認知症になったら任意後見はどう動く?申立てから開始までの道筋

「任意後見契約」はしたけれど認知症の症状はまだ何も始まっていない状態に気づく

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「将来のために任意後見契約を結んでおいた」という方は、少しずつ増えています。
公正証書を作成し、契約書を手元に保管していれば、それで安心だと感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、契約を結んだ時点ではまだ何も「始まって」いません。
任意後見はあくまで将来に向けた準備であり、本人の判断能力が低下するまでは、契約内容にしたがった支援は行われない仕組みになっているからです。
この章では、契約と実際の支援開始の間にある「空白の期間」について整理していきます。
こうした空白の期間があることを知らないまま、「契約さえしておけば何かあったときに自動で支援が始まる」と思い込んでしまう方も少なくありません。
この記事では、認知症の進行に応じて任意後見がどのように動き始めるのか、契約から実際の支援開始までの道筋をひとつずつ確認していきます。
「公正証書を作ったから一安心」と思っていたものの、いざ介護が必要になったときに「何から始めればいいのか分からない」と戸惑うご家族の声は少なくありません。
本記事を通じて、その戸惑いを少しでも減らせるよう、契約後の動き方を具体的にイメージできる内容にしていきます。

任意後見契約はあくまで「準備」段階にすぎない

任意後見契約を結ぶと、将来支援をお願いする相手(任意後見受任者)や、お願いする内容(財産管理や生活面の手続きなど)があらかじめ決まります。
この点だけを見ると、契約完了をもって「もう何かあっても大丈夫」と感じてしまう方も少なくありません。
ですが、任意後見契約に関する法律では、この契約はあくまで「将来に備えた約束」という位置づけです。
本人がまだ十分に判断できる状態であれば、財産の管理も日常の手続きも、本人自身が行うことが前提とされているためです。
たとえば、80代のご夫婦が将来に備えて任意後見契約を結んだケースでは、契約後しばらくは特に何も変わらない日常が続きました。
公正証書を交わした安心感から、ご家族も「これでもう備えはできた」と感じていたそうです。
ところが数年後、配偶者の方の物忘れが目立つようになったとき、ご家族は「契約はあるけれど、誰が・いつ動き出すのか」が分からず、戸惑う場面があったといいます。
このように、契約と実際の支援開始との間には、認知症の進行という大きな転換点が存在します。
契約書をしまっておくだけでは、いざというときに支援はスタートしないという点を、まずは押さえておくことが大切です。
このように、契約と現実の間にある「タイムラグ」を正しく理解しておくことは、後のステップで申立てのタイミングを判断する際の土台にもなります。
契約時点ではまだ動いていない、という前提を押さえておくことが、慌てずに準備を進めるための第一歩です。

認知症の進行に家族が気づくきっかけ

任意後見が実際に動き出すきっかけとなるのは、多くの場合、本人の認知症の進行にご家族が気づいたときです。
日常生活の中で、物の置き場所を何度も忘れる、同じ話を繰り返す、約束の日時を覚えていない、といった小さな変化が積み重なっていくことがあります。
これらは本人にとっても自覚しにくく、ご家族が「最近少し様子が違うかもしれない」と感じることから始まるケースが多いようです。
たとえば、別居している娘さんが実家に帰省した際、冷蔵庫の中に同じ食材が何個も入っていることに気づき、はじめて認知症の進行を意識したという例もあります。
このような気づきがあったとき、次にご家族が考えるべきなのは「この任意後見契約を、いつ・どのように動かしていくのか」という点です。
契約をしているからといって、自動的に後見が始まるわけではないため、ここからは家庭裁判所への手続きという新しいステップが必要になります。
次の章では、任意後見が実際に効力を持つために欠かせない「任意後見監督人」について、詳しく見ていきましょう。
あわせて、契約締結のタイミングについて振り返りたい方は、任意後見の公正証書はいつ作る?作成タイミングと準備の進め方を解説も参考になります。
こうした気づきがあったとき、「まだ任意後見契約のことなど考えなくていい」と先延ばしにせず、契約内容を改めて確認しておくことが、その後の動きをスムーズにします。
契約書をどこに保管しているか、誰が任意後見受任者になっているかをご家族で共有しておくだけでも、いざというときの安心感につながります。

