検討する人が読み取れること

ここまで、身元保証サービスに関する相談件数の推移や、その背景、国の対応について見てきました。最後に、これらのデータや情報を踏まえて、これから身元保証サービスの利用を検討する方が実際にどのようなことを意識しておくとよいのか、整理していきます。
件数の推移という客観的なデータは、単に「トラブルが多い」という不安材料としてだけでなく、契約前に何を確認すべきかを考えるための手がかりとしても活用できます。統計から得られる示唆を、具体的な行動につなげていくことが大切です。
相談件数の増加は「利用が身近になった」ことの裏返しでもある
相談件数が10年で4倍以上に増えたと聞くと、身元保証サービスの利用そのものに慎重になってしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これまで見てきたように、相談件数の増加は事業者数や利用者数そのものの増加と重なる部分が大きく、必ずしも「サービスの質が悪化している」ことだけを意味するわけではありません。
むしろ、単身の高齢者が増え続ける社会において、身元保証サービスは一部の限られた人だけでなく、多くの方にとって将来的な選択肢のひとつになりつつあるとも捉えられます。実際、総務省行政評価局の調査でも、利用を検討している高齢者の中には「将来の備えとして、体が動くうちに契約をしておきたい」という前向きな理由を挙げる方も一定数いることが分かっています。
大切なのは、相談件数の増加という事実を過度に恐れることではなく、なぜトラブルが起きやすいのか、その構造を理解したうえで、自分自身が同じ状況に陥らないための準備をしておくことです。統計データは、そのための材料として活用してこそ意味があるといえます。
次の項目では、実際に契約前に確認しておきたい具体的なチェックポイントを整理します。
契約前に確認しておきたいチェックポイント
これまで見てきたトラブルの傾向を踏まえると、契約前に確認しておきたいポイントはおおむね次のように整理できます。
まず、サービスごとの費用や、入会金・契約金・預託金といった費目の内訳が、書面で明確に示されているかどうかです。口頭の説明だけでなく、重要事項をまとめた書面を用意している事業者かどうかも、信頼性を判断するひとつの目安になります。
次に、解約時にどのような費用が、どのような条件で返金されるのかという点です。とくに入会金や契約金については、事業者によって「全く返金しない」場合と「一部返金可能」な場合とに分かれるため、契約前に必ず確認しておく必要があります。契約直後であれば、身元保証サービスにクーリングオフは適用される?契約前に知っておきたい法的知識で解説している制度が使える場合もありますので、あわせて確認しておくとよいでしょう。
そして、事業者が令和6年に策定された高齢者等終身サポート事業者ガイドラインにどの程度対応しているか、財務状況を確認できる資料を開示しているかどうかも、事業の継続性を見極めるうえで参考になります。
これらの点を、契約を急がされることなく、できれば複数の事業者を比較しながら確認していく姿勢が、トラブルを避けるための基本になります。
不安や疑問を感じたときの相談先(消費生活センター等)
契約を検討している段階、あるいはすでに契約したサービスについて不安や疑問を感じた場合には、一人で抱え込まずに専門の相談窓口を活用することをおすすめします。
身近な窓口としては、全国の消費生活センター等につながる「消費者ホットライン188(いやや!)」が挙げられます。契約内容に納得できない、解約したいのに対応してもらえないといった相談に対応してもらえます。契約している事業者に不満があり、他社への切り替えを検討したい場合には、身元保証サービスを他社に乗り換えたい|比較・切り替え時に損しない進め方もあわせてご覧ください。
また、お住まいの地域の地域包括支援センターも、高齢者やその家族にとって身近な相談先のひとつです。総務省の調査によれば、地域包括支援センターの多くが個別の事業者情報を把握しており、事業者に関する情報提供や相談対応を行っている実績があります。
契約後にトラブルが起きてしまった場合でも、早い段階で相談することで、解決につながる可能性が高まります。「まだ契約前だから」「もう契約してしまったから」と迷わず、少しでも不安を感じた時点で相談してみることが大切です。
よりねこで身元保証について相談する際にできること
身元保証サービスは、費用も高額になりやすく、契約期間も長期にわたることが多いため、ご本人だけで全てを判断するのは簡単なことではありません。だからこそ、契約前の情報収集や比較検討に、できるだけ時間をかけていただきたいと考えています。
よりねこでは、身元保証サービスに関する費用相場や事業者の選び方、契約時に確認しておきたいポイントなど、これから検討を始める方に向けた情報を発信しています。
また、身元保証と合わせて検討されることの多い死後事務委任契約や任意後見制度についても、それぞれの違いや必要性を分かりやすく整理した記事をご用意しています。
身元保証サービスの利用を具体的に検討し始めた方も、まだ情報収集の段階という方も、ご自身やご家族に合った形を見極めるための一助として、よりねこの記事をぜひ参考にしてください。ご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
身元保証サービスに関する相談件数は、国民生活センターの統計によると2013年度の85件から2023年度には354件へと約4.2倍に増加し、2024年度には420件に達するなど、増加傾向が続いています。
この背景には、一人暮らしで頼れる親族がいない高齢者の増加、事業者数の急増と参入障壁の低さ、サービス内容の複雑さと契約時の情報格差といった、複数の要因が重なっていると考えられます。
相談内容は「契約時のトラブル」「サービス利用時のトラブル」「解約時のトラブル」の3つに大別され、いずれも事前の確認不足が影響している可能性があります。国も令和6年に高齢者等終身サポート事業者ガイドラインを策定するなど対応を進めていますが、法的な強制力はなく、監督官庁も存在しない状況が続いています。
だからこそ、契約前には費用の内訳や解約時の返金条件、事業者のガイドライン対応状況などを、書面でしっかりと確認することが欠かせません。不安を感じたときは一人で抱え込まず、消費生活センターや地域包括支援センター、そしてよりねこのような情報発信の場も活用しながら、ご自身やご家族に合った選択を進めていただければと思います。