認知症で判断能力が低下したときに任意後見が動き出す「任意後見監督人」の役割

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任意後見契約があっても、それだけでは何も始まらないことを前章で確認しました。
では、実際にいつ・どのような形で任意後見は動き出すのでしょうか。
そのカギを握っているのが「任意後見監督人」という存在です。
聞き慣れない言葉に感じる方も多いかもしれませんが、認知症によって判断能力が低下した本人を支えるうえで、欠かせない役割を担っています。
この章では、任意後見監督人がどのように選ばれ、どのような仕事をしているのか、また法定後見との違いも含めて整理していきます。
「契約はしたのに、実際に何をすればいいのか分からない」というご家族の悩みは、まさにこの任意後見監督人の仕組みを知ることで解消されます。
逆に、この仕組みを知らないまま時間が過ぎてしまうと、認知症が進行しても任意後見が活用されず、結果として家族が手続きの面で苦労してしまうことにもつながります。
特に「監督人」という第三者が関わることに、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この仕組みがあることで、ご家族だけで全てを担う必要がなくなり、専門的な視点から本人の財産や生活を見守ってもらえるという側面もあります。

効力が生じるのは「任意後見監督人」が選ばれたとき

任意後見契約には、実は大きな特徴があります。
契約書に署名し、公正証書を作成した時点では、契約の効力はまだ生じていないという点です。
任意後見契約に関する法律では、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、はじめて契約の効力が生じると定められています。
つまり「契約の締結」と「契約の効力発生」は、まったく別のタイミングだということです。
たとえば、認知症の診断を受けた本人について、ご家族が任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申立てたとします。
この申立てが受理され、家庭裁判所による審理を経て監督人が選ばれた段階で、ようやく任意後見受任者は「任意後見人」として契約内容に基づいた支援を始められるようになります。
逆に言えば、認知症の症状が進んでいても、この申立てと選任の手続きを行わない限り、任意後見人として財産管理や契約の代理を行うことはできません。
「効力発生=監督人選任」という関係を理解しておくことが、任意後見を正しく活用するうえでの第一歩になります。
言い換えれば、任意後見契約を結んだ本人やご家族が「この契約を実際に動かすには、家庭裁判所への申立てが必要だ」という事実を知っているかどうかが、その後の対応の早さを大きく左右します。
契約書の存在だけに安心してしまうのではなく、「効力発生には別の手続きが必要」という点を、ご家族間でも共有しておくことが大切です。
実際、「契約をしたから安心」という思い込みのまま時間が過ぎてしまい、認知症がかなり進行した段階になってから、ご家族が「実はまだ何も始まっていなかった」と気づくケースも見られます。
だからこそ、契約後も「この契約をいつ動かすのか」という視点を、ご家族の中で持ち続けておくことが重要です。

任意後見監督人はどんな人が選ばれ、何をするのか

任意後見監督人には、家庭裁判所が適任と判断した人が選ばれます。
多くの場合、弁護士や司法書士といった専門職が選任されることが一般的とされていますが、状況によっては親族が選ばれることもあります。
任意後見監督人の主な役割は、任意後見人が契約内容にしたがって適切に財産管理や生活面の支援を行っているかどうかを確認することです。
具体的には、任意後見人から事務の状況や財産の管理状況について報告を受け、その内容を確認したうえで、家庭裁判所へ報告を行います。
また、本人と任意後見人との間で利益が対立するような場面では、本人を代理する役割を担うこともあります。
たとえば、認知症の本人が所有する自宅を売却して施設入所費用に充てる必要が生じた場合、任意後見人がその手続きを適切に行っているかを、任意後見監督人がチェックする形になります。
このように、任意後見監督人は「後見人を見守る人」として機能しており、本人の財産や権利が不適切に扱われないよう、二重のチェック体制を作る役割を担っています。
たとえば、任意後見人が本人の年金や預貯金から介護施設の費用を支払う際、その支払いが契約内容に沿っているかどうかを、任意後見監督人が確認する場面があります。
このような確認作業があることで、本人やご家族が直接立ち会えない場面でも、財産が適切に管理されているかどうかを第三者の目でチェックできる体制が整います。

法定後見との違いから見る「認知症と任意後見が動く」仕組み

認知症の症状が進んだ際の支援というと、「法定後見」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
法定後見と任意後見はどちらも認知症などで判断能力が低下した方を支える制度ですが、スタートの仕組みが大きく異なります。
法定後見の場合は、本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所が後見人を選ぶところから手続きが始まります。
一方、任意後見では「誰に何を任せるか」をあらかじめ本人が決めておき、判断能力が低下した段階で任意後見監督人の選任を申立てることで支援が動き出します。
つまり任意後見は、認知症になる前に「支援の内容と相手」を自分で選んでおける点が大きな特徴です。
すでに任意後見でできることの範囲について確認したい方は、【初心者向け】任意後見でできることを解説|財産・介護・住まいの場面別ガイドもあわせてご覧ください。
また、家族による支援を検討する際に比較されることが多い家族信託との違いについては、任意後見と家族信託はどう違う?特徴と向いているケースを比べてみたで詳しく解説しています。
また、任意後見では複数の専門家や家族が役割を分担できる点も特徴です。
たとえば、財産管理は専門職の任意後見人に任せ、日常生活の見守りは家族が担うといった形で、それぞれの強みを生かした体制を組むことも可能です。
こうした柔軟さは、認知症の進行段階や本人の生活状況に合わせて、支援の形を調整できるという任意後見ならではの利点といえます。
とはいえ、どちらの制度も「本人の判断能力が低下した認知症の方を法的に支える」という根本的な目的は共通しています。
ご本人やご家族の状況に応じて、どちらの制度がより適しているかを考える際の参考にしてみてください。

認知症と診断されてから任意後見が開始するまでの流れを順番に確認する

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任意後見監督人がどのような役割を持つかが分かったところで、ここからは実際に「認知症と診断されてから任意後見が開始するまで」の手続きの流れを確認していきます。
家庭裁判所への申立てというと、難しい印象を持つ方も多いかもしれません。
しかし、誰が申立てできるのか、どのような書類が必要なのか、どのくらいの期間がかかるのかを事前に知っておくことで、いざというときに落ち着いて対応できます。
この章では、申立てから任意後見開始までの一連の流れを、順を追って見ていきましょう。
特に、必要書類の準備には時間がかかることが多く、認知症の症状が進んでから慌てて動き出すと、本人への負担も大きくなりがちです。
事前にどのような順序で手続きが進んでいくのかをイメージしておくことで、いざというときにも焦らずに対応しやすくなります。
「裁判所」という言葉だけで身構えてしまう方も多いですが、実際には書類の準備が中心となる手続きであり、手順を一つずつ確認していけば、過度に難しいものではありません。
ここで全体像を把握しておくことで、認知症の進行に応じて、いつ・どこに向けて動き出せばよいかが見えてきます。

申立てができる人と申立て先の家庭裁判所

任意後見監督人の選任の申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、そして任意後見受任者です。
四親等内の親族には、子どもや兄弟姉妹だけでなく、いとこなども含まれるため、思った以上に広い範囲のご家族が申立人になれる可能性があります。
申立て先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
たとえば、認知症の診断を受けた親について、離れて暮らす長女が申立人となるケースは少なくありません。
このとき注意したいのは、本人以外が申立てを行う場合、原則として本人の同意が必要とされていることです。
ただし、本人が同意の意思表示をすることが難しいほど判断能力が低下している場合には、この点について家庭裁判所が個別に判断します。
申立てができる人が複数いる場合には、ご家族の中で誰が窓口になるかを早めに話し合っておくと、その後の手続きがスムーズに進みやすくなります。
また、申立人として動くご家族が複数いる場合、誰が中心になって家庭裁判所とのやり取りを行うかを決めておくと、書類のやり取りや問い合わせ対応が一本化され、混乱を防ぎやすくなります。
家族の中で役割分担を明確にしておくことは、その後の任意後見人や任意後見監督人とのやり取りにおいてもスムーズさにつながります。

必要書類の準備と認知症の診断書のポイント

任意後見監督人の選任を申立てる際には、家庭裁判所でもらえる申立書一式に加えて、本人に関するさまざまな書類を準備する必要があります。
代表的なものとして、申立書、申立事情説明書、本人情報シート、任意後見受任者の事情説明書、親族関係図、財産目録、収支予定表などが挙げられます。
そして、これらの書類の中でも特に重要になるのが、本人の判断能力の状態を示す診断書です。
診断書は、本人の認知症の程度や症状の状況を医師に記載してもらうもので、家庭裁判所が任意後見を開始すべきかどうかを判断するための重要な資料になります。
そのため、かかりつけ医にあらかじめ任意後見の申立てを予定していることを伝え、診断書の作成を依頼しておくと、準備がスムーズに進みやすくなります。
また、財産目録や収支予定表については、本人の預貯金や不動産、収入と支出の状況を一覧にしてまとめるため、事前に金融機関の通帳や年金の通知書などを集めておくことが助けになります。
書類の準備に時間がかかることも多いため、認知症の症状に気づいた段階で、早めに準備を始めておくと安心です。
なお、診断書の内容によっては「すでに後見が必要な状態」と判断され、想定していた任意後見ではなく、法定後見の手続きが必要になるケースもあるとされています。
そのため、診断書の作成を依頼する際には、任意後見監督人の選任を目的としていることを、医師にきちんと伝えておくことも大切なポイントです。
あわせて、本人の所有する不動産に関する権利証や、保険証券、年金手帳といった重要書類の保管場所も、この機会に確認しておくと良いでしょう。
普段から本人とこうした情報を共有しておくことで、認知症が進行した後でも、必要な書類を探す手間を減らすことができます。

家庭裁判所の調査から審判、任意後見開始までの期間

必要書類を整えて申立てを行うと、家庭裁判所では申立人や任意後見受任者への聞き取り調査、そして本人への調査が行われます。
本人への調査では、本人の意思の確認や心身の状態のチェックが行われますが、本人が家庭裁判所へ出向くことが難しい場合には、調査官が自宅や施設を訪問して聞き取りを行う対応も取られています。
こうした調査結果と提出された書類をもとに、家庭裁判所が任意後見監督人を選任する審判を行います。
審判の内容は、本人や任意後見受任者などに審判書として郵送されます。
そして、この任意後見監督人の選任をもって、任意後見契約の効力が発生し、任意後見受任者は正式に「任意後見人」として支援を始めることになります。
申立てから審判までの期間は、ケースによって異なりますが、一般的には数週間から数ヶ月程度かかることが多いとされています。
認知症の進行状況によっては、この期間中も日常生活でさまざまな対応が必要になることもあるため、できるだけ早い段階から申立ての準備を進めておくことが、ご本人とご家族の安心につながります。
費用面について確認したい方は、任意後見の費用はいくら?初期費用・月額報酬・総額の目安を解説もご参考ください。
また、審判が確定した後も、任意後見監督人への報酬や監督業務は継続して行われます。
任意後見が始まった後の生活がどのように変わるのか、あらかじめイメージしておくことで、申立てに対する不安を減らすことにもつながります。
手続きの大まかな流れを知っておくだけでも、いざというときに「次に何をすればいいか」が見えやすくなります。

認知症の進行サインから任意後見の申立てタイミングを見極める

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手続きの全体像が分かったところで、次に気になるのは「実際に、いつ申立てを行うべきなのか」という見極めのタイミングです。
申立てが早すぎても本人の自立した生活を制限することになりかねず、遅すぎると必要な支援が間に合わないこともあります。
この章では、認知症の進行サインの捉え方や、申立てに向けて事前にできる準備、そして申立てが遅れた場合に生じやすい困りごとについて見ていきます。
「まだ大丈夫」と感じている時期にこそ、今後の見通しを立てておくことが、後々の安心につながります。
反対に、認知症の症状がかなり進んでから慌てて準備を始めると、本人の意思確認が難しくなり、手続きが滞ってしまうこともあります。
ここからは、日々の暮らしの中で見られる具体的なサインや、申立てに向けて今からできる備えについて、順番に確認していきましょう。

介護が必要になった場面での認知症の具体的なサイン

申立てのタイミングを考えるうえで参考になるのが、日常生活の中で見られる認知症の具体的なサインです。
たとえば、預貯金の管理が難しくなり、同じ支払いを何度も行ってしまう、銀行のATMの操作方法が分からなくなる、といった金銭管理に関する変化は、任意後見が必要になるサインの一つとして挙げられます。
また、要介護認定を受けて介護サービスを利用し始めるタイミングも、一つの目安になります。
施設への入所を検討する段階になると、入所契約や費用の支払いなど、本人に代わって法的な手続きを行う必要性が高まるためです。
たとえば、認知症の進行により本人が施設入所契約の内容を十分に理解できなくなった場合、契約の締結そのものが難しくなってしまうことがあります。
このような場面に至る前に、任意後見監督人の選任を申立てておくことで、契約や手続きをスムーズに進めやすくなります。
介護に関する備えを全体的に見直したい方は、親の介護に備えるための終活チェックリスト|家族で話し合うべき7項目もあわせてご確認ください。
さらに、本人が車の運転を続けている場合、判断能力の低下に伴う運転免許の更新や返納の問題が表面化することもあります。
このような場面でも、家族が本人の意思を確認しながら手続きを進める必要があるため、任意後見の枠組みが整っていると、対応の選択肢が広がりやすくなります。
これらのサインは一つだけで判断するものではなく、複数が重なって見られるようになった段階で、「そろそろ準備を考える時期かもしれない」という目安として受け止めるとよいでしょう。
普段から本人と接する機会が多いご家族ほど、こうした変化に気づきやすい立場にあります。
こうしたサインに早めに気づくためには、本人と日頃から会話を重ね、ちょっとした困りごとを気軽に話してもらえる関係を保っておくことも、一つの工夫といえます。

見守り契約や家族との連携で備えておけること

任意後見契約を結んだ後、実際に任意後見監督人の選任を申立てるまでの期間に、本人の様子をどのように見守っていくかも大切な視点です。
このときに活用されるのが「見守り契約」です。
見守り契約とは、任意後見受任者が定期的に本人へ電話連絡や訪問を行い、生活状況や判断能力の変化を確認する契約のことです。
たとえば、ひとり暮らしをしている親について、月に一度、任意後見受任者が訪問して様子を確認するという見守り契約を結んでおくケースがあります。
このような関わりがあることで、認知症の進行を早い段階で察知し、適切なタイミングで申立てに進みやすくなります。
また、見守り契約に加えて、ご家族間でも「誰が、どのタイミングで気づいたことを共有するか」をあらかじめ話し合っておくことが助けになります。
たとえば、定期的に集まる機会を設けて、本人の様子について情報を交換し合うだけでも、変化に気づきやすくなる効果が期待できます。
任意後見受任者と離れて暮らすご家族とが連携しておくことで、申立てのタイミングを逃しにくくなります。
このように、見守り契約は単なる「安否確認」ではなく、任意後見を適切なタイミングで動かすための準備期間としての役割も持っています。
契約から申立てまでの間が長くなる場合ほど、こうした継続的な関わりの有無が、その後の手続きのスムーズさに影響しやすくなります。
見守り契約を結ぶ相手は、必ずしも将来の任意後見受任者と同じ人である必要はなく、状況に応じて複数の人や専門職と連携する形を取ることもできます。
本人が安心して過ごせる関わり方を、ご家族の状況に合わせて選んでいくことが大切です。

認知症の進行後に任意後見の申立てが遅れることで生じやすい困りごと

認知症の進行に気づいていても、「まだ大丈夫」「もう少し様子を見よう」と感じて、申立てを後回しにしてしまう場合があります。
しかし、申立てが遅れることで、さまざまな困りごとが生じる可能性があります。
たとえば、本人名義の預貯金から介護費用や医療費を支払いたい場合でも、任意後見が開始していなければ、家族が代わりに手続きを行うことが難しい場面があります。
銀行によっては、本人の判断能力に疑いがあると判断すると、窓口での取引に制限を設けることもあるとされています。
また、不動産の売却や賃貸契約の変更など、法的な判断が必要な手続きについても、任意後見人として正式に動けるようになるまでは対応が難しくなることがあります。
このような事態を避けるためには、認知症の進行に気づいた段階で、できるだけ早めに任意後見監督人の選任の申立てに向けて動き出すことが、本人とご家族双方の安心につながります。
このような状況に陥ってから慌てて任意後見監督人の選任を申立てても、審判が確定するまでにはどうしても一定の時間がかかります。
その間、本人やご家族が必要な手続きを進められないまま、対応に困ってしまう期間が生じる可能性もあります。
「気づいたときが、考え始めるタイミング」として捉えていただくことが、結果的にご本人とご家族双方の負担を軽くすることにつながります。
特に、本人が一人で生活している場合や、家族が遠方に住んでいる場合には、こうした困りごとが生じやすくなる傾向があります。
日頃から本人の暮らしぶりに目を向け、認知症の進行に早めに気づける環境を整えておくことが、申立てのタイミングを逃さないための大切な備えになります。

まとめ|認知症に備えた「任意後見契約」から「実際の支援」へつなぐために

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これまで、認知症の症状が進んだときに任意後見がどのように動き出すのか、契約から実際の支援開始までの道筋を確認してきました。
契約を結んだだけでは支援は始まらず、認知症の進行に応じて家庭裁判所への申立てという手続きを経ることで、はじめて任意後見人としての支援が動き出します。
最後に、この記事の内容を振り返りながら、今後の備えにつなげていきましょう。

任意後見の流れを振り返る

任意後見契約は、公正証書を作成した時点ではまだ効力が発生しておらず、あくまで将来に向けた「準備」の段階にすぎません。
実際に契約の効力が発生するのは、本人の認知症が進行し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときです。
そのためには、本人や配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者などが申立人となり、家庭裁判所へ必要書類を提出して申立てを行う必要があります。
申立てから審判までは、調査や審理を経て一定の期間がかかるため、認知症の症状に気づいた段階で早めに準備を始めておくことが大切です。
また、契約から申立てまでの間は、見守り契約やご家族間の連携を通じて、本人の様子を継続的に確認しておくことが、適切なタイミングでの申立てにつながります。
申立てが遅れることで、預貯金の管理や施設入所の手続きなどに支障が生じる可能性もあるため、「まだ大丈夫」と感じる時期から、少しずつ準備を進めておくことが、本人とご家族双方の安心につながります。
「契約をして終わり」ではなく、「契約を、いつ・どう動かすか」まで見通しておくことが、認知症への備えとして本当に意味のある任意後見の活用につながります。

不安なときはよりねこにご相談ください

任意後見の手続きは、家庭裁判所への申立てや必要書類の準備など、初めての方にとっては分かりにくい部分が多くあります。
「今のタイミングで申立てをして良いのだろうか」「どの書類から準備すればいいのか分からない」「診断書はどの病院でもらえばいいのか」といった、具体的な不安を感じる方も少なくありません。
診断書の依頼先や、申立て窓口となる家庭裁判所がどこになるのかなど、最初の一歩でつまずいてしまう方も多いものです。
よりねこでは、任意後見をはじめとした終活や相続に関するご相談を承っております。
契約から実際の支援開始までの流れについて、お一人おひとりの状況に合わせてご案内いたしますので、認知症への備えについて気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
ご本人らしい暮らしを長く続けていくためにも、早めの備えから一緒に整理していきましょう。

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